米国以外の国でもAIスタートアップが成長 取引シェアは4割に

スタートアップ,AI,機械学習
(画像=JamieAiサイトより)

AIスタートアップへの投資は昨年、記録的な数字に達した。CBインサイツの調査 によると、AI技術を主力とするスタートアップ数は550社を超え、50億ドル以上の資金を調達したという。

取引件数は5年連続で記録を更新しており、2012年の160件から658件に増えた。米国以外のスタートアップによる取引が占める割合も約40%(19ポイント増)に拡大している。

飛躍する非米国勢から、今回は英国のAI(人工知能)・機械学習産業の未来を背負う、勢いあふれるスタートアップを紹介しよう。

Googleスタートアップ・プログラムを勝ちぬいた節電アプリVerbを筆頭に、Facebookメッセンジャーを利用したファイナンシャル・アドバイザーCleoのほか、人材から言語学習、メディア、コンサルティングまで、幅広いビジネス領域をAI技術で作り変えようとしている。

JamieAi  AI・機械学習で優秀なIT人材を発掘

AI・機械学習ベースのSTEM(科学・技術・工学・数学)リクルート・スタートアップ。技術者不足のIT産業で多くの企業が優秀な人材の確保に苦戦を強いられている中、「優秀なIT人材をデータ関連の企業と結びつける」というコンセプトの基、2017年にロンドンで設立された。

CEO兼共同設立者は、国際コンサルティング企業Execuzenの人材育成部門で経験を積んだウィル・カッパー氏。

JamieAi のAI人材プラットフォームは単に技術者を見つけるだけではなく、人間の見落としをAIの洞察力でおぎなうことで、「求めていた人材と違う」といった雇用のミスマッチやアンマッチが起こりにくくする。

利用法は一般的な人材サイトと同じで、企業は自社情報とともに理想の人材像などをオンラインでアップロード。条件に当てはまる潜在的な候補者のみが応募条件を確認でき、企業に候補者の情報が知らされるため、ここで応募者をふるいにかけられる。

後は企業と候補者間で面接を行い、採用を決定するという流れだ。利用料は雇用する側にだけかかり(398ポンド/約5.9万円~)、応募する側の登録は無料。

従業員数10人以下と小規模ながらも、英国発のモバイルバンクMonzo(旧Mondo)や格安航空券比較サイト「スカイスキャナー」、日本でもおなじみのレシピサイト「COOKPAD」、大手スーパーマーケットのセインズベリー、レスター大学など、幅広い顧客層に利用されている。

2017年10月には初の資金調達ラウンドで、金融エクゼクティブ・リクルート企業Execuzen のエイドリア・エズラCEOから100万ポンド(約1.5億円)を獲得した。

Kwiziq 「AI外国語講師」から効率よく言語を学ぶ

外国語を学ぶといってもレベルや学習速度には個人差がある。既存の語学学校などでは高額なマンツーマン指導を受けないかぎり、自分にぴったり合った学習法にめぐり合うことは難しい。

Kwiziqの「AI講師」はレッスンを通して個人のレベルを分析し苦手な領域を強化するなど、個人の需要に見合った教え方で外国語を効率よく学べる環境を提供してくれる。クイズ形式の出題といった楽しく学べる工夫も嬉しい。

設立は2012年。2015年にエクイティ―・クラウドファンディング で20万ポンド(約2977万円)を獲得したほか、2016年には11万ポンド(約1637万円)の追加投資を 受けている(TechWorld調査)。

Verv  賢く節電 電気代が2割安くなる?

AI技術を利用して家庭内の節電をサポートする「スマートホーム・エネルギー・アシスタント」。スマートフォンなどのデバイスから電力の使用量と料金を細かくトラッキングし、節電法をアドバイスしてくれる。

分析の精密度には定評があり、初回の利用で使用料金が平均20%節約できるそうだ(同社サイトより)。また一見分かりづらい電化製品の故障や欠陥を探しだし、無駄な戦力の消耗だけではなく事故防止にも貢献。

このアプリはGoogleの国際アクセレーター・プログラム「Lanchpad」を通して開発された。すでにブリティッシュ・ガスやEDFといった大手電力会社からアリアンツなどの保険会社が、アプリを自社サービスの一環として採用している(Startacus.netより )。

今年11月にエクイティ―・クラウドファンディングで123万ポンド (約1.8億円)を獲得ばかり。

Cleo  自分だけのAIファイナンシャル・アドバイザー

英国南西部のブリストル大学でコンピューター科学を専攻したバーニー・ハッセ―・イヨ氏と、ポーランドのヴロツワフ大学で数学・コンピューター科学を学んだアレキサンドラ・ウォズニアック氏が、2015年に立ち上げたAIファイナンシャル・アドバイス・プラットフォーム。

AIベースのお金の管理ツールはあちらこちらで見かけるようになったが、Cleo は特に若い層に人気のメッセンジャーアプリに着目。AIがFacebookメッセンジャーなどから「友達のような感覚で」、お金の管理アドバイスをしてくれる。

「銀行と同水準のセキュリティーレベル」で、深層学習技術を用いて取引データから日々の支出・収入を分析・学習する。

エンジェル投資家(スタートアップに資金を供給する個人投資家)サイモン・フランクス氏などから、総額332万ドルを獲得している。

IntelligentX  AIがビールを作る時代到来?

