さらに、数字の「12」はこんな場面でも使用されている

「12」という数字は、幅広くいろいろな世界で使われている。できる限り、その「12」が使用されている(と思われる一般的な)理由等とともに紹介すると、以下の通りとなる。

音楽の世界での平均律(1オクターブなどの音程を均等な周波数比で分割した音律)は、12平均律が一般的である(ピアノの鍵盤を見ていただいて、1オクターブは、ドからシまでに、白が7個と(半音の)黒の5個の合計12個の鍵盤がある)。これについては、「ドの周波数の2倍の周波数が1オクターブ上のドになるが、ドの周波数から5度ずつ周波数を高めていったところ12回繰り返したところで、7オクターブ上のドの周波数と非常に近くなったため」との理由によると説明されている(2)。

英国や米国の陪審員は12人、これは陪審員制度の起原となった9世紀初頭のフランク王国において12名の陪審員が立てられたことによるが、これはキリストの12人の使徒からきていると言われている。

昔の英国等では、10進法ではなく、12進法が使用されていた。例えば、1971年までは英国通貨の1シリングは12ペンスであった。さらに、現代においても、計量法における1フィートは12インチであり、貴金属や宝石の計量に使用される1トロイポンドは12トロイオンスである。

1ダースは12個、1グロスは12ダース、12グロスを1グレートグロスという。これも、12進法の名残であると考えられており、ダースの名称は英語のdozenからきている。

数字の表現方法で、英語で11はeleven、12のことはtwelveというが、13以上になるとthirteenというように「~teen」という表現が用いられており、10ではなく12を区切りにしている。

実は、英語だけでなく、ドイツ語、オランダ語、スウェーデン語といったゲルマン語派の数詞は、12 以下と 13 以上とで表現方法が異なっている。例えばドイツ語も、11はelf、12はzwolf であるが、13以上はdreizehnというように「~zehn」という表現になる。

角度は円の1周が360度(12×30)ということになっている。これも、地球が太陽の周りを一周する1年を360日と定義したことからきており、結果的に地球が1日で太陽の周りを回転する角度が1度ということになっている。

因みに、360という数字は、1と360以外の22個の約数を持ち、1 から 10 までの数のうち、割り切れない数は 7 だけである。従って、いろいろな意味で使いやすい数字であると考えられている(なお、1 から 10 までの全ての数で割り切れる最小の数は2520であるが、これはあまりにも大き過ぎて使いにくい)。

これにより、これまで述べてきた各種の12個のものを1つの円の中で表すのに、1つのものが30度を占めて、直交する軸も有することから、わかりやすく表現できることにつながっている。

自然言語で、12進法による数詞を持つものもある。これは、指を用いて数字を数える際に、片手の人差し指から小指の計 12 個の節を親指で示す数え方が用いられていたことによるものと考えられている。

以上に加えて、数字の「12」が使用されているケースは他にも多く見られ、なかには「12」という数字そのものに直接的に関係していないものもある。例えば、日本の伝統的衣装として、十二単衣があるが、十二単の十二は「たくさん」とか「多い」という意味で実際に12枚は着ていないとのことである。さらには、日本語に「十二分」という表現があるが、これは「十分」を超えて、それ以上を目指すという精神的な意味合いを強調するために使用されているようだ。

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2)詳しい内容については「音律と音階の科学」(小方 厚著)を参照していただきたい。
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