ロボアド産業をリードするWealthfront(ウェルスフロント)が融資に進出することが、ロイターの報道 から明らかになった。Wealthfrontの口座に10万ドル(約1090万円)以上の運用資産を保有している顧客を対象に、最高30%の貸しつけを行う。

FinTechスタートアップ内でも競争力問われ始めた今、こうしたサービスの多様化は必須となりそうだ。

ウェルス・マネージャーによる総運用資産の1割をロボアドが奪う?

融資は申しこみから審査まですべてオンライン上で行われるため、既存の融資のように来店や電話確認といった手間をいっさい必要としない。返済は口座の運用資産から行われる。

ロボアド・スタートアップとして瞬く間にその名を世界中にはせたWealthfrontは、全米で30億ドル(約3272億4000万円)の資産を運用する 巨大デジタル投資企業だ。オンラインで好きな時に好きな場所から投資できるという手軽さと、需要に合わせて選べる8種類の口座 、1万ドル(約109万円)以下の小口運用は手数料無料という低コストシステムなどが人気の秘密だろう。

しかしロボアド領域はFinTech産業の中でも激戦地区と化しており、目新しさのなくなったサービスに依存しているだけでは、ライバルに差をつけることは不可能だ。
「ウェルス・マネージャーによる総運用資産、74兆ドル(約8071兆1800億円/2014年データ)の10%を、2020年までにロボアドが侵食する」と国際リサーチ企業、BI Intelligenceは予測している。

企業成長のカギ「多様化」を実践する新サービス

FinTechにかぎらず、企業成長のカギは多様化がにぎっている。随時変化する消費者の嗜好や価値観に敏感に対応することが求められる。

Wealthfront はロボアド顧客の拡大を促進すると同時に、サービスの多様化を目指し、「ファイナンシャル・プラニング」「学資貯蓄プラン」「株式売却プラン」なども開始。需要のおとろえる気配を見せない融資市場にも乗りだす。

「有価証券融資(証券を担保にした融資)」は低リスクでマージン増加を狙える手段として、近年ブローカーの間で注目を集めている。融資から利息を回収できるうえ、自社で管理する証券を担保としておさえているため、貸倒れのリスクが低い。

P2Pより安心で銀行よりも簡単なデジタル有価証券融資

モーガン・スタンレーの予想では、国際融資市場は2020年までに2900億ドル(約31兆6274億円) に成長する。2010年から2014年にかけてのCAGR(年平均成長率)は123%を記録。それ以降2020年にかけて、さらに51%伸びると予想されている。

Transparency Market Researchの予想 はそれをはるかに上回り、P2P市場だけでも2015年の261億6000万ドル(約2兆8541億円)から、2014年には8978億5000万ドル(約97兆9554億円)に急成長を遂げると見こんでいる。

FinTech融資では相変わらずP2Pの需要が高いが、融資仲介サービスの盲点として貸倒れの増加や詐欺行為などが報告されている。昨年代替融資産業をゆるがした米レンディング・クラブの不祥事や、政府が規制強化に乗りだした中国P2Pなど、失速の要因は複数考えられる。すでに中国では規制の影響からか、昨年の時点で成長率が半分にまで落ちこんだという。

融資基準の厳格な従来型金融機関よりも比較的容易に融資が受けられるうえに、借り手も貸し手も安心して取引ができるという点で、Wealthfrontのデジタル有価証券融資は現代人の需要を満たしてくれそうだ。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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