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昨年末からのアベノミクス効果により、資金流入が続いている投資信託ですが、その中でも特に個人投資家に人気なのは毎月分配型投資信託です。現在では、追加型株式投資信託に占める毎月分配型投資信託の残高の割合は、7割程度にまで上昇しています。そこで、この人気の毎月分配型投資信託を NISA 口座で利用する際の注意点についてみていきましょう。


①分配金の種類

毎月分配型投資信託は、名前の通り分配金が毎月決まった日に支払われることとなっている投資信託ですが、分配金には性質上2種類が存在します。

1つは、普通分配金というもので、分配金が支払われた後の投資信託の基準価額(投資信託の時価)が、個別元本(投資信託購入者の取得価額)を下回らないときにおける当該分配金のことを指します。つまり、投資信託の運用者が、運用をした結果得られた利益の範囲内で分配金を支払った場合のその分配金のことをいいます。例えば、100万円で購入した投資信託の基準価額が、分配日直前に110万円に上昇していたとします。そこで、分配日に8万円が分配金として支払われたとすると、基準価額は102万円(110万円-8万円)となり、個別元本(100万円)を上回っていますので、8万円の分配金はすべて普通分配金であるといえます。

もう1つの分配金は、特別分配金というもので、分配金が支払われた後の投資信託の基準価額が個別元本を下回る場合に、その下回ることとなった部分についての分配金のことを指します。つまり、投資信託の運用者が、運用した結果得られた利益以上の分配金を支払った場合の、その利益を超える部分に相当する金額が特別分配金と呼ばれます。上の例でいいますと、分配日に15万円が分配金として支払われたとすると、基準価額は95万円(110万円-15万円)となり、個別元本(100万円)を下回ってしまいます。この場合、分配直前の基準価額と個別元本との差である10万円が普通分配金となり、残りの5万円が特別分配金ということになります。

換言すれば、普通分配金は運用の結果得られた利益の還元であるのに対し、特別分配金は元本の払い戻しという性格を有しています。したがって、普通分配金は利益といえるため、当然税金が課せられますが、特別分配金は投資元本を取り崩しているのと何ら相違がないため、税金を課せられることはありません。

以上から言えることは、毎月分配型投資信託の中には、資金を集めるため、もしくは資金流出を防ぐために、分配金を見かけ上多く見せる必要があり、特別分配金を支払っているものが数多く存在しますが、これらの投資信託をNISA口座で運用するのは有用ではないということです。なぜなら、特別分配金は、元本の払い戻しの性格を有しているためそもそも非課税ですから、分配金が非課税になるNISA口座を利用する価値がないためです。NISA口座での運用は、年間100万円までと規定されているため、非課税の恩恵を享受できる金融商品を優先するべきでしょう。


②毎月分配型投資信託の購入を検討すべき年齢層は?

毎月分配型投資信託をNISA口座で購入すれば、年間100万円までの元本に対する分配金が非課税となり、運用を有利に進めることができます。しかし、毎月分配金が支払われるということは、その分投資元本が減少するということですから、複利効果を得ることが出来ません。また、受取った分配金を再投資するにしても、NISA口座で再投資するには年間100万円までの投資枠を新たに使用することになるため非効率ですし、課税口座で再投資する場合は、再投資された元本に対する分配金には税金が課されることとなり、これまた非効率になってしまいます。

ここで、20代や30代のような資産形成期にある方は、老後まで多くの時間を有するため、50代や60歳以上の方に比べて複利効果の恩恵を大きく享受することが可能であるといえます。そのため、毎月一定の元本が取り崩されてしまう毎月分配型投資信託の利用はお勧めできません。換言すれば、退職世代の方は、保有資産を出来るだけ減らさないように運用しつつ、年金では不足する分について保有資産を取り崩して賄うというスタンスが最善といえますので、毎月分配型投資信託の利用は非常に有用といえるでしょう。その際には、分配金が非課税になるように、NISA口座を十分に活用して頂きたいと思います。


③長期投資を心がける

NISA制度では、一旦利用した非課税枠の再利用は出来ないことになっています。これには、「貯蓄から投資へ」の流れを一層強固なものにするため、短期での売買は出来ないようにし、長期投資を促進するという国の思惑が垣間見られます。また、NISA口座は、非課税期間が5年と比較的長期にわたるため、非課税の恩恵を最大限享受するためには、長期投資が求められることになります。

そうであるならば、NISA口座で投資信託を運用する場合、注意すべきは手数料の多寡だといえます。一般に、投資信託の手数料といえば、購入時に要する購入手数料のことを想像される方が多いですが、購入時の手数料は1回きりのものですので、運用成績に大した影響を及ぼしません。一方、毎期課される手数料(信託報酬)は、投資信託を保有している限り継続して課されるため、運用成績にも大きく影響を及ぼしてきます。そのため、投資信託購入時には、購入手数料だけでなく(もしくは購入手数料以上に)、信託報酬の多寡にも十分に配慮して頂きたいものです。

毎月分配型投資信託は、毎月収入が得られるというメリットがある半面、毎月投資元本の一部を取り崩すため、複利効果が得られにくいというデメリットがあります。そのため、それらの特徴を踏まえたうえで、自身の年齢や投資方針に応じた利用をして頂きたいと思います。

photo credit: ninja gecko via photopin cc