ふるさと納税は節税になる上、寄付金を送った自治体から豪華な返礼品がもらえるとして人気の制度だ。ふるさと納税の返礼品を紹介するサイトも登場、地方自治体も魅力的な返礼品を次々打ち出すなど、年々注目が高まっている。2015年からはふるさと納税の控除限度額が約2倍に拡充されたこともあり、さらにメリットが高まった。

しかし、ふるさと納税を行い、税金の控除を受けるには確定申告で申請を行う必要があり、手間がかかるのがデメリットだった。そんな中、ふるさと納税をより身近なものにするために創設されたのが、「ワンストップ特例」だ。手続きがぐっと簡素化され、気軽になったワンストップ特例について詳しく紹介していこう。

ふるさと納税,家族
(画像=PIXTA)

ワンストップ特例制度とは何か?

まずふるさと納税とは、自分の出身地や思い入れのある地方自治地に寄付金を行うことができる制度だ。寄付を行うことで、農産物や特産品など、その地方ゆかりの返礼品がもらえることや、寄付金に応じて税金の控除や還付を受けられることから注目を集めている。

寄付した金額は、寄付金のうち、2000円を超える部分について一定の上限までその年の所得税より還付、または翌年度の個人住民税から控除される。ブランド牛やメロンなどの高額な返礼品を、実質負担金2000円でもらえるとあって、かなりメリットが大きいのではないだろうか。

寄付金の使い道も決められる

寄付の用途の指定することができるため、地方活性化にも役立つとして国も力を入れている。納税額も年々額が増えており、2015年の実績は約1653億円で、前年度に比べ約4.3倍。制度が始まった2006年の81.4億円と比較すると、20倍以上と急速にその規模が拡大している。

しかし、控除を受けるには手続きが必要となる。特に負担となっていたのが会社員など給与所得者だ。通常、給与所得者は勤務先で年末調整を行えば、確定申告を行う必要はない。だがふるさと納税の還付金や控除を受けるには、地方自治体から発行される寄付金受領証明書を確定申告で提出する手続きが必要となる。給与所得者にとっては大きな負担となる上、確定申告に応対する税務職員の負担も増えていた。

その状態を改善するため、創設されたのが「ふるさと納税ワンストップ特例」だ。ふるさと納税ワンストップ特例は、控除をうけるための手続きを簡略化することで、よりふるさと納税を盛り上げるために作られた。

以下の2つの条件に当てはまる場合、ふるさと納税ワンストップ特例を利用できる。

① 確定申告が不要な給与所得者

② 1年間のふるさと納税納付先自治体が5つ以内

ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用するには、確定申告が必要かどうかとふるさと納税を行った納付先自治体の数がポイントとなる。

まずは確定申告の必要性についてみていこう。ふるさと納税の控除を受けないのであれば勤務先の年末調整で済む給与所得者は、ワンストップ特例制度を利用することができる。自営業者や、給与所得者であっても年収が2000万円を超える場合は、もともと確定申告が必要なため利用できない。また、医療費控除や住宅ローン控除を受けるために確定申告が必要な場合も、ワンストップ特例は利用できない。

もうひとつ気を付けたいのが納付先自治体の数だ。5つ以上の自治体にふるさと納税を行う場合は利用できない。納付先自治体が5つ以上になった場合は、確定申告を行う必要がある。ただし、1つの自治体に複数回寄付しても、1カウントとなるため、ふるさと納税の控除額上限に達しておらず、追加で寄付を行いたい場合は同じ自治体に複数回寄付を行うのもひとつの手だ。

ワンストップ特例を「申請しない」場合の流れ

ふるさと納税ワンストップ特例制度を申請しない場合に、控除を受けるには以下のような流れになる。

1 ふるさと納税を行う

2 寄付金受領証明書を発行してもらい、保管しておく

3 翌年3月の確定申告で寄付金受領証明書を添付し、寄付を申告する

4 所得税および住民税の控除を受ける

まず、ふるさと納税を行う自治体を選び、ふるさと納税を行う。すると寄付先の自治体から確定申告に必要な寄付を証明する書類(寄付金受領証明書)が発行される。郵送された寄付金受領証明書を確定申告まで保管しておくこと。

ふるさと納税をおこなった翌年3月15日までの確定申告で、寄付金受領証明書を添付し、寄付を申告すると所得税や住民税からの控除を受けることが可能だ。

控除は所得税の還付、または住民税の控除を選ぶことができる。所得税の還付を選んだ場合は、指定の口座に後日還付金が振り込まれる。住民税の控除を選んだ場合は、6月からの住民税が控除される。

