JPモルガン・チェースが自社のエンタープライズ向けブロックチェーンに、匿名型ブロックチェーン技術を採用するしているほか、Microsoftやデロイトはイーサリアムのビジネス・プラットフォームに加盟するなど、大手企業のブロックチェーン市場に進出が加速している。
ビットコインの価格急騰の背景には、こうした大手による仮想通貨やブロックチェーンへの関心の強まりが、ポジティブに影響しているようだ。
JPモルガンは想通貨スタートアップ、Zキャッシュと提携
2017年4月にR3の主催するブロックチェーン組織から脱退したJPモルガンは、匿名型ブロックチェーン・ネットワークを提供するZキャッシュ・エレクトリック・コイン・カンパニー と提携。Zキャッシュが独自の仮想通貨に採用している「ZSL(ゼロナレッジ知識セキュリティー・レイヤー」 と呼ばれる技術を、自社のエンタープライズ向けブロックチェーン・プラットフォーム「Quorum」に組み入れる意向を表明した。
ZSLは自動的にブロックチェーン上の取引を完全に匿名化 する技術で、基本的な構造ではビットコインとの類似点が多いものの、追跡不可能という匿名性の高さが売りだ。ビットコインが不特定多数のユーザがアクセスできるオープンソース・ベースであるのに対し、Zキャッシュは特定のユーザのみが管理権をもつ「観覧キー」システムを採用している。
これにより、ビットコインの弱点として挙げられることの多い、プライバシーの保護問題をクリア。高度なセキュリティーを、パブリック・ブロックチェーンで実現している。
JPモルガンは昨年10月、イーサリアムのスタートアップ企業、EthLabと提携し、プライベート・ブロックチェーン「Quorum」を 開発した。
ビットコインを追うイーサリアムは、ビジネス・プラットフォームで勝負
高騰中の仮想通貨はビットコインだけではない。イーサリアムのブロックチェーン研究企業団体、「エンタープライズ・イーサリアム・アライアリエンス(EEA)」 が頭角を現すにつれ、イーサリアム相場も暴騰。
EEA加盟企業数は3倍に膨れ上がった。大手IT企業(Microsoft、サムスン、Intelなど)から大手金融機関(JPモルガン、BBVA、クレディスイスなど)、大手コンサルティング(アクセンチュア、デロイトなど) まで、国際的に名高い企業がずらりと肩をならべ、共同研究・開発に挑んでいる。
こうした大手企業の市場参入という追い風もあってか、Rippleやアルトコイン、ライトコインなども、普及率が高まっている。しかしビットコイン同様、極端な価格変動は見られるため、投資家は要注意といったところだ。
ゴールドマンの元ITディレクターがスタートアップに移籍
EEAの急成長に押されれ気味なのはR3だ。JPモルガンのほか、昨年はゴールドマン・サックスやサンタンデール銀行の脱退も報じられている。ゴールドマンは独自のブロックチェーン研究に専念しているが、サンタンデールはJPモルガン同様、EEAに参加している。
ゴールドマンのブロックチェーン開発状況に関しては、今年にはいってから音沙汰なしだが、一昨年にはトレード用仮想通貨「SETLcoin」まで採用したゴールドマンのことだ。水面下で、大規模なプロジェクトを進行させている可能性が高い。
またゴールドマンのビジネスIT部門でマネージング・ディレクターを務めたトム・ジェソップ氏 が、4月に米ブロックチェーン・スタートアップ、Chainのプレジデントに就任した。ChainはVISAや三菱東京UFJ銀行にも、ブロックチェーン技術を提供している。
各国・地域の政府や大手企業、スタートアップの提携関係により、ブロックチェーンはますます進化して行くだろう。しかし繰り返し議論されている「仮想通貨が市民権を得るか否か」が明確になる日は、まだもう少し先のようだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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