企業会計基準委員会(ASBJ)が実務対応専門委員会を開き、仮想通貨に係る会計ルールの議論を本格化させ、9月にも草案を公表する方針を確認した。仮想通貨の流通量増加を睨み、会計ルール作りが本格化する。

仮想通貨の概念は従来の資産の定義に当てはまらない

仮想通貨,会計基準
(写真=PIXTA)

仮想通貨は法定通貨には該当せず、それ自体が権利を表すものでもない為、有価証券にも該当しない。また仮想通貨の価値は需要と供給によって決まり、それ自体が価値を持つものでもない為、金や一次産品等のコモディティにも当てはまらない。仮想通貨は従来の考え方では捉える事のできない、新しい性質を持った資産である。

現状の会計ルールでは、仮想通貨の取り扱いに関する明確な規定がなく、企業や会計士の判断に委ねられている状況である。主流となっているのが、仮想通貨の保有者は貸借対照表の「棚卸資産」に、発行者は「負債」に計上する方法である。

しかし、本源的価値がゼロである仮想通貨を「棚卸資産」に計上するべきではないという意見もあり、外貨建て資産と同様の扱いを行うべきだという見方もある。また、このようにルールが明確で無い為に、簿外処理を行っている企業も多い。

仮想通貨の処理方法が企業によって異なっている現在の状況では、仮想通貨を持つ企業の正確な価値を図る事が出来ない。また、仮想通貨による巨額損失が突然表面化するケースも考えられる。

ASBJはまず仮想通貨の評価額算出方法のルール作りを話し合い、取引量の多い仮想通貨を時価評価する案が示された。企業の持つ仮想通貨の正確な価値を図る事に繋がる。一方で取引量の少ない仮想通貨に関しては、取得原価基準に基づいて減損の要否を検討すべきとした。取引量の少ない仮想通貨の時価評価は難しく、時価のブレも大きくなる事に配慮した格好だが、取引量での区分は妥当では無いとする意見もある。また、仮想通貨取引所が顧客から預かる仮想通貨については、現金同様に貸借対象表上の「資産」に計上するとともに、同額の「負債」も計上すべきとの考えも示している。

仮想通貨に関する法整備が急がれている

仮想通貨についての会計ルール作りはまだ緒についたばかりである。仮想通貨の流通量増加や利用可能シーンの増加を受け、今年に入ってから議論が活発に行われるようになっている。国際会計基準にも仮想通貨の取り扱いに関する明確なルールはない。仮想通貨に関する法整備が急がれている。

国内では、2017年7月から資金決済法が改正され、仮想通貨の売却時に消費税が課税される事が無くなる。仮想通貨が法律上、モノでは無く、資産として取り扱われる事となった。仮想通貨の概念は現行ルールでは捉えられない為、多くの場所で仮想通貨への対応に迫られている。

ASBJは会計ルールの草案を9月までにまとめる考えを示しており、草案公開後は2カ月以上の期間を設けて意見を募るという。まだ時間は掛かる事となるが、企業価値を正確に掴む事の出来る、明確なルール整備が待たれる。( FinTech online編集部

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