地方移住,Iターン,Uターン
徳島県阿南市新野町の農村地域。地方移住で生活費が安くなるといわれるが、そうならないこともある(写真=筆者)

目次

  1. 田舎暮らしは本当に安上がりか
  2. 安易な移住で都会へ舞い戻る若者も
  3. 住宅費は格安、公共交通は割高
  4. 移住前に十分な検討が必要

※2018年2月配信記事を再編集したものです。

田舎暮らしは本当に安上がりか

若者人口の東京一極集中が進む中、20代、30代の地方移住が静かなブームを続けている。ネットメディアやクラウドソーシングサイトでは、「月10万円生活」などと生活費の安さを強調し、地方移住を呼びかける声が並んでいるが、中には地方暮らしで貯金を使い果たし、都会へ舞い戻る若者もいる。

田舎暮らしは本当に安上がりなのだろうか。過疎地域を多く抱えながら、IT企業のサテライトオフィス進出が相次ぎ、多くの若い世代が移住している徳島県で実態を聞いた。

安易な移住で都会へ舞い戻る若者も

「1平方メートル当たりの住宅地平均価格は徳島3万100円、東京33万2800円」、「民間住宅の家賃は坪当たり1カ月で徳島3954円、東京8620円」。徳島県が移住者獲得に向けて発行するパンフレットには、生活費の安さを強調する言葉が並ぶ。

徳島県地方創生推進課によると、県内に移住した人の数は2016年度1年間で842人。その多くは首都圏や関西で暮らす20代、30代の若い世代だ。2017年度は4月から9月末までの半年間で605人に達し、確実に移住者が増えている。

特に人気が高いのは、IT企業のサテライトオフィスが相次ぐ神山町。深い山に囲まれた山村だが、県庁所在地の徳島市に隣接し、徳島市の中心部まで車で30〜40分ほど。河川敷でノートパソコンを広げて仕事をする姿が報道されて以来、IT企業の間で急速に知名度が高まり、今も移住の問い合わせが後を絶たない。

神山町は賃貸住宅が少なく、移住者の多くが古民家など空き家を借りている。現在は生活できるようリノベーションされた空き家が減り、移住者を受け入れにくくなった。神山町総務課は「移住希望者が多いのはありがたいことだが、空き家の数が限界に達しつつある」とうれしい悲鳴を上げている。

だが、そんな徳島県に移住しながら、都会へ舞い戻った人もいる。大阪市西成区のコンビニで働く20代後半の男性もその1人。男性は神山町とは別の町に2015年、出身地の大阪府から移住したが、3カ月ほどで徳島県を離れた。

「生活費が安いと聞き、あこがれだけで仕事を決めずに移住した。確かに家賃は安かったが、生活費は大阪と大して変わらない。学歴がないからIT企業で働けず、貯金が尽きた」と肩を落とす。