Googleによる独音楽ファイル共有サイト「サウンドクラウド」の買収話が報じられている。両社が合意に至った場合、ブロックチェーン技術を音楽産業に普及させる、絶好のチャンスとなるかも知れない。

Googleはすでにブロックチェーン技術を医療分野に提供しており、視野を拡大すれば知的財産権の保護や公平なロイヤリティ・システムの構築など、新たなエコシステムを音楽産業に持ち込むことも可能になるはずだ。

ネットの脅威、知的財産権の侵害をブロックチェーンで解決?

サウンドクラウドは、アーティストが自らアップロードした音源売りにする無料ダウンロードサイトだ。お気に入りのアーティストをフォローしておけば、新作が配信される度にタイムラインに表示される。さしずめSNSの音楽版といったところだ。

アーティストにとっては世界中に無料で自分の作品を売りこむチャンスだが、最大の問題は著作権である。無断転用や盗作など、特にインターネットでは曖昧になりがちな知的財産権が侵害されるリスクが高い。

近年、音楽に限らずアートや書籍の著作権保護に、ブロックチェーン技術を活用するという流れが徐々に浸透し始めている。オープンソースによるデータベースと、スマート・コントラクト技術を報酬システムの基盤とするウジョ・ミュージック などはその一例だ。

またクラウド・サービスを通して投稿した作品をリアルタイムで承認するアプリ、「Uproov」 も、著作権をブロックチェーン化するという点で共通する。

医療分野でブロックチェーン技術に取り組むGoogle

サウンドクラウドの買収に関して最初に名前が挙がっていたのは、欧州発の音楽人気ストリーミング・サービス、Spotify だ。当初(2016年12月)は買収総額10億ドル(約1112億円)と報じられていたが、続いて浮上した候補がGoogleであったことから、サウンド・クラウドは希望売却額の半分にあたる5億ドル(約556億円)で、交渉に乗りだしたと報じられている。

Googleから正式なコメントは発表されていないが、買収に乗りだすとすれば、既存のサウンドクラウドに何らかの大胆な改革が加えられることも十分に予想できる。可能性として最も高いのは、ブロックチェーン技術の採用ではないだろうか。

Googleはほかの多くの大手同様、2010年に子会社、Google DeepMind(旧DeepMindテクノロジー)を英国に設立するなど、ブロックチェーンやAI技術の研究・開発に着手している。
DeepMindでは主に医療向けアプリ開発に取り組み、昨年はNHS(英国民保健サービス)との提携のもと、「DeepMind Health」というプロジェクトを発足させた。

このプロジェクトではAIとブロックチェーンという二大最新テクノロジーを融合させることで、患者の個人情報をリアルタイムで管理可能なシステムの構築を目指している。

プロのミュージシャンもブロックチェーンに音楽産業の未来を託す

Googleがすでに培ったブロックチェーン技術を、他領域に活かそうとする可能性は高い。ブロックチェーンの分散型データという特徴を最大限に活かし、サウンドクラウド買収後に知的財産権の保護対策として採用しても不自然ではないだろう。

音楽産業にブロックチェーン技術を応用しているスタートアップは、ピアートラックス やビット・チューンズ などが、密かな人気を呼んでいる。

ピアートラックスは、ユーザーとアーティスト間の取引に「アーティスト・コイン」なる仮想通貨を利用するプラットフォーム、「ミューズ」を提供。仲介システムを省略することで、アーティストに本来の収益が渡る。ビットチューンズは独立したP2P共有ファイル・システムを確立し、ピアートラックス同様、公平なアーティストにロイヤリティを創出している。

プロのミュージシャンからも、ブロックチェーンに音楽産業の未来を見出す声が上がっている。グラミー賞受賞シンガー、イモージェン・ヒープ氏は昨年、スマート・コントラクトに基づく音楽エコシステム「マイシリア」 を設立。既存のレコード会社を介さず、安全かつ公平な印税契約および著作権が守られるという、新たなビジネスモデルの構築に成功している。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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