できるだけ安い保険料で将来の不安に対して備え「安心の保険生活」をおくる。そのためには、生命保険に対して持っている誤った認識や意識を正しいものに変えていかなければいけません。「生命保険は入っていて当たり前、みんな月に2万円以上は払っている」こんなことを頭に入れて生命保険との付き合い方を考えていると、結果的に無駄な保険料を払うことになります。自分にとって生命保険が本当に必要なのか、ないと何が困るのかをきちんと考えておく必要があります。

(本記事は、藤井 泰輔氏の著書 どんな家庭でも 生命保険は月5000円だけ かんき出版(2017年9月1日)の中から一部を抜粋・編集しています)

生命保険は損をするかもしれない「金融商品」

生命保険
(画像=Webサイトより)

生命保険は、社会や組織の構成員同士がたがいに助け合う「相互扶助」の仕組みなどではなく、みなさんが大切なお金を支払って購入する金融商品です。生命保険を管轄している役所は金融庁で、金融商品取引法という法律をもとに、消費者が金融商品の取引で騙されないように守ろうとしていますが生命保険文化センターが行った「平成28年度生活保障に関する調査」によれば、「金融・保険にはくわしくない」と答えている人が7割強もいるとのこと。つまり多くの人が、よくわからないままに生命保険という金融商品を購入しているのです。

生命保険はほかの金融商品とは違って、なぜか「入る」とか「加入する」という表現を使います。それは、社会保険に加入するとか、町内会に加入するとか、あたかも加入すべきものという印象を与えています。生命保険は、ほかの金融商品と同じように「買う」や「購入する」というのが正しい表現です。生命保険のことを考える第一歩は、金融商品だという意識をしっかり持ち、自分が支払う保険料の意味をきちんと考えること。その結果、無駄な保険料を支払うこともなくなるのです。

ゼロ金利の今、生命保険で貯蓄はできない

生命保険は、本来「まさか」に備えるための「掛け捨て商品」です。2017年の4月から、生命保険の運用基準として金融庁が定めている標準利率が、年1%から0.25%に大きく下がり、生命保険各社の予定利率(預かった保険料を運用する利率)も軒並み下がってしまいました。その結果、貯蓄にもなるという生命保険商品は姿を消しました。生命保険は、基本的に契約した時点の予定利率が、その契約期間中継続します。したがって預貯金と同じように、利率が高いときに契約した商品が有利な商品です。

20年くらい前までは「一時払い養老保険」という商品が、新聞などで公表される運用利率の高い商品のリストに入っていました。しかし、生命保険会社が設定している予定利率が、2017年4月から大きく下がり(それは保険料の値上げを意味します)、そのことで生命保険で貯蓄を考えることなどいっさいできなくなったのです。一方、掛け捨てといわれる定期保険は、利率の影響をほとんど受けませんから、保険会社の努力により経費率が下がった分、保険料も安くなっています。

生保会社の刷り込みに騙されるな

現在みなさんが購入している生命保険は、住宅に次ぐ高額商品です。しかし今や、新たに生命保険を購入する場合、すでに魅力ある貯蓄性商品は存在しないのですから、生命保険で貯蓄なんて考えなくてもいいですし、掛け捨てが得か、貯蓄型が得か、ということも考える必要がなくなったのです。ですから、みなさんが生命保険に支払う金額は、せいぜい月5000円、年間6万円程度が妥当な金額だと考えるのです。

もう1つみなさんに刷り込まれている言葉に「見直し」があります。悪い保険契約は見直さなければなりませんが、一度見直せばそれで終わりのはずです。最初からきちんとした生命保険を購入していれば見直しなんていりません。また一番の問題は、販売する側が現状よりも保険料が安くなるような見直しをきちんと提案してくれないところだと思います。「見直し」が新しい保険を販売するための道具になっているのです。

保険会社の都合が保険料を高くする

支払った保険料は、保険金を支払うことに使われます。しかし、そのほかの決して少なくない部分が、生命保険会社社員の高額な給与、テレビ番組のスポンサー(生命保険会社)資金、CMに顔を出す芸能人のギャラなどに使われています。生命保険の保険料は「純保険料」+「付加保険料」で成り立っています。純保険料とは、保険金の原資で言ってみれば生命保険の原価に近いもの。付加保険料は、生命保険の販売にかかわる諸々の費用のことです。

生命保険会社の本社が東京や大阪などの大都市にあることも、保険料が割高になる原因の1つです。大都市でつくられたコストの高い商品を、地方の人たちも同じ値段で購入しているのが日本の生命保険という商品なのです。日本生産性本部が2016年12月に出している「日米産業別労働生産性水準比較」というレポートによると、日本の金融業は、アメリカのそれに比べて生産性が半分以下とあります。とりわけ、いまだに生命保険市場の占有率が5割を超えている大手生保が、残念なことにその牽引役を果たしています。だから日本の生命保険料は高いのです。

藤井泰輔(ふじい・たいすけ)
株式会社ファイナンシャルアソシエイツ代表取締役。生保協会認定FP、DCプランナー、宅地建物取引士。一橋大学商学部卒業後、三井物産、生命保険会社勤務を経て、2000年に総合保険代理店、株式会社ファイナンシャルアソシエイツを設立。法人、個人ともに、常に買う側の立場に立った保険提案で顧客の信頼を集めている。

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