政府からの提言もあり、いまは「働き方改革」が求められています。長時間労働や生産性についての議論もされています。しかし現状を見ると、まだまだ会社員は会社という組織を維持するために生産性を要求され、長時間労働を強いられていることが多いのではないでしょうか? まさに「働きアリ」のようですね。では実際のところ、働きアリはどのように働いているのでしょうか。今回は私たちの考えるヒントとして「働きアリの法則」を紹介しましょう。

「働きアリ」って本当に働いているの?

「働きアリ」と聞くと集団で一丸となって猛烈に働いているイメージを抱かれるかも知れません。しかし、実際のところ一生懸命働いているのは全体の約2割にすぎないのです。これは経済学の世界では「働きアリの法則」もしくは「パレートの法則」とも呼ばれています。

ちなみに、一生懸命働いている2割の働きアリが「全体の8割の食料を集めてくる」といいます。残り8割のアリは何をしているのかというと、6割は普通に働き、さらに2割のアリは何もしていないといいます。つまり、その割合は「2:6:2」になることが分かっています。

ここで一つの疑問が湧いてきます。もし、一生懸命働いている2割のアリだけを集めると非常に効率の良い組織ができるのではないかと。夢のオールスターのような「最強のチーム」の誕生です。

ところが、実際に一生懸命働いている2割のアリを集めてみると、いつの間にか同じように働くアリと働かないアリのグループに分かれて、その割合は「2:6:2」に落ち着くという実験結果があります。逆に「働かないアリ」だけを集めたグループを作ったとしても、同じ結果になるそうです。

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組織に「働かないアリ」が必要なワケ

組織の中に「働かないアリ」がいるのは、いかにも効率が悪いと思われがちですが、どうして上記のような結果になるのでしょうか? その謎について、北海道大学大学院の長谷川英祐准教授による研究グループが詳しく研究しています。

長谷川准教授の研究グループは、まず「すべてのアリが一斉に働くとどうなるか?」コンピューターシミュレーションを使って解き明かしました。それによると、一時的に仕事の処理能力はアップしますが、同時に疲労も蓄積されるので、高い処理を維持することが困難となり、最終的には組織(コロニー)を存続できなくなることが判明しました。

一方、「働かないアリ」のいる組織はどうでしょうか。一生懸命働いているアリが疲れて休んでいるとき、「働かないアリ」が代わりに働き始めるという現象が確認されました。つまり、「働かないアリ」が疲労したアリをカバーすることで、常に仕事の処理が一定の速度で行われることが分かりました。そして、むしろそのほうが組織が長続きすることが解明されたのです。

「働きアリの法則」は私たちに大切なことを示唆しています。すなわち、組織とは効率だけを追求しても長続きしないものなのです。