安倍政権の経済対策に審判を下す衆院選を前に、日経平均株価は2万1100円台を超えて21年ぶりの高値まで上昇し、先行きに明るい兆しが目立つ。

そんな中、消費者の動向を敏感に反映するコンビニ大手3社の2018年2月期の中間決算が出揃った。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン <2651> の各社とも売上高は前年同期比で増加したものの、営業収益で明暗が分かれ、増収増益となったのは最大手のセブンイレブンのみだった。ライバル2社を置き去り、1人勝ちの恰好となったセブンイレブンは、どのような戦略が奏功したのだろうか。

セブンの営業利益は過去最高更新

決算の内訳をみると、セブン‐イレブン・ジャパンの売上高にあたる営業総収入は前年同期比2.8%増の4348億2300万円、営業利益は同3.3%増の1307億4600万円と過去最高を塗り替えた。販売管理費全体が、人件費や光熱費のコストアップで4.4%増の2680億800万円となったが、このうち広告費は前年同期から約10%、35億円ほど削減し、広告宣伝費を抑えながら売り上げの拡大につなげ、営業利益をしっかりと確保した。

セブンイレブンが過去最高益を記録する一方、他の2社は苦戦した。ファミリーマートは、営業総収入を前年同期比2.8%増の2543億6300万円に伸ばしたが、営業利益は同16.9%減の248億1800万円にとどまった。ローソン(単体)は、営業総収入が前年同期比5.0%増の1890億8300万円と、3社の中では一番高い伸び率となったものの、営業利益は同1.8%減の311億8500万円に落ち込んだ。

セブンは「惣菜ファスト・フード」が利益をけん引

セブンイレブンがファミマ、ローソンと差をつけることができた要因はどこにあったのか。そのヒントは商品構成にありそうだ。これまで、プライベートブランドのセブンプレミアムで幅広い商品を展開するなど、高い商品力で顧客を引き付けてきたセブンイレブン。その商品力もさることながら、高齢化や働く女性の増加などといった社会環境の変化に伴うニーズを読み取り、いち早く対応に乗り出した戦略がはまった。

セブンイレブンは、惣菜や弁当のラインナップを強化し、おにぎりや麺類などの基本商品のリニューアルも積極的に実施。幅広い商品構成が、中食需要をうまく取り込むことに成功。

商品別の売り上げ構成比をみると、から揚げやコロッケなどのファスト・フードが30.2%、加工食品が26.6%、日配食品13.3%、非食品29.9%となっており、惣菜を目当てにセブンイレブンを利用している姿が浮かび上がる。

この構成比はローソンの場合、ファスト・フードが23.5%、加工食品52.7%、日配食品が14.5%、非食品9.4%、ファミリーマートはファスト・フード5.8%、加工食品25.6%、日配食品27.8%、非食品29.1%(他サービス1.5%、Eコマース10.2%)となっている。

ファミリーマートのファスト・フードの差益率が45.34%と示すように、コンビニレジカウンターに陳列されるファスト・フードの利益率は他の商品より相対的に高く、この売り上げ構成比が高いセブンイレブンが他社を圧倒する形となった。セブンイレブンは、好調なファスト・フードの売り上げを受けて、さらなる販促を目指して新レイアウトを一部店舗に導入し、攻勢をかける。

中食市場拡大で勝負の行方は?

セブンイレブンに先手を取られた2社も黙ってはいない。

ファミリーマートは、レジ横のカウンターに「ファミ横商店街」と名付けた惣菜売場を設置し、おでんやフライドチキン、中華まんなどの商品を陳列して売り上げアップを目指す。ローソンも、夕方から夜間に需要が高まる中食のニーズを取り込むべく、カウンターのファスト・フード惣菜メニューを15品目から19品目に増やし、ライバル社の背中を追いかける。

三井住友銀行の調査によると、中食の市場規模は14兆円に上り、このうちコンビニの中食市場は約3割の2.8兆円と、食品スーパーの2.3兆円を上回る規模までに成長している。コンビニ各社のし烈な争いは、スーパーなどから中食のシェアを奪い取り、コンビニの存在感をますます際立たせている。これまでスイーツやプライベート商品などを巡り、熱い戦いが繰り広げられてきたコンビニ業界は、当面は中食を巡る競争が繰り広げられていきそうだ。

この競争に打ち勝つのはどのコンビニか。さらに、その先にはどのような新しい戦いが待ち受けるのだろうか。(ZUU online 編集部)

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