争族とは何か

「亡くなった人が残した財産を、残された人がどう相続するか」というのは、どの家族でも大変重要なことです。一歩やり方を間違えると、混乱やいさかいの原因となり、家族同士にはあってはならないほどのトラブルに発展します。俗に「遺産争い」といわれる状態です。こうなってしまっては、残された家族の仲は険悪になり、命日の供養もおざなりになってしまいます。亡くなった方にとっては、一番あってはならない事態です。

人事だと思っていませんか?いやいや、そうではありません。「うちはそんなに財産も無いし、大丈夫でしょ」と言っている家庭に限って、実際に相続が発生したら大パニックになる、という例も少なくないのです。これが、「相続」ではなく、「争族」といわれるゆえんです。それでは、争族の原因と、「相続を争族にしないために何をすればいいか」ということをお話したいと思います。


争族の原因

「遺産争いが起きる」、つまり、「相続が争族になってしまう」にはどんな原因があるのでしょうか。具体的なケースを挙げてみましょう。

1.相続人の1人が財産を独占しようとする
亡くなった人、つまり被相続人の生活の面倒を見ていた、介護をしていた、家業を継いだなどの理由で、相続人の1人が残された財産を多く得ようとする、というケースは散見されます。もっと具体的に言えば、「自分は長男で、親父の面倒を見てきたのだから、自分はたくさん遺産をもらっていいはずだ」と言い出すケースはこれにあたります。実際、相続人の一人の行為により、被相続人の財産を減らさずに済んだなどの場合には、「寄与分」として、他の相続人よりも多くの財産を相続することになるのが一般的です。しかし、そうである場合もそうでない場合も、1人の相続人が他の人より明らかに多い財産を相続するとあっては、他の相続人が黙っていないケースがほとんどです。

2.財産の全容がわからない
年老いて、判断力が衰えた被相続人の財産を、同居している家族が管理していた場合に起こる問題です。つまり、被相続人が亡くなる=相続が開始する時点で、相続財産が一体いくらあったのか分からなくなってしまう、ということです。銀行などに預金があった場合、その預金を不正に下ろして隠したりするなどして、隠し財産を作ってしまうことなどが考えられます。また、被相続人が亡くなる前に、入院費などの名目で貯金を一気に下ろしてしまうなどの場合もこのような問題が起こりえます。このようなことが起こってしまったら、最悪の場合、遺産確定のための民事裁判を行う必要もあります。

3.遺産分割協議に応じない
遺産の全容とその金額が明らかになっても、まだトラブルの原因は残っています。それは、遺産をどう分けるか、という話し合いに合意しないということです。専門的な用語で言うと、遺産分割協議に応じないということです。これができないと、一体何が起こるのでしょうか。

まず、遺産分割を成立させるためには、相続人全員が合意することが必要になります。一人でも話し合いに合意しなければ、いつまでたっても遺産を分割することはできません。さらに、もっと困ることがあります。被相続人名義の預貯金などがあった場合です。もちろん、こういうものは解約しないといけないのですが、金融機関は、相続人全員が合意した同意書がないと、解約に応じてくれないのです。これでは、いつまでたっても相続の手続きが進まない、ということになってしまいます。そこまでくると、自分たちの力では解決不可能ということで、家庭裁判所による調停・審判に発展します。

4.離婚した妻との間に子供がいる
現在では、離婚やその後の再婚は珍しくなくなってきました。当然、被相続人にも親権を持たない子供がいることが考えられます。こういうケースの場合、離婚した妻には当然相続する権利はありませんが、子供には相続する権利がある場合があります。被相続人が亡くなったとたん、「実は被相続人の子供です」と子供が名乗り出てくる、というケースは少なくありません。