起業情報サイト「アントレプレナー」が選んだ「独創的でリスクを恐れず、人々を奮起させる実業家50人(50 MOST DARING)」 から、特に注目に値する実業家8人を紹介しよう。 Amazonのジェフ・ベゾスCEOやスペースXのイーロン・マスクCEO、スターバックスのハワード・シュルツ会長など国際的著名人から、ドローン・レーシング・リーグ企業を立ち上げたニコラス・ホルバチェフスキ CEO、JPモルガン・チェースのクリスティン・レムカウCMO兼CCOまで、リーダーの素質と不可能を可能に変える行動力が特徴だ。

これらのトップ実業家に共通するビジネス哲学は「失敗を恐れず前身し続ける」「消費者とのつながりを重視する」「常に新しい知識と経験を吸収する」など。市場の需要を先取りした斬新な発想とポジティブで熱意あふれるアプローチが、起業成功のカギを握っていることは明らかだ。

選ばれた50人のうち、約20人が女性実業家という点も興味深い。

ジェフ・ベゾス(Amazon設立者兼CEO) 世界長者番付でも1位に

ビル・ゲイツ氏を抜いて世界長者番付け1位となったベゾスCEO。現在の純資産は949億ドル(フォーブス誌2017年11月データ )。1994年にシアトルのガレージでオンライン書店として誕生したAmazon(旧Cadabra.com)は、世界中で1359億ドルを売り上げるまでに成長した(Statista 2016年データ )。

ベゾスCEOはAmazonで世界の消費市場を一変させる一方、民間宇宙開発企業ブルーオリジン(2000年設立)やワシントン・ポスト紙(2013年買収)、ホールフーズ・マーケット(2017年買収)など事業の多角化にも熱心だ。

ベゾスCEOがロサンゼルスのサミットで明かした自らの成功の哲学は、「マルチタスク(複数の物事)をしない」「知識と弾力性をつける」「リスクを恐れず後悔しない」「子どものような好奇心をもって問題にアプローチする」(デイリーメール紙より)。

「自分にぴったりの配偶者を見つける」も重要事項として挙げている点にも、地に足がついた人柄が現れている。

組織のリーダーとしての姿勢はどうなのだろう。ベゾスCEOの元でキャリアを積んだ後、自ら起業の道を選んだAmazon卒業生 から、同氏に学んだ起業信念を聞いてみよう。

「利益より顧客優先」「アウトプットではなくインプットが重要」「単なる意思決定者ではなくリーダーになれ」など、次のリーダーを育てる上での重要ポイントをしっかりと押さえている。

イーロン・マスク(テスラ、スペースX設立者兼CEO) PayPalの前身も設立

ベゾスCEOと肩を並べる若手大物実業家のマスクCEOは、10歳の時からコンピューター・プラミングを独学、12歳でビデオゲーム「Blaster」のコードを作成したという筋金入りのIT人間だ。

このコードは公式ゲームには採用されなかったが、後にIT雑誌PC and Office Technologyが500ドルで買取り、 無料ゲームとして一般公開している(http://blastar-1984.appspot.com/)。

マスクCEOの経歴はけっして凡人には真似ができない。名門スタンフォード大学を数日で中退し、1992年に弟と立ち上げたオンライン・コンテンツ出版ソフト会社Zip2をコンパック社に売却。

1999年にPayPalの前身、X.comを設立。2003年にはスペースXの共同設立者となる一方で、テスラも軌道に乗せる。2006年には太陽光発電会社ソーラーシティ、そして現在は輸送機関ハイパーループに着手するなど、目まぐるしいまでの活躍ぶりだ。

ソーラーシティではネバダ州の太陽光発電をめぐり、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるNVエネジーと、4年間にわたる熾烈な戦いを繰り広げるという粘り強さも見せている。残念ながら勝利したのは、ネバダ州公益当局を味方につけたバフェット氏だった。 マスクCEOから成功を目指す起業家へのアドバイスは、「週80~100時間働け」「他人がやっていない新しいことに挑戦する」「偉大な人々を魅了する」「儲けた利益で新たな可能性に投資する」など。

時代の流れに敏感に反応し、周囲の何倍も働いて夢を現実化する。経済的な支援はもちろん、ビジネスネットワークを築く上で力のある企業・投資家とのつながりは重要だ。利益の上にあぐらをかくのではなく、さらなる高みを目指すことで新たな未来が開ける。純資産は197億ドル(フォーブス誌2017年11月データ)。

ハワード・シュルツ(スターバックス会長兼元CEO) ゼロックスからスタバに転職

世界中的なチェーン・コーヒーショップ人気の火付け役となったシュルツ会長だが、スターバックスを自ら設立したわけではない。シュルツ会長の功績は、1982年就職当時、わずか4店舗しかなかったスターバックスを、世界70カ国・地域、2.4万店舗 にまで拡大した点にある。

シュルツ会長は退役軍人の父親が家計を支える労働者家庭で育った。アメリカンフットボールの特待生としてノーザン・ミシガン大学を卒業後、ゼロックスに就職するものの、スターバックスに転職。

1985年、独立してエクスプレッソの小売業を営み、その2年後にスターバックスを400万ドル買収した時、転機は訪れた。シュルツ会長は独自のブランド経験を消費者に提供するという戦略を打ちだし、各地域によって異なる文化背景なども注意深く販売戦略に組み込んだ。

