仮想通貨リップルの急騰が話題を呼んでいる。リップル(XRP)と円の相場は5月に入り1リップル10円前後で推移していたが、7日の夕方頃から勢いづき、8日夜には24円を突破した。その後は16円程度にまで値を戻すなど、激しい値動きが続いている。急騰の背景には、リップルが仮想通貨としてだけでなく、通貨間決済などの実務利用の面での期待がかけられている事もあると見られる。

短時間、低コストで国際間資金決済が可能に

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(写真=PIXTA)

リップルは米リップル社が開発した、暗号通貨である。ビットコインなどと同様、取引所で仮想通貨として取引されている。4月末時点での時価総額を見ると、ビットコイン、イーサリアムに次いで仮想通貨として第3位の規模を誇っている。

リップルが注目されているのは、単なる仮想通貨としての価値だけではない。国際的な通貨間での資金決済を媒介する機能に期待が集まっている。現在、世界の名だたる大手銀行が、リップルを活用した国際送金の即時決済サービスを研究しており、三菱UFJ銀行や米バンクオブアメリカ等は2018年にも同サービスを始めるとしている。国内でもメガバンクから地銀まで約50行が参加するリップルを使った送金サービスのコンソーシアムがあり、4月末に三菱UFJ銀行の参加が決まった事でも話題となった。

リップルを使った国際間資金決済は決済スピードとコストの低さが魅力である。従来の国際間資金決済は間に中継銀行を介すだけでなく、国際銀行通信協会との送金情報のやり取りも必要となり、決済完了までに数日掛かるケースもあった。リップルを使った資金決済は中継銀行を介す必要もなく、数秒で決済が完了する。24時間受付も可能となり、送金に係るコストも10分の1程度に減らす事が可能となる。

投機資金の流入が価格変動を増大させている

このような利便性に着目し、世界中の銀行がリップルを活用する資金決済サービスの導入に動いている。今回のリップルの急騰もこうした世界的な流れが背景にあった可能性が高い。

またリップル上昇の勢いが加速した時間は、フランス大統領選挙でマクロン氏が当選確実との報道が流れた時間と重なる。フランスでの懸念事項が一段落した事により、リップルの将来性を材料に投機的な資金の流入が相次いだと見られる。

仮想通貨の値動きの予想は非常に難しい。株や各国の通貨と異なり、業績や国の成長といった値段の根拠となるデータに乏しい。仮想通貨自身の成長性という判断の難しい尺度を基に、投機的な資金の流出入が繰り返されている。またアナリストのように値動きを客観的に分析する視点も少なく、正しい情報を掴む事にも苦労する。

8日夜を境にリップルは激しい上下を繰り返している。インターネット上では資産の増加を喜ぶ声と並んで、高値づかみをしてしまったと嘆く投資家の声も見られる。一方、急騰の原因や今後の値動きに対する冷静な分析は少ない。国際的な資金決済への利用はポジティブなニュースではあるが、今のリップルの妥当な水準がどこにあるのかを判断する事は難しい。

取引高の多いビットコインを始め、仮想通貨の売買は投機的な資金に踊らされているように見える。投資を行うにあたっては、冷静な判断を心掛けたい。( FinTech online編集部

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