過疎地域の公共交通維持や高齢者ら買い物弱者の新たな移動手段として注目が高まる自動運転車の実用化に、政府が動きを加速している。内閣府が3月から路線バスの自動運転実証実験を沖縄県で始めたほか、国土交通省も夏ごろに中山間地域で自動運転サービスの実験に入る。

無人自動走行移動サービスを地域限定で2020年をめどに市場化するなど、政府は完全自動運転の実用化時期を前倒しした目標を掲げている。オールジャパンで国際競争力を高めようとするこうした取り組みにより、自動運転実用化に向けた足音が急速に高まってきた。

内閣府は沖縄でバス自動運転システムの実験スタート

自動運転
自動運転のイメージ(写真=chombosan/Shutterstock.com)

内閣府は3~4月、沖縄県南城市あざまサンサンビーチ地区の公道で小型路線バス自動運転システムの実証実験を進めた。実験地は那覇空港から車で1時間ほど。コースは往復2.4キロメートルで、往路と復路に各1カ所の仮想バス停留所を設けた。

自動運転のレベルは「レベル2」相当。ちなみに米運輸省のレベル分けでは、完全自動化は「レベル4」以上となる。定員約20人の実験用バスが全地球測位システム(GPS)で設定された軌跡に沿い、時速30キロで走った。

チェックしたのは技術面で、アクセルやハンドルの自動制御に加え、バス停で正確に停止することや、障害物の発見と車線変更、走行路に沿った車線維持ができるかを検証した。

沖縄本島南部にある南城市は琉球バス交通、沖縄バス、東陽バスの路線が走っているが、便数が少ないことなどから、住民や観光客から「車で移動するしかない」との不満が寄せられている。南城市企画室は「運行コスト削減や運転手不足の解消を実現するカギが自動運転。導入されれば市内の公共交通を充実させられそう」と期待する。

6月には、沖縄県石垣市の石垣島で2度目の実証実験に入る。日時は未定だが、コースは新石垣空港から市中心部とする方向で詰めており、南城市での実験より交通量の多い場所になる見込み。内閣府沖縄振興局は「6月は住民に乗車してもらい、乗り心地についてヒアリングしたい」としている。

国交省は夏に過疎地域で自動運転サービスを検証

国交省の実証実験は人口減少と高齢化社会の進行が続く過疎地域で公共交通を維持し、高齢者の移動手段を確保するのが狙いだ。技術的検証とビジネスモデル検討の2段階に分けて実験を進める。

第1弾の技術的検証場所は、秋田県上小阿仁村、栃木県栃木市、滋賀県東近江市、島根県飯南町、熊本県芦北町の5カ所。具体的な日時は決まっていないが、使用車両にはヤマハ発動機 <7272> 、DeNA <2432> 、先進モビリティ、アイサンテクノロジー <4667> 4社のモデルを採用した。定員10人以上のバスタイプ、2人以上の乗用車タイプを使う。

自動運転レベルは専用空間で「レベル4」、公道で「レベル2」。それぞれ道の駅を拠点に協力者となる住民の自宅や病院、市役所、町村役場などを巡回、路面上の破線を認識する光学ガイドシステムを搭載して安全に走行できるかを検証する。

ビジネスモデルを検討する第2弾の実験場所は、第1弾との地域バランスを考慮するとともに、有識者の意見も踏まえて7月ごろに選ぶ。同時期には官民で自動運転サービスの運営方法や運営主体などについても検討する。

国交省ITS(高度交通システム)推進室は「中山間地で公共交通を維持し、高齢者の事故防止を進めるうえで自動運転の導入は期待が持てる」と語った。

高められるか、日本の国際競争力

自動運転の実用化は世界で激しい開発競争が続いている。内閣府は2014年、戦略的イノベーション創造プログラムの自動運転プロジェクトをスタートさせ、産官学連携で国際的に優位に立とうと計画した。

このプロジェクトを基に2015年、策定されたのが「官民ITS構想ロードマップ2015」。自動運転各レベル別の実用化目標年を「レベル2」が2016~17年ごろ、「レベル3」が2020年ごろ、「レベル4」が高速道路2025~28年ごろ、一般道路2027~30年ごろとした。

ところが、2016年のロードマップでは「レベル3」を2020年と据え置いたものの、「レベル2」を市場化済みと改め、「レベル4」の無人自動走行移動サービスを地域限定で2020年に前倒しした。完全自動走行システムも高速道路で2025~28年としていたのを、場所を限定せずに2025年をめどとしている。

これを受け、内閣府は自動走行システムの大規模な実証実験を秋ごろから東名、常磐道など高速道路と東京臨海地域の一般道路などで実施する計画。政府の成長戦略をつくる未来投資会議はトラックの隊列走行を2018年から実証実験することを打ち上げた。

政府の姿勢が加速した一因には、安倍晋三首相が2015年に「2020年東京五輪で無人自動走行の移動サービス実現を可能にする」との目標を打ち出したことが挙げられる。だが、国家戦略を前倒しせざるを得ないほど激しい欧米の攻勢も、影響を与えたとみられる。

自動車産業は高度成長期に日本が先進国に仲間入りする牽引役となったほか、その後もカーナビやセンサー技術で世界をリードしてきた。揺るぎ始めた技術大国を守ろうとする危機感が、相次ぐ実証実験の裏側に見え隠れする。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の 記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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