メガバンク中心に進んできたFinTech(フィンテック)の波が、日本の中小企業を支える信用金庫業界に一気に広がる様相を呈してきた。 全国264の信金のネットワークシステムの運用を行っているしんきん情報システムセンター(SSC)は4月7日、本年中に新たに「オープンAPI共通基盤」を構築し、フィンテック企業のサービスと直結する計画を明らかにした。

全国の信金の個人預金の合計は約107.5兆円で、メガバンクトップの三菱東京UFJ銀行の71.2兆円を上回る(2016年9月末現在)ため、日本のフィンテックの普及に大きな影響を与える。(経済ジャーナリスト 丸山隆平)

信用金庫業界のオープンAPIに向けた取り組みが大きく進展

信用金庫,

SSCはオープンAPI (フィンテック企業が金融機関のシステムに接続し、機能を利用することができるプログラム)に向けたシステム構築を今年中に行う。

しんきんインターネットバンクシステムにオープンAPI共通基盤を構築。今年12月までに残高照会、入手金照会の参照系APIを公開する。これにより信用金庫業界のオープンAPIに向けた取り組みが大きく進展することになる。

3月3日に国会に提出された「銀行法等の一部を改正する法律」案では、法施行後2年以内にオープンAPIの体制整備を求めているが、「ほとんどの信用金庫において法施行前にその体制整備が可能となる」(片岡靖SSC取締役総合企画部長)という。

SSCは信金の中央銀行に当たる信金中金の子会社で、全国信金データ通信システムを264金庫、しんきん個人・法人インターネットバンキングシステムをそれぞれ256金庫が利用している。

全国264ある信金の預金量は137.6兆円(個人107.5兆円、法人23.5兆円)で、メガバンクトップの三菱東京UFJ銀行の148.6兆円(71.2兆円、56.2兆円)と並ぶ規模にあり、個人預金ではトップにある。また全国の中小零細企業を主な取引先としているため、フィンテックサービスの全国的な普及に弾みがつく。

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(表=筆者作成、SSC調べ)

またSSCではこれに続き、「今後、振込などの更新系APIの公開、投資信託などの他のシステムや信金独自のサービスとの接続についても、信金のニーズを踏まえて検討していく」(同)としている。

従来、信金がフィンテック企業のサービスを提供するには、各信金ごとに口座情報を提供するための契約を結ばなければならなかった。また、インターネットバンキングのパスワードなどを利用者の了解を得て、フィンテック企業に提供する必要があった。この方式はWEBスクレイピングと呼ばれるが、情報漏れなどセキュリティ上の懸念があった。

これまでフィンテック企業と信金とのサービス連携は昨年11月に、岡崎信金がマネーフォワードと開始しているのみ。

これに対し、オープンAPI共通基盤の構築により、フィンテック企業はサービス連携を希望する信金と一斉に契約できるため、安全性・効率性の点で大きく向上する。

なお日本アイ・ビー・エムは4月10日、SSCの「オープンAPI共通基盤」の構築を支援すると発表した。同社は地銀には実績を持つが、信金業界には実績が少なかった。これを機に新市場を開拓するものとみられる。

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