欧州を拠点とする大手金融機関による、タックス・ヘイブンを利用した利益創出に最も貢献しているのは、香港であることが判明した。

2015年にトップ20銀行がタックス・ヘイブンで創出した総利益は、250億ドル(約2兆8005億円)。そのうち106 億ドル(約1兆1876億円)が、香港で創出されたものだ。

銀行が高い収益を上げたタックス・ヘイブン

20位 セーシェル 1400万ドル
18位 モルディブ 1900万ドル
18位 バハマ諸島 1900万ドル
17位 英ヴァージン諸島 2000万ドル
16位 レバノン 3800万ドル
15位 バーレーン 5300万ドル
14位 キュラソー島 5400万ドル
13位 マカオ 6700万ドル
12位 ケイマン諸島 1億8900万ドル
11位 オランダ 2億1500万ドル

10位 モナコ 3億5800万ドル
9位 モーリシャス 4億7100万ドル
7位 オーストラリア 5億4300万ドル
7位 バミューダ諸島 5億4300万ドル
6位 ジャージー 8億9600万ドル
5位 シンガポール 9億8600万ドル
4位 アイルランド 23億3400万ドル
3位 ベルギー 31億5700万ドル
2位 ルクセンブルク 49億3300万ドル
1位 香港 1055億1000万ドル

総利益の3割をタックス・ヘイブンが創出

金融機関や大手企業による、タックス・ヘイブンを利用した課税逃れへの批判が、年々高まっている。英非営利組織、オックスファムが発表したレポート によると、欧州を拠点とするトップ20銀行がタックス・ヘイブンで創出した2015年の利益は、総額250億ドル(約2兆8005億円)。桁違いの数字だ。

これらの銀行の総体的な利益(タックス・ヘイブンを含む全世界の利益)の26%が、タックス・ヘイブンで創出されているにも関わらず、総納税額を占める割合はわずか14%、総売上を占める割合は12%にとどまっている。

トップ20銀行の全時間就労者による平均的な利益創出額は年間4万5000ユーロ(約564万円)だが、タックス・ヘイブンではおよそ4倍に値する17万1000ユーロ(約2141万円)が創出されている。こうした数字は、近年社会問題化している富の格差を、これ以上ないぐらい反映しているといえるだろう。

ゴールドマン、モルガンもペーパー・カンパニーを設立

欧州のタックス・ヘイブンを利用しているのは、けっして欧州の大手金融機関だけではない。いわゆるペーパー・カンパニーを設立している米金融機関も、多数見受けられる。ゴールドマン・サックスはケイマン諸島に所有する「従業員ゼロ、税金ゼロ」の子会社から、1億ドル(約 112億800万円)の利益を上げたと報告されている。

モルガン・スタンレーもジャージーの無人無税子会社で6億ドル(約672億4800万円)の利益をあげ、ウエルズ・ファーゴは欧州における利益の65%をタックス・ヘイブンで創出しているという。
2016年に公開され波紋を呼んだ「パナマ文書」では、仏大手ソシエテ・ジェネラルなど、記載された大手金融機関に芋ずる式に捜査の手が伸びたものの、タックス・ヘイブンを利用して巨額な利益を狙う金融機関や大手企業、富裕層は後を絶たない。

より公平に富が循環する世界を目指すのであれば、生ぬるい税制改正などでは到底解決できないのは明らかだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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