ひとくちに建売住宅といっても、ピンからキリまでさまざま。首都圏を例にとれば、不動産経済研究所の調査では、2016年度の平均価格は4952万円で、東日本不動産流通機構の調査では、3561万円。同じ首都圏でありながら、両者には、何と1500万円近いが差がある。これは、いったいどういうことなのだろうか。

大手の大規模物件と中小の小規模物件の差

建売住宅
(写真=PIXTA)

まず、不動産経済研究所の調査は、1回当たりの販売区画数が10区画以上の規模の大きな建売が対象。何期かに分けて販売されるので、全体では数十戸から100戸を超える大規模開発が中心であり、開発主体は大手不動産会社や大手住宅メーカーなどになる。中堅以下では、こうした大規模開発は資金面などから難しいのが現実だ。

敷地面積も比較的ゆったりしていて、敷地内に公園や緑地などや居住者が利用できる施設などが設置されることもある。大手中心だから、建物のグレードも高く、住宅設備なども充実している。価格が高くなるのも止むを得ない面がある。

対して、東日本不動産流通機構の調査は、住宅仲介のためのネットワークシステム(レインズ)に登録された物件が対象。中堅ビルダーや地場工務店などのなかには、営業部門を持たずに、仲介会社に販売を任せるケースが多く、自動的にレインズに登録される。1戸、2戸から始まり、数戸レベルの建売住宅が中心で、敷地面積も100㎡を切る物件が珍しくない。

建物もコストを抑えたグレードがさほど高くないものが中心で、門扉などの外構もついていないことが多く、各種設備もリーズナブルなものになっている。たとえば大手のグレードの高い建売住宅だと、ドイツ製の食洗機がついていて、国産でもパナソニックや三菱電機などの大手製だが、中小工務店の建売住宅では、標準装備としては付いていないのがふつうで、ついていても国内の名も知らない中小メーカー製になる。そうしたさまざまな違いから、平均すると1500万円近い差が生じているわけだ。

どちらがいいのかは年収や価値観などによる

どちらを選ぶべきか、それは第一義的には、年収などの購買力に左右される。年収が高くて、十分な頭金があれば5000万円にも手が届くだろうが、そうでない人もいる。まず、自分たちの置かれている環境から予算をはじき出して、現実的にどこまで手に入るのかを見極める必要がある。

ただ、そうはいってもどうしても大手の建売にこだわりたいというのであれば、何年か頑張って貯蓄に励み、頭金を増やす一方、年収がアップするのを待つというのもひとつの選択肢だろう。頑張ってみるだけの価値はある。

たとえば、3000万円で建売住宅が手に入っても、20年後、30年後には大規模な修繕などが必要になり、50年後には建て替えなければならないということもありうる。

一方、5000万円しても、基本性能が優れている維持管理にさほどお金がかからず、孫の代まで100年住めれば、1年当たりのコストは50万円になる。3000万円で50年だと、1年当たり60万円だから、長い目でみればむしろ5000万円のほうが安いといった考え方もできる。いまは無理だけけれど、頑張るだけの甲斐があるわけだ。

ブランドにこだわらずに実質重視の考え方も

反対に、年収や頭金からすれば、大手の建売も買えなくないはないけれど、マイホームで無理をせずに、生活のゆとりを確保したいという人もいるだろう。そんな人であれば、あえて中小工務店の建売住宅を選択して、入居後の生活を充実させるというのもひとつの考え方だ。

最近は、子どもはいないけれど一戸建てのほうがいいという人も増えているが、その場合には100年先のことまでは考えなくていいから、比較的リーズナブルな建売住宅で十分という判断になるだろう。子どもがいたとしても、住宅ローンで生活が厳しくなって、子どもたちの教育や衣食などに影響が出るようでは本末転倒。住宅ローンは無理のない範囲に抑えて、その分子育てにシッカリとお金を使うというのもひとつの見識だろう。

ブランドにこだわらなければ、それなりの建売住宅が手に入る。自分たちのライフスタイル、価値観などに合わせて、20年先、30年先をにらみながら、自分たちなりのコストパフォーマンスを考えてみればいいのではないだろうか。

