medium_7459773452

投資の格言に「卵は一つの籠に盛るな」というものがありますが、これは、籠を落としてしまっても全ての卵が割れてしまわないように、複数箇所に分けて保管しなさいという意味です。つまり、投資において、一つの資産に対して投資金額全額を投じるのではなくて、異なる値動きをする資産に分散して投資することで、投資リスクを低く抑えるようにすべきであるということを表しているのです。
そこで、個人投資家の方のNISAを利用した分散投資の方法についてみていくことにしましょう。


①投資タイミングの分散

ある金融商品の購入を決めた場合、どのようにして購入するのが最もリスクを低く抑えることが出来るでしょうか。
答えは、当たり前ですが「最も価格が低いときに購入する」でしょう。しかし、理論上はこれが正解でも、実際にこれを実行するのは不可能でしょう。将来の価格変動については予測不可能なため、いつの時点の価格が最も低いのかを現在時点で判断することはできないからです。
それでは、次善の策として「購入するタイミングを分けて、価格が高いときには少量だけ購入し、低いときには大量に購入する」という方法はどうでしょう。確かに、この方法では、価格が高いときに大量に購入するのを防ぐことが出来るため、リスクを比較的低く抑えることはできますが、これは現実的な方法といえるのでしょうか。将来の価格変動について予測できないのは上の場合と同じであるため、この方法も実際に実行するのは困難なように思われるかもしれません。しかし、この方法はドルコスト平均法と呼ばれ、実行可能な方法であり、投資をするうえでは必ず知っておかなければいけない投資の基礎といえるものです。

それでは、ドルコスト平均法について具体例を挙げてみていきましょう。
例えば、ゴールド(金)を3カ月にわたって購入すると決めた場合、(ⅰ)毎月1gずつゴールドを購入する方法と(ⅱ)毎月1万円ずつゴールドを購入する方法では、どちらの方がリスクを低く抑えられるでしょうか。ここでは、理解しやすいように(極端な価格設定にします)、3か月のゴールドの価格が、1g=10,000円→15,000円→5,000円と推移したと仮定しましょう。
この場合、(ⅰ)の方法によると、3か月で合計30,000円を投じて3グラムのゴールドを購入することになります。
一方、(ⅱ)の方法によると、3か月で同じく合計30,000円を投じて約3.6グラムのゴールドを購入することになります。
この結果から、(ⅰ)の方法に比べ(ⅱ)の方法の方が、有利な運用が出来ている(リスクを低く抑えることが出来ている)ことがお分かり頂けると思います。これは偶然ではありません。
(ⅰ)では毎月1gのゴールドを購入すると決めてしまっているため、ゴールドの価格が高かろうが低かろうが毎月1gを購入することになりますが、(ⅱ)では毎月1万円分しか購入しないと決めているため、価格が高いときには少量しか購入せずに済み、低いときには大量に購入するといった有利な購入が自然と可能になるからです。
ここでいう(ⅱ)の方法がまさにドルコスト平均法です。


②投資対象の分散

上では投資するタイミングの分散についてみましたが、分散の方法には、投資対象を分散するという方法もあります。
これは、株式や債券、為替、商品、不動産等の投資対象に、ある一定割合ずつ分散して投資をして、リスクを軽減するというものです。例えば、投資資金の全額を株式に投じていた場合、何らかの要因で株価が下落すると大きな損失を被ってしまいますが、株式だけでなく他の投資対象にも資金を投じていれば、株価が下落しても他の投資対象の価格が上昇していることもあり得ますので、損失を抑えることが出来るのです。
そこで、投資対象の分散方法について具体的に検討してみたいと思います。もちろん、分散の方法は、投資家の年齢や保有資産、投資方針等で全く異なりますので、ここで挙げるものはあくまで1つのケースということでご理解ください。
まず、投資するに当たって最も大切なことは、自分に理解できないものには投資をしないということです。理解できない時点で、その投資対象が有しているリスクを完全に把握することが困難になっているからです。また、その投資対象に関する情報を確実に得ることが出来るということも重要です。投資の成否は、情報量の多寡で決まるといっても過言ではないため、より多くの情報を容易に入手できるか否かは慎重に判断することが必要です。これらを踏まえて、理解が容易で情報も容易に入手できる投資対象を探すと、まず債券や株式が挙がってくるでしょう。
将来のある一時点での資産形成を目指して運用する場合、債券のみの運用では期待したほどの成果は得られないため、債券と株式は分散投資をするうえでの必須の投資対象といえます。この2つに分散投資するだけでも、どちらか一方に投資する場合に比べてリスクを軽減することは出来ます。しかし、他の投資対象にも分散することで、より一層リスクを軽減できると考えられるため、投資資金の一部は他の投資対象に振り向けることが有用でしょう。例えば、大豆や小麦といった穀物(商品)の価格は、景気動向には大して影響を受けることはない半面、天候や収穫量によって大きく影響を受けます。ということは、景気動向の影響を大きく受けてしまう株価とはまったく異なる動きをするといえるため、リスクを軽減する効果は大きく、分散投資には適しています。


③NISAで求められる分散投資

NISA制度は、毎年100万円までの株式や投資信託について、売却益や配当金・分配金が非課税になる制度で、同時に最大500万円を非課税で運用できます。
そのため、NISA制度を最大限利用するためには、金融資産の購入タイミングを100万円ずつ5年に分けることが求められ、その意味では購入タイミングが自然と分散され、分散投資に一役買うことになります。また、各年のNISAの非課税枠で、異なる金融資産を5年間にわたって購入すれば、投資対象が分散され、これまた分散投資に一役買うことになります。しかし、NISA制度に、年間100万円までや最大5年という制約がある以上、上記のような分散は可能にはなりますが、完全に自身に適した分散投資は望めません。また、株式の中には、最低投資金額が100万円を超える企業も存在しますし、現物の不動産投資を考えた場合、通常100万円以下では投資不可能です。したがって、100万円を超える資金をもって分散投資をしようとしても、NISA口座の中だけでは対応できなくなります。

このような点を考慮すると、分散投資をする際に重宝するのが、投資信託といえます。投資信託は、小口(少額)での投資が可能ですし、毎日の基準価格で追加購入可能であるうえ、一つの投資信託で様々な金融商品に投資しているものがあるため、上記のような問題を解消しつつもNISA口座の中で分散投資が可能になり、非常に有用といえます。したがって、自分の投資方針に合った投資信託を、NISA口座で購入するのがよいでしょう。

以上では分散投資の有効性について述べてきましたが、分散する投資対象は多ければ多いほどよいというものでもありません。自分で無理なく管理できる程度に分散し、変化に応じて臨機応変に対応できるようにしておくのが重要で、そのうえで非課税枠があるNISA口座を活用することでより有効な資産運用が可能になることでしょう。

photo credit: epSos.de via photopin cc

【関連記事】
NISA(ニーサ)とは?今さら聞けない少額投資非課税制度のポイント
NISA(ニーサ)で比較!今年、開設・乗換すべき証券会社はどこ?
NISA(ニーサ)で投資信託を始めるまでに知っておきたいこと
NISA(ニーサ)口座開設でもらえるキャンペーンを徹底比較!!
NISAで始める賢い資産運用〜口座開設の基本を解説〜
勝率9割超えの年も?人気のIPO株に非課税で投資する方法