ワンストップ特例を「申請する」場合の流れ

1 ふるさと納税を行う

2 寄付先の自治体に「ワンストップ特例申請書」と「マイナンバー提供に必要な本人確認書類」を郵送する

3 寄付先の自治体が、寄付者の住所地に連絡する

4 翌年の住民税が減額される

ふるさと納税ワンストップ特例を利用するには、まずふるさと納税をする度、寄付をした自治体に「ワンストップ特例申請書」と「マイナンバー提供に必要な本人確認書類」を郵送するだけだ。書類と寄付金を受け取った自治体は寄付者が済む居住地に連絡を入れ、居住地の自治体が良く年度分の個人住民税を減額してくれる。

寄付者が行うのは、申請書と本人確認書類の郵送だけなので、確定申告をする必要はない。所得税からの控除は行われず、全額住民税の減額となる。

書類を送る手間はあるが、必要書類を送ってしまえばあとは寄付先自治体と住所地自治体の間で手続きは完了する。また、自宅で書類を揃えて郵送するだけなので、確定申告を行うよりもずっと手続きが楽なのが魅力だ。

ワンストップ特例の申請方法 送るのは申請書と本人確認書類

ワンストップ特例を申請するには「ワンストップ特例申請書」と「マイナンバー提供に必要な本人確認書類」を寄付先の自治体に郵送する。本人確認書類はマイナンバーカードを持っている場合はカードの表と裏のコピーで対応できる。マイナンバーの通知カードを持っている場合は、通知カードのコピーと運転免許証やパスポートなどの身分証のコピーが必要だ。マイナンバーカード、通知カードのどちらも持っていない場合は、マイナンバーが記載された住民票の写しと、身分証のコピーが必要となる。

注意したいのが、同じ自治体に複数回寄付を行う場合、寄付するごとに申請用紙を提出しなくてはいけないということ。寄付先自治体は5つ以内に限定されているが、同じ自治体に複数回寄付を行っても1カウントとなる。そのため、すでに寄付を行った自治体に追加で寄付をする場合、「同じ自治体だから」と申請書類を送らないままだと控除を受けることはできない。必ず寄付を行うごとに申請書類を送るようにしよう。

ワンストップ特例申請書は、事前に申請をしておけば寄付先自治体から寄付金受領証明書と一緒に送付される。もしワンストップ特例申請書が送られてこなければ、寄付先自治体に連絡をすれば郵送される。インターネットからもダウンロードが可能だ。

ワンストップ特例の申請期限は?

2017年度分の申請用紙の郵送は、2018年1月10日必着となる。郵送先は寄付を行った自治体だ。5団体に寄付を行った場合は、それぞれ5カ所にかならず郵送を行う。また、同じ自治体に複数回寄付した場合は、その都度申請を行わなくてはいけないので注意すること。つまり、5団体に8回寄付を行った場合は、8回分の申請書類をそれぞれ送っておこう。

ワンストップ特例の申請を忘れた場合はどうすればいい?

やむを得ない理由で提出が2018年1月10日に遅れる場合、寄付先自治体へ相談するとよい。

期日に間に合わなかった場合や申請を忘れた場合は確定申告をすることで控除を受けることが可能だ。その場合、確定申告のために寄付金受領証明書が手元にあるか確認すること。万が一、寄付金受領証明書が届いていない場合は、寄付先自治体に連絡して送ってもらう必要がある。もし、複数の自治体にふるさと納税を行い、ワンストップ特例の申請書類を提出した自治体と送り忘れた自治体があった場合は、確定申告だけを行えば大丈夫だ。ワンストップ特例の申請と確定申告を両方行った場合、確定申告が必ず優先される。そのためワンストップ特例の取り消しなどは必要ない。

では確定申告も忘れてしまった場合はどうすればいいのか。その場合は、遅れても確定申告を行うことができる。還付や控除を求める申告は、5年前までさかのぼることが可能だ。ただし、住民税の控除は1年後からになるため、できれば期限内にきちんと確定申告を行うようにしよう。

