依然として1人当たりのGDPではグローバルに見て低位に位置しているものの、国全体のGDP総額では中国が日本を抜いて世界第2位となっています。

こうした経済力をいっそう強化し、さらに軍事力も拡大していった場合、日本は将来、中国とどのようなスタンスで接するべきなのでしょうか? 膨張していく中国との対峙方法について、いくつかの予測を立ててみましょう。具体的に私は、次の3つのシナリオを想定しています。

(本記事は、菅下 清廣 氏著『 歴史から学ぶお金の「未来予測」 』かんき出版 (2015/7/3)の中から一部を抜粋・編集しています)

菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント、投資家。立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。マーケット情報配信サービス「 スガシタボイス 」、株価の解説・予測が無料で読める「 スガシタレポート オンライン 」を配信中。

日本の今後を占う「3つのシナリオ」とは?

歴史から学ぶお金の「未来予測」

シナリオ① 日米同盟のいっそうの強化(日中の対立激化)
日本は中国の脅威に対抗するため、防衛を駐留米軍のみに依存せず、自国の軍事力を拡大させていきます。その結果、中国とはさらに先鋭的な対立関係となる一方、今後10年以内に日中関係、あるいは日米vs中国で軍事的紛争、衝突が発生するでしょう。

シナリオ② 新しい日米同盟を模索(日本独自の進路へ)
日本が親(米国)離れを果たすという筋書きです。日本は米国の外交・経済政策をさほど重視せず、独自の方針を採るようになります。とはいえ、米国と決別するわけではありません。米国とは従来関係からイコールパートナーシップ、対等な関係をめざすことになるでしょう。

無論、日本の役割、責任の比重は、経済、防衛面などで増えていくことになります。このシナリオにおいても、日本は軍事力の拡大を図っていきます。もちろん、北朝鮮や中国の核兵器の脅威が高まれば、日本の核武装が現実味を帯びていくことになります。つまり、〝自主防衛〞の路線です。

シナリオ③ 実質的な日中経済同盟へ(中国重視)
日本は中国がアジアの盟主であることを認め、その良きパートナーとしてサポート役を務めます。そして、日中でアジア経済を仕切っていくことになります。

明治時代の日英同盟、戦中の三国(日独伊)同盟、戦後の日米同盟に続き、日中同盟に近い戦略的パートナーシップが結ばれるわけです。しかし、中国の共産党政権が続く限り、あくまで経済同盟です。この場合でも、日米同盟は継続されます。米国との同盟関係は、弱体化するでしょうが!?

いずれのシナリオが現実味を帯びてきたとしても、アジアの勢力地図が大きく変わるのは必至でしょう。

押し寄せる中国人観光客の〝爆買い〞が企業の業績や日本経済全体にも大きな影響を与えていますが、同国との外交問題が及ぼすインパクトはその比ではありません。先で述べた3つのシナリオ別に、具体的な影響について考えてみましょう。

シナリオ①日米同盟のいっそうの強化→日中がアジアへの投資を競う

日本は中国とアジアにおいて、マーケットを激しく奪い合うことになるでしょう。ASEAN諸国や他のアジアに、日本企業は猛烈な攻勢をかけるはずです。政府も国策として、日本企業がアジア市場を手中に収めることを推進します。そして、米国がそれを後方支援するわけです。

つまり、次なる時代はアジアが経済活動における主戦場で、日中が争って投資することになります。もしも、日本がこの競争に勝てば、国別GDPランキングにおいて現状では中国に抜かれて3位に転落しているものの、その順位に再び変動が生じる可能性も出てきます。

シナリオ②新しい日米同盟を模索→株式市場や為替市場では波乱も

このシナリオが実現するためには、かなりの政治力と外交力が求められることになります。しかし、米国、中国と等距離において、上手く事を進められれば、アジア市場はもちろん、欧米市場も手中に収められるでしょう。しかし、日米同盟が、時には不安定化し、株価や円・ドル相場の波乱要因となるでしょう。

シナリオ③実質的な日中経済同盟へ→中国の支配力強まる?

アジア全体が巨大な中華経済圏と化し、日本もその中でサポート役に徹することになります。当然ながら、中国の政治力はさらに強まって、尖閣諸島も含めて、中国のアジアにおける制海権をある程度、日本は容認せざるをえなくなるかもしれません。つまり名を捨てて実(経済)を取るという方向です。とはいえ、日中間の軍事的な衝突が発生するリスクは極めて低くなるのも確かでしょう。米中関係が悪化すれば、また話は別となってきますが……。

さて、あなたはこの3つのシナリオの中で、いずれが現実となる可能性が高いと考えるでしょうか? 現状、②と③はありえないように思うかもしれません。

ですが、日本で中国寄りの政権が誕生すれば、にわかに現実味を帯びてくることになるでしょう。現実に、安倍政権の要の一人、二階政調会長が、3000人の財界人を引きつれて訪中しています(本書出版当時)。米国にしても、かなり中国に気を遣った外交政策を採っています。

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