また従来は「従業員」として一括りにされていたバリスタ(コーヒーを淹れる職業)、マネージャー、店長といった職務をすべて「スターバックスのパートナー」と見なし、それぞれに公平な労働環境を作りだすことに成功した。

2017年4月にCEOを退任後、次期米国大統領選出馬の報道なども見かけるが 、今のところ本人は否定も肯定もしていない。純資産は28億ドル(フォーブス誌2017年11月データ)。

ジョン・アイドル(マイケル ・コース会長兼CEO) ダナ・キャランのディレクター経験

高級ブランド、ダナ・キャラン・インターナショナルのディレクターなどを務めたジョン・アイドルCEOは、2003年、当時年間売上2000万ドルそこそこだったマイケル・コースを1億ドルで買収した。

「庶民にも買える高級ブランド」のイメージを前面に打ちだし、マイケル・コースをたちまち幅広い層に支持される人気国際ブランドに押し上げた。

しかし庶民的なイメージが浸透しすぎたせいか、近年は売上が落ち込んでいる。アイドルCEOはイメージダウンにつながったアウトレット100店舗を閉鎖する一方で、より華やかなブランドに専念する方向性を打ちだしており、今年7月には高級靴ブランド、ジミー ・チュウを12億ドルで買収した。さらには高級ブランド・コングロマリットの形成を狙っている。

特にアジア圏のミレニアル世代をターゲットに、「庶民の高級ブランド」のイメージ返上となるだろうか。ファッション産業リーダー「BoF 500」にも選ばれた。

ニコラス・ホルバチェフスキ (ドローン・レーシング・リーグ 設立者兼CEO) 空軍などスポンサーに放送

「ドローン・レーシング=ドローンを利用したレース」の未来に可能性を見出したホルバチェフスキCEOは、2015年にドローン・レーシング・リーグを設立。

「テクノロジーを駆使した次世代スポーツを作りだす」という野望に、国際不動産開発企業リテーティッド・カンパニースのステファン・ロス会長などが総額3200万ドルを投資した。

スポーツという単体の枠組みにとどまらず、それを世間に送りだす上で欠かせないメディア事業も運営戦略の一部に組み込んでいる点が、ホルバチェフスキCEOがライバルから抜きんでている要素のひとつだろう。

今年のリーグはAmazonやアリアンツ、米国空軍などをスポンサーに迎え、世界87カ国・地域で放映される予定だ。

ボゾマ・セイント・ジョン (Uber)CBO イメージダウンしたUberのブランド立て直す

AppleやPepsiで経験を積んだ、ケニア育ちのすご腕女性マーケティング・オフィサー。セクハラや幹部によるデータ不正利用など、相次ぐスキャンダルでイメージダウンしたUberのCBO(チーフ・ブランド・オフィサー)として、立て直しを図る。

スパイク・リー監督が運営する広告代理店、スパイクDDBでキャリアをスタート。リー監督は「ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年制作)」などメッセ―ジ色の濃い作品で知られる。

ペプシの音楽・エンターテインメント・マーケティング部門では、当時ソロ活動を始めたばかりだったビヨンセをCM起用に成功。Appleの国際消費者マーケティング部門ではApple Music・ iTunesを担当した。

実生活では8歳の娘の母親。「明日はないものと思って今日という日を一生懸命生きる」 という、彼女自身の人生哲学が印象的だ。

パティ・ジェンキンス(映画監督) 「ワンダーウーマン」が大ヒット

低予算映画「ワンダー・ウーマン(2017年制作)」を、誰も予想していなかった4億ドルの大ヒット作に導いた女性監督。低予算とはいえあくまでハリウッドレベルで、実際には1.5億ドルが投じられた。

一躍世界中から注目を浴びたジェンキンス監督だが、実は長編映画の制作経験は過去に一度しかない。2003年に制作したシャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ主演作「モンスター」だが、セロンはこの作品でアカデミー主演女優賞などを総なめにした。

ジェンキンス監督が女性であったことも、「ワンダー・ウーマン」の大ヒットの要因のひとつになったといわれている。メディアがその事実を公開前から大々的に報じていたが、かなりの宣伝効果があったのではないだろうか。

「卓越を目指す」というジェンキンス監督は、「1日20%余分に頑張れば、10倍の結果を得られる」という相当な努力家だ(TIMEより )。「ワンダー・ウーマン」の続編制作も正式に決定している。

クリスティン・レムカウCMO兼CCO  反社会的サイト対策で結果出す

テネシー州の私立ヴァンダービルト大学卒業後、1998年からJPモルガン・チェースや被合併会社で、マーケティングやコミュニケーション領域の能力を発揮。2010年にCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)に就任し、2014年以降はCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)も務めている。

レムカウCMOは、多くの同業者が直面している問題―――ヘイトサイト(反社会的な内容を扱うサイト)――対策として、一時は40万件のサイトに流していた自社広告を、一気に5000件に減らした。「悪質なサイトの犠牲になってイメージを傷つけられるよりも、広告量が減るほう方がまし」との判断だ。

意外なことに、広告量が80分の1に減ったにも関わらず、広告の観覧者数にはほとんど変動がなかったという。つまりレムカウCMOの大胆かつ賢明な決断が、結果的に自社に最適な恩恵をもたらしたことになる。

2人の実兄がゴールドマン・サックス の投資銀行部門の責任者と、プライベート・ウェルス・マネジメント部門のヴァイス・プレジデントと、ウォール街の血筋をふんだんに感じさせる家柄だ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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