ふるさと納税の納付先自治体が「5つを超えてしまった」場合

5カ所以上の自治体にふるさと納税を行ってしまった場合は、ワンストップ特例を利用することはできない。控除や還付を受けるには、確定申告を行う必要がある。

もし、すでにワンストップ特例の申請書を送ったあと、納付先自治体が5カ所以上になってしまった場合は、必ずふるさと納税を行ったすべての自治体の寄付金を確定申告で申請すること。すでにワンストップ特例の申請をした自治体の分も確定申告で申請しておかないと、確定申告での控除が受けられなくなる。例えば、5カ所目までの自治体にワンストップ特例の申請書類を送付した後、6つ目の自治体にふるさと納税を行ったとする。5つの自治体にはワンストップ特例が申請してあるから、と6つ目のみ確定申告で申請した場合、6つ目の自治体のふるさと納税額しか還付や控除は受けられない。

ワンストップ特例の申請と確定申告の場合、確定申告が必ず優先されるためワンストップ特例の取り消しは必要ない。

ふるさと納税が「控除されたか確認」する方法

ふるさと納税の控除がきちんと行われたかどうかは、所得税の場合は確定申告の際に指定された振込口座への還付で確認できる。還付後に税務署から送付される「国税還付金振込通知書」もチェックしておこう。

住民税の場合は、勤務先で6月頃に住民税決定通知書が配布されるので、そちらで控除されているかどうかを確認が可能だ。住民税決定通知書の中に、「寄附金税額控除」という欄がある。ここに記載してある額が、自分がふるさと納税で寄付した額と同じかどうかを確かめよう。市町村民税と都道府県税が分けて記載してある場合は、寄付金税額控除も分けて記載されているので合計すること。寄付金全額控除の欄がない場合は、税額控除額の記載でチェックすることができる。ただし、税額控除額はふるさと納税の寄付金控除だけでなく、住宅ローン控除や調整控除も含まれているため注意が必要だ。

ふるさと納税した後に「住所変更」した場合

寄付の申し込み情報には、ふるさと納税を行った年の翌年1月1日時点での住民票の所在地を登録しておく必要がある。そのため、ふるさと納税ワンストップ特例制度の適用を申請した後、住所を変更した場合は2018年1月10日までに寄付先の自治体へ変更届け出書を提出する必要がある。変更届け出書は総務省のサイトからダウンロードが可能だ。

ふるさと納税を行った年の翌年1月2日以降に住民票を移動させた場合は、変更届け出書は必要ない。

実際にふるさと納税をするのに参考になるサイト

以上を踏まえてふるさと納税をしようと思ったとき、情報がまとめられたサイトを見て比較するのが手っ取り早い。代表的なサイト・サービスを紹介するので、ふるさと納税の納付先を選ぶ参考にしてみてほしい。

他の人がどの自治体に納税して、どんな返礼品をもらっているのか。人気ランキングが気になる人は「ふるなび」。諸々の手続きを一括して代行してくれる、簡単なサービスがいいなら「ふるなびプレミアム」。返礼品にはやっぱり地方のグルメが欲しいという人は「ふるなびグルメ」。旅行が好きで、実際に地方に行きたいという人には「ふるなびトラベル」が向いているだろう。これらのサービスの特徴は以下のようなものだ。

ふるなび 人気別・返礼品別で選べる

ふるなび
(画像=Webサイトより)

ふるなびは全国の自治体のふるさと納税返礼品を紹介しているサイト。地域別や返礼品別で寄付先を探すことができる。クレジットカード決済も可能のため、ワンストップで手軽にふるさと納税を行うことが可能。必要書類のダウンロードも可能だ。返礼品の人気ランキングもあり、寄付先を検討するにも役立つ。

ふるなびプレミアム コンシェルジュのつく代行サービス

年収2000万円以上限定で利用できる、ふるさと納税の代行サービス。寄付プランの提案、申込まで一括代行してくれるのが魅力だ。手数料無料で選任コンシェルジュがつき、自分の控除上限額や好みに合わせたオススメのふるさと納税先を提案してくれる。振り込みも指定口座に一括で行えば、それぞれの自治体へ寄付金を納付してくれるので手間いらず。

ふるなびグルメポイント ふるさと納税といえばグルメ

ふるなびで、ふるなびグルメポイント提携自治体にふるさと納税を行うともらえるふるなびグルメポイントを入手できる。寄付した自治体ゆかりの店で、グルメポイントを利用して食事を楽しむことが可能だ。

ふるなびトラベル ふるさと納税で旅行?

ふるなびで、ふるなびトラベル提携自治体にふるさと納税を行うとトラベルポイントがもらえる。ふるなびトラベルでトラベルポイントを利用して、旅行を申し込むことができる。

ふるさと納税は税金の控除と返礼品を受けられる魅力的な制度だ。ワンストップ特例を利用すれば、より気軽にそのメリットを享受できる。ぜひ活用してもらいたい。(ZUU online編集部)