利用者がFacebookメッセンジャーのチャットボットを通してビールの感想を伝えると、次の製造レシピに反映させてくれるというサービスを提供。

製造側にとっては貴重な消費者の生の声をダイレクトに受け取り、次なる大ヒット商品開発に活かせる絶好のチャンスだ。

オックスフォードでコンピューター科学専攻後、英国の広告代理店M&C Saatchiで経験を積んだヒュー・リース氏が2016年に設立した。

Onfido  機械学習による顔認証で雇用者の身元確認

2017年9月のシリーズCラウンド で、Microsoftやセールスフォースから3000万ドルを調達したID認証スタートアップ。雇用者の犯罪履歴や運転履歴を含む、素性チェックの自動代行サービスがベースだが、現在は文書や顔認証による照会にも力を入れている。

顔認証チェックでは利用者から送られたパスポートや運転免許証などの書類写真とselfie(セルフィ―)を機械学習技術で検証することで、より信頼性の高い身元確認を実現。

2012年にオックスフォード大学エンジニアリング科学科の卒業生ルハル・アミン氏 や、経済経営学科の卒業生フセイン・カッサイ氏などが立ち上げた。現在はUber EatやZip Car、Squareなど、世界中の大手企業が採用している。

Tractable 深層学習コンサルタント 米トップ6保険会社がテスト中

画像認識や言語理解といった専門知識が必要な領域を、最新のAI技術でサポート。人間の手作業を最小限にまで抑えることが可能だ。

機械学習研究者にとっては悪夢のような「大量のデータのタグ付け作業」を、会話型学習技術で簡潔化 。独自のアルゴリズムが何百万件というサンプルを処理していく。

事故車の写真から補償レベル(修繕可能、交換必須、無傷など)を判定する「AI写真推定システム」は、米国の大手保険会社6社がテスト中だ(RDN より)。衝突事故の損害倍書保険の申請で要する人間の手作業を、最高70%けずることができるそうだ。

設立は2014年。ゼッタ・ベンチャー・パートナーズやイグニション・パートナーズから、総額990万ドルを調達している(Crunch Base 2017年11月データ)。

Digital Genius  AIと人間の融合させた精密度の高いカスタマーサービス

「AIをカスターマーサービスに採用する」という発想はチャットボットなどでもおなじみとなったが、消費者の立場からすると「回答が質問からずれている」など、100%満足という水準まで達していないようだ。

Digital GeniusのAIカスタマーサービス・システムはメタデータを整理・ラベルづけすることで、精密度の最も高い3つの潜在的な回答を精密度とともに弾きだす。精密度が90%以下の場合、人間のサービススタッフが対応する。

この作業により、応答作業が最高30%短縮できるだけではなく、「今すぐに正確な回答が欲しい」という消費者の要求を満たすことができる。人間とAIを絶妙に融合させた一歩進んだカスタマーサービスだ。

設立は2013年。シードラウンドやファンディング・ラウンドで、これまで744万ドルを調達。KLMオランダ航空やユニリーバ、ロレアルなど、国際大手を顧客にもつ。

Echobox  世界初のAIオンライン・メディア

FacebookやTwitterなどのSNSが読者との重要なコミュニケーションツール、あるいは広告の場となった近年、コンテンツの拡散に利用するメディアも増えている。しかし問題はコンテンツを共有するタイミングだ。共有しても読んでもらえなければ意味がない。

EchoboxはAI技術を利用して、共有な最適なタイミングと拡散先を弾きだす「Echo AI」を開発。「どのSNSでいつ共有すれば最大限の反響を得られるか」を予想することで、読者の倍増が狙える。同社によれば世界発のAIオンラインメディア。

またニュースの速報性をアルゴリズムで判断する「速報検索エンジン」なども利用できる。BBC、ブルームバーグ・テクノロジー、ビジネス・インサイダー、テッククランチなど、大手メディアに採用されているのも不思議ではない。

設立は2013年。マングローブ・キャピタル・パートナーズなどから総額340万ドルを調達している。

Phrasee i  AIでデジタル・マーケティングを最適化

自然言語理解の機能を用い、統計結果に基づいて最適な広告を作成してくれるAIデジタル・マーケティング・ツールを提供。

具体的にはAIが広告のクリック数や広告メールの開封数から転換率を弾きだし、「人間が思いつく単語やフレーズよりも効果的」な、消費者の購買あるいは利用意欲をそそる言葉を選ぶ。各顧客の需要に合わせてカスタマイズ可能だ。

2016年7月にはシードラウンドを通して、ギャルヴァニス・キャピタルから100万ドルを獲得した。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)