「ヘッジファンド」という言葉は、投資の世界にいれば誰しもが耳にする言葉であろう。しかしながら、ヘッジファンドは、まとまった資金を持つ投資家のみを取引対象にしていることもあり、具体的な特徴と戦略などについてしっかりと説明できる人は少ないのではないか。

一部の投資家以外にはヘッジファンドの実態は見えにくく、雲の上の存在のように感じられるかもしれない。今回はそんなヘッジファンドの特徴や戦略について解説していく。

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(写真=PIXTA)

ヘッジファンドの概要と近年の運用パフォーマンス

ヘッジファンドの始まりは、1949年にアルフレッド・ジョーンズ氏が始めたファンドだといわれている。その後、好景気に乗って数多く登場しては、不況とともに縮小・消滅という流れを歴史の中で繰り返し、徐々に現代の姿が形作られてきた。

以下にヘッジファンドの特徴を列挙してみたい。なおヘッジファンドに明確な定義はなく、ヘッジファンドが以下の特徴をすべて満たすわけではないことにご留意頂きたい。

・ 絶対収益
ヘッジファンドは、金融市場が上昇しているときはもちろん、下落しているときも収益をあげる (運用資金を殖やす) 絶対収益型の運用を行う。

・ 運用手法が多様
ヘッジファンドは私募であるため、投資対象や投資手法に規制がなく (もしくは少なく) 、運用手法が多様である。またレバレッジをかけて運用することが一般的だ。

・ 流動性は限定的
投資家が解約できるタイミングは、四半期毎や半年毎など時期が限定されている。そのため、ヘッジファンドの解約タイミングが重なるときに金融市場が荒れやすいという指摘もある。

・ 報酬形態
ヘッジファンド自体の収入源には、資産の管理報酬に加えて、運用の成功報酬の2つがある。一般的に、管理報酬は預かり資産の2%、成功報酬は収益の20%とされるが、近年は手数料の引き下げ傾向にある。運用の成功報酬は理論上、青天井であるため、ファンドの運用成績が良好であれば億単位の報酬を得ることも珍しくない。

2008年のリーマンショック後、ヘッジファンド業界は長らく資産流入傾向にあったが、2016年に入り、8年ぶりの大幅な資金流出に見舞われた。この背景には、高額手数料への敬遠志向、運用パフォーマンスの低下による解約などが挙げられる。

米調査会社ヘッジファンド・リサーチが発表しているグローバル・ヘッジファンド・インデックスの年間の騰落率を見ると、ここ10年ほどは運用成績が右肩下がりであり、近年はS&P500やNYダウなどインデックスのパフォーマンスを下回っている。高い手数料を支払っているにも関わらず、市場平均を超える運用成績を残すことができていないため、新規契約が減少したり、解約が続いていたりするわけだ。

ヘッジファンドの主要な戦略

上記のグローバル・ヘッジファンド・インデックスは、複数の戦略のヘッジファンドから構成されている指数だ。このため、この指数が下がっているからといって、すべてのヘッジファンドの成績が悪いというわけではない。特にヘッジファンドは、採用している戦略によって、パフォーマンスが大きく変動する。代表的な戦略について簡単に解説しておこう。

・ ロング・ショート
アービトラージ (裁定取引) とも称される投資手法。株式市場において「割安の銘柄の買い」「割高の銘柄の売り」を同時に行い、株価が適切な水準に修正される際の利益を狙う。個別銘柄の割安・割高を判断する際は、ファンダメンタルズ分析を用いることが多い。

・ グローバル・マクロ
GDPや予想成長率、人口動態、金利、物価、個人消費など経済マクロ指標を分析し、世界中の株式、債券、為替などさまざまな金融商品を売買する。ロング (買い) もショート (売り) も両方使用する。

謎の存在ではなく意外と身近な存在

売買高が著しく低いなどの特殊要因がない限り、個人投資家の取引が金融市場に及ぼす影響はほぼないが、巨大なヘッジファンドともなると、金融市場に多大な影響を与える場合がある。特に近年は、世界的なカネ余りとアルゴリズム取引 (AIによる自動売買) の発達により、ヘッジファンドが金融市場のボラティリティ (変動幅) を上昇させていると言われている。

自分が投資しようしている対象先がヘッジファンドの売買によって、本来の価値より売り込まれていたり、買い上げられていたりする可能性もある。一見、自分には関係ないと思われるヘッジファンドの動向や運用成績にも注目して資産運用を行いたいところだ。(提供:大和ネクスト銀行


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