キタサンブラックをご存知だろうか? 歌手の北島三郎がオーナーで有名な競走馬だ。6月の宝塚記念で人気1位ながらも馬群にまぎれ9着に散ったキタサンブラック……読者の中にも悔しい想いをされた人がいるかも知れない。

しかし、筆者としては、キタサンブラックの人気もあって「競馬ブーム」が復活しつつあるのは大歓迎だ。とりわけ地方競馬の回復が顕著で、東京都競馬 <9672> は業績にも株価にも文字通り「拍車」がかかりそうな勢いである。今回は東京都競馬に焦点を当ててみよう。

アベノミクスで競馬ブーム再来?

JRA(日本中央競馬会)の売上は、1997年の4兆円をピークに減少し、2011年には約2.3兆円にまで落ち込んでいた。その後は、アベノミクスによる景気回復を背景に増加に転じ、2016年には前年比3.4%増の約2.7兆円まで回復、5年連続の増加を記録している。

中央競馬だけでなく、「地方競馬」の回復も顕著だ。
地方競馬は1991年の9862億円から2011年の3314億円まで7割近くも落ち込んでいた。全国で60カ所以上あった地方競馬場も、売り上げの激減で大リストラが実行され、現在は17カ所にまで縮小している。そんな苦しい時代を経て、2016年の地方競馬の売上は前年比14.4%増の4772億円と回復傾向を強めている。

競馬法改正、IT化の推進が実を結ぶ?

昨今の地方競馬の回復をもたらした要因は複合的である。先に述べた通り、アベノミクスによる景気回復の影響や大リストラが功を奏した面も大きいだろう。

見逃せないのは2004年の競馬法改正だ。
落ち込みの激しい日本競馬界を変革するために「勝馬投票券発売業務」などのオペレーションを民間業者へ委託することが可能となったのだ。当時のライブドアやソフトバンク、楽天などのIT系大手が業務委託を受け、IT化を推進したのである。

その結果、現在では地方競馬はインターネット中継でリアルタイムに観戦することが可能となった。馬券もスマホやタブレットのアプリ等でレース直前でも簡単に購入できるようになった。

ちなみに、東京都競馬が管理している勝馬投票券発売システム「SPAT4」はもともと自前の電話システムだったのを、楽天との提携でインターネット化したものだ。インターネット化で、全国の地方競馬の馬券がより手軽に購入できるようになった「SPAT4」の手数料収入は、現在では東京都競馬の収益の大きな柱となっている。

東京都競馬の好決算を支える「SPAT4」

東京都競馬のメイン事業は「公営競技事業」で、大井競馬場と伊勢崎オートレース場の施設賃貸に加えて、「SPAT4」等在宅投票システムの賃貸手数料などが中心となっている。

4月28日、東京都競馬が発表した2017年12月期第1四半期(1〜3月)の売上は4.5%増の42億1000万円で、本業の利益を示す営業利益は17.9%増の8億2000万円と好決算だった。セグメント別の売上を見ると「公営競技事業」は24億円で6.6%増、同利益は6億5000万円で22.8%増と増収益を牽引しているのが分かる。

ちなみに、「公営競技事業」の売上構成は約54%で、そのうち61%が「SPAT4」等からの手数料収入だ。

地方競馬の復活を後押ししているのは、ネット生中継と「SPAT4」に他ならない。競馬場や場外馬券売り場に足を運ばなくても、家で気軽にインターネットを見ながら投票する人達に支えられているのである。

株価は年初来の高値更新

最後に株価を見てみよう。東京都競馬の株価は5月31日の2430円を底に上昇傾向を強め、先週7月19日には年初来高値となる3240円を付けた。5月末から3割以上の上昇である。今週28日には中間決算の発表を予定しており、決算期待の買いが入っているとの観測もある。

SPAT4は、南関東4競馬以外の地方競馬券の発売は限定的に実施していたが、今年4月1日より地方競馬全場・全レースの発売を開始しており、人気回復を一段と後押しする可能性を秘めている。今後の東京都競馬の動向からは益々目が離せなくなりそうだ。(ZUU online 編集部)

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