新築でも仲介物件には仲介手数料がかかる

その場合注意しておきたいのが、中小工務店などが手がけた建売住宅の多くは、仲介会社を通して販売されているので、新築であっても売買契約に当たっては仲介手数料が必要になるという点だ。仲介手数料がかかるのは中古住宅だけと思い込んでいる人がいるだろうから、その準備を忘れていると資金計画などに齟齬が生じる。
その仲介手数料は宅建業法で上限が定められており、売買金額が400万円以上の場合には、次の速算式にあてはめて計算できる。

〔売買価格×0.03(3%)+6万円〕×1.08(消費税)

売買価格が3500万円とすれば、仲介手数料は約120万円になる。決して小さくない金額なので、あらかじめ予算に組み込んでおかないと、困ったことになりかねない。

ただ、これはあくまでも法律で定められた、「これ以上取ってはいけない」という上限。逆にいえば、それ以下であっても法律的にはいっこうに構わないわけで、物件によっては値引き交渉の余地もあるかもしれない。特に、売り出しから一定の期間が経過した物件であれば、仲介手数料を安くして、実質的に値引きするといったことがあるかもしれない。

もっとも、人気物件だとそんな交渉を持ち出したとたんに、「だったら他の人に」ということになりかねないので、相手の事情の見極めが大切だ。

完成済みならその月中の引渡しも可能に

建売住宅は通常は、建物が完成してから販売される。だから、実物を見て可否を判断できるというのは大きなメリット。同じ新築でもマンションの場合には、着工直後に販売が始まるので、モデルルームでの販売になり、実物は完成するまで見ることができない。でも、建売住宅なら実際に自分たちが住む家を見ることができる。家族全員で現地見学して、使い勝手はどうかなどを体感しておけるのは大きな安心材料だろう。

物件を気に入れば、すぐにローンを申し込んで、審査にOKが出れば売買契約ということになる。その後、融資実行、抵当権設定、引渡しといった流れになる。早ければ、その月中に引渡しを受けることもできるので、住宅ローン金利も当初の予定通りの金利で借り入れることができる。

大規模なマンションだと、売買契約、ローンの申込みから建物が完成して融資の実行を受けるまでに2年以上かかることもある。そうなると、その間に金利が上がってしまうリスクがあるが、建売住宅ならまずその心配はない。

建売住宅見学の7か条

1.まずは最寄り駅から現地までの立地確認

建物や設備は自分で多少なりとも変更できるが、立地はそうはいかない。それだけに、念入りに調べる。必ず家族全員で現地まで歩いて距離感を確認すると同時に、買物などの生活利便施設、学校などの教育施設、公園なども自分たちの目でチェックする。

2.日当たりなどを左右する平面的位置

分譲地の場合、南向きか、角地かなどの平面的な位置で微妙に値段が違ってくる。角地が便利そうでも、交通量が多いと小さな子どもがいる家庭では少し心配だし、クルマの音が気になるかもしれない。むしろ価格の安い中住戸のほうが安心できるかも。

3.家事動線などの使い勝手はどうか

特に住まいのなかでの滞在時間が長い主婦にとっては、家事動線ひとつで住み心地が極端に違ってくる。実際に、家事をする気持ちで動いてみて使いやすさをチェックする。

4.将来の変化に対応できる間取りプランか

家族構成にあった間取りかどうか。それも、現在だけではなく10年後、20年後の家族の変化に合わせて柔軟に対応できる可変性の高い間取りかどうかが重要。

5.外構などはどこまでついているか

門扉や生垣などがあらかじめ設置されている建売住宅もあれば、ほとんどついていないケースもある。その場合には、どこまで依頼するのか、生活に余裕ができてからつければいいのかなどを判断しておく。

6.設備はどこまで付いているのか

給排水、電気設備などの最低限は設置されているが、オプションでどこまで設置するのか。家具や照明器具まで含めて、あらかじめ必要な設備や機器に関して量販店などで予算を確認しておくのが安心。

7.保証制度やアフターサービス

すべての新築住宅については引渡しから10年間の性能保証が法律で義務づけられている。問題は、それ以上の保証期間があるのかどうか。入居後の定期点検やメンテナンスの体制がどうなっているかなども確認しておく。

山下和之
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『家を買う。その前に知っておきたいこと』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)などがある。山下和之のブログ: http://yoiie1.sblo.jp/

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