発展途上国におけるガバナンスおよび社会的結果の改善に向け、世界銀行がブロックチェーンラボを開設した。

ラボでは非営利目的の提携先と共に、ブロックチェーン技術が貧困の撲滅に貢献する可能性が探索されるほか、政府機関やメディア、NGOといった組織に対する社会的信用の回復にも役立つ のではないかと期待されている。

プロジェクトには世界80カ国の金融機関が参加する。

ブロックチェーンで地球上全ての人々に金融サービスを

国際通貨基金と並ぶ国際金融機関である世界銀行は、特に発展途上国で見られる極度の貧困を撲滅し、繁栄の共有を促進することを使命に掲げている。

世界各地の様々な領域でブロックチェーン技術の研究・開発が活発化する中、世界銀行はかねてからテクノロジーが貧困の救済に役立つ可能性に注目して来た。

テクノロジーを利用して、地球上全ての人々に金融サービスを提供するという「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」の概念普及に向けた取り組みは、欧米諸国だけではなく日本などでも支援され始めている。

最も身近な例ではスマホとインターネットの普及により、銀行口座を持たない、あるいは銀行にアクセスがない消費者が、低コストで気軽に送金着金出来るようになった。ブロックチェーンを利用したインクルージョン的商品では、メキシコのモバイル決済会社、Saldo.mxによるブロックチェーン低額医療・生命保険 などが、一般的な保険料を払うゆとりのない層に利用されている。

ブロックチェーンの透明性や共有性といった特質を最大限に活かし、例えば発展途上国への支援金や資源などが確実に必要な手に届くようなシステムを開発することも可能だろう。

消費者間で低下する政府や企業への不信感を一掃?

コインデスクの報道によると、銀行や顧客、株主などの需要から生まれたという世界銀行のラボでは、こうしたブロックチェーン環境をさらに追求し、新たな可能性とその影響を明らかにして行く。

世界銀行の開発機関、国際金融公社(IFC)サプライチェーン・ソリューション部門の責任者、スーザン・スターネス氏 はブロックチェーン技術について、「予想を上回る関心や質問が民間の金融機関から寄せられている」と語っている)。

ブロックチェーン技術が、組織そのものの透明化や効率性の向上にも役立つとの期待も高い。

世界28カ国で3万3000人を超える消費者を対象に実施された信頼度調査「エデルマン・トラストバロメーター2017」 では、多くの国で政府や組織への信頼感が著しく低下している現状が明らかになった。

相次ぐ金融機関や企業によるスキャンダルが、消費者の不信感を煽っていることは言うまでもない。今、求められているのは透明性と公平性だ。ブロックチェーン上に全てのデータを記録し共有することで、不正や汚職、詐欺行為といった組織内部・外部の犯罪を未然に防ぐことが出来る。

スターネス氏はブロックチェーン技術が未知の可能性とともに、リスクも秘めている点に懸念を示しており、研究・開発は慎重に進められると予想される。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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