JR四国の鉄道網を維持する方策を考える有識者懇談会が設置され、香川県高松市で初会合を開いた。懇談会は1年かけて議論を重ね、中間取りまとめのうえ、四国4県の分科会で具体的な支援策を検討する方針だ。

JR四国は1987年の発足から鉄道事業の赤字が続いているが、四国の人口減少が深刻で、今後も利用客が大幅に減ると予想されている。ただちに路線廃止せざるを得ない状況ではないようだが、自助努力だけだと近い将来、路線の維持が困難になるとみられる。4県はどのような支援策を打ち出すのだろうか。

懇談会初会合は「四国の鉄道網維持の方向性」で一致

JR,地方鉄道,四国経済
JR土讃線と徳島線が発着する徳島県三好市の阿波池田駅。人口減少もあり、乗降客の低迷が続く(写真=筆者)

懇談会は日本交通学会会長の正司健一神戸大大学院教授を座長に、四国4県の知事、学者、経済界代表ら18人で構成された。

初会合は非公開で意見交換を進めたが、JR四国が厳しさを増す経営環境について説明。これに対し、鉄道網を維持する必要性で一致し、委員から訪日外国人観光客の誘致促進や公共交通全体のネットワークについて議論を求める声が出たという。

2回目の会合は年明けに開く予定で、来夏をめどに中間取りまとめをしたあと、各県ごとに分科会を設けて具体的な方策の検討に取り組む予定。JR四国はダイヤ改正などによる利便性の向上だけでなく、自治体が線路や駅など施設を保有し、鉄道会社が運行に専念する上下分離方式の導入も視野に入れているもようだ。

同様の路線網見直しはJR北海道も沿線自治体との協議に入っている。全営業路線のほぼ半分を廃止も含めて見直す方向で、単独では維持できない経営状況に陥っている。

これに対し、JR四国はたちまちのうちに路線廃止を迫られる状況ではないとしているが、半井真司社長は懇談会後の記者会見で「さらなる経営努力を前提に公的支援の方向が出てくると解釈している」と4県の本格的な支援に期待をにじませた。

急激な人口減少に伴い、利用の低迷が深刻

JR四国は全営業距離が855キロで、JR他社に比べてひと回りもふた回りも規模が小さい。政令指定都市がなく、沿線人口も少ないため、発足から鉄道事業が黒字になったことが1度もない。

2016年度連結決算は26億円の当期純利益を計上するなど黒字になっているが、これは国の支援金である経営安定基金の運用益などで帳尻を合わせたにすぎない。考えられる限りの経費節減策を実施しても、利用者の減少に追いついていないのが実情だ。

2016年度の輸送密度(1日1キロ当たりの平均旅客輸送人員)は全線で4692人。1989年度の6513人より2000人近く少なくなった。路線別内訳をみると、営業中の9路線すべてで輸送人員が1989年度を下回っている。

区間別輸送密度が最も低かったのは、徳島県南部を通る牟岐線の牟岐駅−海部駅間で248人。これではまるで空気を運んでいる状態だ。この区間にある徳島県海陽町の鯖瀬駅は1日平均乗降客数がわずか2人しかいなかった。

土讃線と徳島線が乗り入れ、高松市と高知県高知市、徳島県徳島市の3県都を結ぶ徳島県三好市の阿波池田駅は、1999年度に2600人以上の乗降客があったのに、ざっと1000人も減っている。JR四国は路線別収支を公表していないが、9路線のうち、黒字は瀬戸大橋線だけとみられている。

今後も人口減少が利用の低迷に拍車をかける見通し。総務省がまとめた2016年10月現在の人口推計では、4県の総人口が381万8000人なのに対し、国立社会保障・人口問題研究所は2040年の人口が295万5000人に落ち込むと予測している。

しかも、4県を結ぶ高速道路網が整備され、マイカーや高速バスなどとの競争はこれまで以上に激しくなっている。国土交通省四国運輸局は2040年に9路線すべてで輸送人員がさらに落ち込み、全体で17%の利用減少になると予想している。JR四国を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。

JR四国は自治体の本格的な支援を期待

今後、具体的に検討される路線維持策としては、乗車利便性を向上させるため、運行間隔を統一するパターンダイヤに必要な行き違い設備の整備、パーク・アンド・ライドの推進などが考えられる。しかし、こうした小手先の改革でJR四国の経営状況を改善できるとは思えない。JR四国が期待するのは本格的な自治体の支援だ。

支援策の1つと考えられているのが上下分離方式で、鳥取県の若桜鉄道、滋賀県の信楽高原鉄道、岩手県の三陸鉄道、青森県の青い森鉄道などが導入している。施設の保守、更新に費用をかけずに済むことから、鉄道会社の負担はかなり軽減される。

これに対し、財政力の弱い四国の自治体にとって、負担は小さくない。香川県交通政策課は「検討は始まったばかり。これから考えていく」、愛媛県交通対策課は「今後、懇談会で議論していきたい」と述べるにとどまり、上下分離方式に踏み込む可能性について口を濁した。

個別の地域に取り入れるかどうかは、中間まとめのあとの県ごとの協議で費用負担を含めて検討する見通しだが、上下分離方式のような思い切ったテコ入れがなければ、鉄道網の維持は難しい。将来も四国の鉄道網が維持されるかどうかは、4県の決断にかかっているようだ。


高田泰
政治ジャーナリスト この筆者の 記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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