Googleのデジタル・ウォレット「Android Pay」で採用されている指紋認証サービスが、PayPal決済でも使えるようになった。
GoogleとPay Palは今年4月から、米国でAndroid PayとPay Palの共同決済サービスを開始しており、今回の新サービスは両社の提携関係を拡大させたものだ。
「Apple Pay」とPay Palの提携は実現しない?
パスワードやユーザーネームの入力を必要としないブラウザー・ベースの決済(Google Chromeから画面にタッチするだけで認証が完了)は、すでにAndroidOS4.4以降のスマホに採用されている。
またPay Palが開発したタップ式のスマホ専用スピード決済、「One Touch」 は、瞬く間に世界中で5300万人 のユーザー、500万軒の小売業者から利用される人気商品へと成長を遂げた。
Android Payとの提携は、これまでオンライン決済市場に専念していたPay Palが、実際の店舗をとおした決済市場への本格参入に乗りだしたことを意味する。既存の決済大手にとっては、強力なライバルの出現だ。
Pay Palは一貫してより多様な企業との提携関係にオープンである点を強調しているが、Googleとの絆が深まれば深まるほど、Appleに代表されるほかのテック大手と提携関係を結ぶ可能性は、低くなると見られている。
憶測はどれも決定打に欠けるものの、GoogleとAppleのライバル関係が定着してしまった今、モバイル決済市場で微妙な派閥化が起きているといったところだろうか。
事業規模や領域にとらわれない提携関係が、新たなビジネスモデル
Eコマース市場を成長させる起爆剤となったモバイル決済は、GoogleやPay Pal、Apple、Facebookといった国際大手企業にとって、新境地を開拓する絶好の事業チャンスだ。
事業規模や領域にとらわれない提携関係が、これらの企業の新たなビジネスモデルとなっている。今回Googleと市場開拓に乗り出しているPay Palは、2015年にeBayと分社したのを機に、当時eBay のライバルとされていたAmazonに、共同決済システムの提案を持ち掛けている。
大手金融機関との提携にも積極性を見せ、昨年末にはCitiカード加入者にPay Palサービスの提供を開始するなど、着実に新たな顧客層を拡大している。
一方Googleは今後さらに視野を広げ、最終的にはGoogleアカウントとクレカをリンクさせるだけで、Android Payなどのアプリやツールを利用しなくても、決済可能なアプリの開発を検討中だという。
今後5年で377兆市場に成長?アジアでの需要拡大に期待
米市場調査会社、アライド・マーケット・リサーチ は最新のレポートの中で、モバイル決済市場が2022年までに3兆3880億ドル(約377兆4232億円)に達すると予想している。CAGR(年平均成長率)は33.4%。特に中国、インド、日本を含むアジア太平洋地域において、凄まじい成長が期待されている。
デジタル・キャッシュ化を目指す中国やインドでは、モバイル決済とともに、デジタル法廷通貨発行の可能性も報じられている。実現すれば、「現金が消える日」も夢ではなくなるだろう。すでに中国は、Ali Pay(支付宝)人気にともない、モバイル決済NO.1国の位置づけにある。
調査が実施された2015年は、「auかんたん決済」のようなSMSを利用した決済からの収益が、モバイル決済市場の54%を占めており、次いでWAP(ワイヤレス・ アプリケーション・プロトコル)、NFC(近距離通信)による決済が主流となっていた。
モバイル決済はオンライン・ショッピングという枠組みを超え、公共料金の支払いやP2P決済など、日常生活を向上させるツールとして浸透し始めた。377兆円市場への成長も、決して非現実的な予想ではない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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