日本および世界の大企業の中には、創業時には現在の商品と別の物を作ったり販売したりしていたという例が少なくない。「進化論」を唱えた自然科学者、チャールズ・ダーウィンの言葉に「強い者ではなく、変化できる者が生き残る」とあるが、これから列挙していく世界に名だたる10社は、いかなる変化を経て現在の姿になったのか。

IBMは肉切り機

創業時の事業,IBM,マクドナルド
(写真=nattul/Shutterstock.com)

コンピューター関連製品やサービスを世界展開するIBM(アメリカ)が1911年にニューヨークで創業した当時に販売していたのは食肉スライサーと業務用の秤だった。

第2次世界大戦時に軍隊のために大規模な自動デジタル計算機を開発したことから、現在につながるコンピュータービジネスが始まったという。

イオンは織物商

大手スーパーのイオン <8267> は現在、営業収益8兆円超えと日本の小売業1位の地位を占めるが、会社の起源である「篠原屋」は綿織物と麻織物、針や糸などの日用品や口紅、かんざしなどを扱う太物・小間物商だった。その後、「岡田屋呉服店」と改名し呉服商に業種を転換している。1970年には仕入会社の「ジャスコ」に社名変更、大型スーパーの展開が始まり、今に至っている。

任天堂は花札、トランプ

「スーパーマリオシリーズ」や「ポケモンGO」のほか数多の家庭用ゲーム機で世界を席巻する任天堂 <7974> は1889年(明治22年)に京都で花札の製造を始めたのが起源で、1902年(明治35年)には日本初のトランプ製造に着手、1947年に任天堂の前身である「丸福」を設立した。現在でも花札やトランプ、百人一首のほか、麻雀や将棋、囲碁などを製造している。

トヨタ自動車は織機

世界で1000万台に一番乗りし、ハイブリッド車や燃料電池車などで先行するなど、日本が世界に誇る大企業、トヨタ自動車 <7203> はもともと、「豊田自動織機製作所」という織物を製造する機械のメーカーだった。現在は「豊田自動織機」 <6201> と名前を変え、繊維機械だけでなく、自動車部品の製造などを行っている。

マクドナルドはミキサーマシン

世界最大のファストフードチェーンストア、マクドナルドは1940年にディック・マクドナルドとマック・マクドナルドの兄弟が開業したハンバーガーレストランが始まりだ。この店を訪れ、兄弟の効率化された経営手法に衝撃を受けたことから、兄弟から株式を買い取り、世界的な飲食革命につなげた人物は、ミルクセーキ用のミキサーマシンの販売をしていたレイ・クロックという人物だった。

パナソニックは二股ソケット

パナソニック <6752> 創業者の松下幸之助氏が大阪で「松下電気器具製作所」を創設したのは1918年のことで、彼は当時23歳だった。「便利で品質のよい配線器具を作れば一般家庭にはいくらでも需要がある」との確信のもと、配線器具の考案に没頭し、最初の製品である「アタッチメントプラグ」と「2灯用差込プラグ」を発売した。品質がよく、価格も安かったのでよく売れたという。家電から住宅、車載技術まで幅広く展開するパナソニックの源流はここにあった。

シャープはベルトバックル

台湾の鴻海精密工業に買収されてしまったシャープ <6753> だが、創業者の早川徳次氏が1912年(大正元年)に独立開業し、発明したのはなんと電気機器とは何の関係もない、穴のいらないベルトのバックル「徳尾錠」だ。その後、1925年にラジオ放送が始まるという新聞記事をみた早川氏は、大阪でアメリカから届いたばかりの鉱石ラジオを買い求め、分解して研究し、自らの手で組み立てに成功する。鉱石ラジオは飛ぶように売れ、現在の電機メーカーとしてのシャープにつながることになった。

サンリオはシルク製品

「ハローキティ」などたくさんの人に親しまれるキャラクターで世界にキャラクターコンテンツビジネスを仕掛けるサンリオ <8136> は1960年に山梨県産の絹製品を販売する同県の外郭団体「山梨シルクセンター」を独立させ、「山梨シルクセンター」として資本金100万円で設立した株式会社だった。本業は失敗したが、後に小物雑貨などに転じ、製品にキャラクターのイラストをつければ売れることに着目したことが、現在のビジネスにつながっている。

ワコールはアクセサリー

女性用下着販売を中心とした衣料品メーカーのワコールホールディングス <3591> は、1949年に和江商事として設立された。当時は女性用のアクセサリーの行商をしていたが、数年後には売れ行きが伸び悩み始めたうえ、「これからは和装から洋装に変わる」と読んだ創業者の塚本幸一氏によってブラジャーをはじめとする下着の製造販売に切り替えた。

ルイ・ヴィトンはトランク

世界最高級のラグジュアリーファッションブランドとしてその名をはせるルイ・ヴィトン(フランス)は1854年、世界初の旅行用カバンの専門店として設立された。創業者、ルイ・ヴィトンは1837年、16歳でパリで見習いを始めたのはトランク職人だった。

当時は馬車や船などが交通手段で荷物が手荒に扱われていたため、職人にトランクを注文する旅行者が多かったといわれる。当時のトランクは水に浮くことで評判となったが、軽量化のために生地の製法が変わったため、現在は浮かないという。(フリーライター 飛鳥一咲)

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