アパートやマンション、オフィス、店舗などを借りる場合、オーナーとの間で建物賃貸借契約を締結する。全国的にはそれほど一般的ではないが、東京など関東地方では、建物賃貸借契約の中で、更新料の支払いを定める特約条項を置くことが多い。更新料とは建物賃貸借契約を更新するに当たり、賃借人が賃貸人に支払う金銭のことだ。通常は、新賃料の1カ月分や2カ月分などと定めることが多い。

具体的には以下のような条項だ。なお、ここで「甲」とは大家やオーナー、つまり、賃貸人(貸主)のことを指し、「乙」とは入居者やテナントなど、賃借人(借主)のことを指す。

「乙が更新を希望する場合で甲乙双方から契約期間満了6ヶ月前までに特段の申し出がないときには、本契約は自動で更新されるものとする。その際、乙は甲に対し、更新後の賃料の1ヶ月分を更新料として支払うものとする。」

更新料の支払義務があるかどうかは契約書の記載次第

更新料,法定更新
(写真=PIXTA)

更新料の支払義務があるかどうかは契約書の記載次第だ。

例えば、契約書に上記のような更新料の特約条項が定められていないにもかかわらず、慣習を理由に更新料の支払義務が生じることはない。この点が争われた最高裁判例では、更新料は関東以外の地方ではあまり普及しておらず、慣習とまでは言えないとされた。

逆に、契約書に上記のような更新料の特約条項が定められている場合には、更新料を支払わないと契約を更新できない。このような特約条項は賃借人に不利益なので信義則に反し違法無効ではないかという裁判が各地で起こされ、下級審の判断は分かれた。しかし最高裁は、更新料の額が、賃料の額や更新される賃貸借期間などと比べて高額に過ぎなければ有効であると判断した。

借地借家法に基づく「法定更新」とは何か

それでは、建物賃貸借契約が法定更新された場合にも、更新料の支払義務が生じるのか。

法定更新とは、借地借家法第26条第1項の規定に基づく更新のことをいう。

借地借家法第26条第1項
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

つまり、契約書に定められた自動更新条項に基づく更新ではなく、借地借家法に基づく更新であるとして、更新料の支払いを拒絶することができないかということだ。

この点について下級審の判断は分かれている。貸主・借主どちらにとっても、 勝ち負け両方の結論がありうる。

更新料の支払義務はないとする見解の根拠

更新料の支払義務はないとする見解の根拠は、上記のような更新料の特約条項は、あくまでも「乙が更新を希望する場合で甲乙双方から契約期間満了6か月前までに特段の申し出がないとき」という自動更新に適用されるものであって、借地借家法第26条第1項の規定に基づく法定更新には適用されないとするものだ。

また、契約の定めがないにもかかわらず更新料の支払義務を認めることは信義則(民法第1条第2項)や消費者契約法第10条に違反すると主張する。

民法第1条第2項

権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

消費者契約法第10条

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

更新料の支払義務はあるとする見解の根拠

他方、支払義務はあるとする見解の根拠は、以下の点を挙げる。第1に、更新料は実質的に更新後の賃料の一部前払いとして新賃料の補充を目的としていると解釈される。第2に、更新料の特約条項には法定更新の場合に更新料の支払いを免除するとは定めていない。第3に、自動更新した他の賃貸人との公平を害する。第4に、更新料の額が新賃料の1ヶ月や2ヶ月分程度であれば、賃料の額や更新される賃貸借期間などと比べて不当に高額とは言えない。

契約書の更新料特約条項の記載ぶりを見てみよう

このような混乱状況を防衛するため、最近では、契約書の中に、「法定更新の場合も2年に1度更新料支払義務が生じる」というような特約条項を書き込むことも多くなってきた。

あなたがもし建物賃貸借契約の更新時期を迎えているのであれば、契約書の更新料特約条項の記載ぶりを見てみるのもよいだろう。現実に争うかどうかは別としても、契約書のちょっとした書きぶりによって金銭の支払義務が生じたり生じなかったりする法律の恐ろしさと面白さを感じて頂けるのではなかろうか。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有)

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