公共施設の老朽化が進み、維持費の増加が地方自治体の重荷になってきた。このまま施設を維持し続ければ、財政に極めて深刻な影響が予想されるだけに、全国に自治体の大半が「公共施設等総合管理計画」を策定し、本格的な施設の統廃合や機能集約に乗り出す構えだ。

札幌市や大阪府岸和田市など既に施設の機能集約に着手した事例が出てきた。総務省は自治体に施設の種類ごとに具体的な対応策をまとめる「個別施設計画」の作成を指導し、公共施設の縮減を求めている。

公共施設等総合管理計画を自治体の98.2%が策定

過疎化,統廃合,社会福祉,地方自治体,財政難
岸和田市の新福祉総合センター(画像=岸和田市Webサイトより)

総務省によると、公共施設等総合管理計画は老朽化が進む公共施設の現状を把握したうえで、計画的な再編策を示し、自治体の負担軽減への道筋を示すもので、2016年度末までに自治体の98.2%が策定した。うち都道府県、政令市はすべてが策定済みだ。

総務省が可能な限り数値目標を打ち出すよう求めているため、縮減目標を掲げた自治体も少なくない。長野県松本市は2045年までに公共施設総量を20%削減する目標を設定した。千葉市も将来の予算不足を埋め合わすためには、15%の施設面積縮減が必要としている。

個別施設計画は公共施設等総合管理計画に基づき、インフラ施設や庁舎など施設の種類別に具体的な縮減計画をまとめるもので、総務省は2020年度をめどに策定するよう求めている。

地方財政白書2016年版によると、全国の自治体が所有する公共施設は、公営住宅240万戸、公立保育所1万施設、体育館6600施設、公立高校3600校などに及ぶ。多くが高度成長期に建設され、老朽化で維持管理に今後、多額の予算が必要とみられている。

これを受け、総務省は2014年度から施設の解体に充てる除去債の発行を認めたほか、2015年度から施設の集約事業に使う最適化事業債を創設した。公共施設等総合管理計画を策定することが発行の条件となる地方債だ。

札幌や岸和田で機能集約の複合施設が続々と

岸和田市は、市内に分散していた障害者支援施設や児童福祉施設の機能を高齢者施設に集約した福祉総合センターを7月、南海電鉄岸和田駅近くに完成させた。鉄筋コンクリート一部4階建てで、延べ約7500平方メートル。1階に児童発達支援の保育所、2階に市民活動サポートセンターも入居した。

市内は高度成長期の人口増加で多くの公共施設が建設された。今後30年間でこれらの施設を維持するとなれば、年間128億円余りが必要になるが、最近5年間の投資的経費と維持管理費は67億円余りで、61億円の予算不足が生じる計算だ。

岸和田市公共施設マネジメント課は「延べ床面積にして今後10年で3%、20年で30%削減する方針。市民に必要な施設やサービスを維持しながら、効率化を図りたい」と述べた。

茨城県ひたちなか市は市中心部にある民間企業の遊休施設を取得し、老朽化した生涯学習センター、青少年センターの機能を移転するとともに、子育て支援、地域交流機能を加えた複合施設を整備した。10月にオープンする。

複合施設は鉄筋コンクリート一部3階建て延べ約3700平方メートルで、1階に生涯学習センターと青少年センター、まちづくり交流スペース、2階に子育て支援センターが入る。ひたちなか市生涯学習センターは「中心市街地のにぎわい創出にも貢献したい」と意欲的だ。

市内の公共施設にかかる維持経費は年間で市民1人当たり1万5800円だが、現在の施設を今後も維持した場合、40年後に3万7016円と2倍に膨れ上がる見込み。現状の投資額でまかなうとすれば、半数の施設を廃止しなければならないという。

札幌市は白石区役所建て替えに合わせ、地下鉄白石駅に直結した場所に絵本専門の図書館など多機能を備えた複合庁舎を2016年11月、オープンさせた。鉄筋コンクリート7階建てで、延べ約1万6000平方メートル。保健センター、求職者支援センター、子育て支援センターなども入居している。

公共施設等総合管理計画の策定前から構想されていた施設だが、将来の負担増を見越して機能集約した。札幌市区政課は「狙いは公共施設等総合管理計画の趣旨と同じ。人口減少時代に対応した公共施設にしたかった」と胸を張る。

総務省は適正規模への縮減を自治体に要請

高度成長期の自治体は経済発展に伴い、次々と公共施設を建設して住民サービスに利用した。箱物の建設が首長の手腕と考えられた時代もあり、それほど利用の大きくない施設が相次いで整備された。同じ自治体内によく似た機能の施設を複数抱える例も多く見られる。

それらが一斉に老朽化の時期を迎えている。その結果、過剰な施設の維持に四苦八苦する自治体は少なくない。

低成長時代やデフレ期を経て自治体の財政に黄信号が灯る時代になっても、統廃合は進まなかった。将来の人口減少や高齢化の進行は早くから予想されていたが、首長の面子や施設が廃止される地元の反発が予想されることにこだわり、手をこまねいてきたわけだ。

だが、これ以上先送りしても次の世代につけを回すことにしかならない。総務省財務調査課は「過剰な公共施設を抱えたままだと自治体の負担は重くなる一方。適正規模へ見直していくことが必要」としている。全国の自治体には早急な対応が求められている。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の 記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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