「ライツオファリング」とは、上場企業が資金調達をする手段の1つだ。公募増資などに比べて、まだそれほど一般的とはいえないが、増資につきものである「既存株主の希薄化リスク」をある程度減らせるため、注目を集めつつある。

ここでは、投資家の立場から、ライツオファリングで新株予約権を割り当ててもらう際のメリットや注意点について説明する。

ライツオファリングは既存株主に優しい増資手法

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(画像=PIXTA)

ライツオファリングは、権利確定日時点で株式を保有している投資家に無償で新株予約権を割り当てる。「ライツイシュー」「新株予約権無償割当て」ともいう。日本における法的根拠は2006年に施行された会社法だ。実際に上場会社で行われるようになったのは金融商品取引法が改正された2010年以降であり、比較的新しい手法といえる。

投資家 (既存株主) は、割り当てられた新株予約権を行使して株式を追加で購入したり、新株予約権自体を市場で売却して換金したりすることができる。ライツオファリングをする企業は、権利行使時の払込金を通じて資金調達を行うことになる。

増資の方法には、他にも公募増資や第三者割当増資といった方法があるが、問題としてついて回るのが「株式価値の希薄化」だ。1株当たりの利益が減少するため、結果として株価下落リスクにつながる。そのとき既存株主には基本的に市場価格で売買する (または何もしない) 以外の選択肢がなく、不利益を被りやすい。

ライツオファリングも増資であることに変わりはないので、株式価値の希薄化そのものは本質的には避けられない。しかし、新株予約権を行使することで持分の希薄化を避けることができる。新たな出資を希望しなかったり、資金がなくてできなかったりする場合は、新株予約権を売却して得た利益で損失の一部を穴埋めできる。既存株主によく配慮した手法といえる。

企業としては資金提供を募るターゲットによって手法を使い分けられるため、資金調達の可能性が広がる。新規株主を重視する場合は公募増資、既存株主を大切にしたい場合はライツオファリングという具合だ。

新株予約権が割り当てられた投資家のメリット

投資家にとってのメリットは、市場価格よりも安い価格で株式を購入できる可能性があることだ。新株予約権が付与された時点で購入価格は決まっている。行使期間内にその価格よりも株価が高い水準にあれば、新株を購入してすぐに売却すれば差額が利益になる。将来的に成長し、株価が上昇すると判断した場合は、そのまま保有し続けるのもよい。

新株予約権自体を売買できるのも大きなメリットだ。株価の上昇が見込めないと判断した場合には、売却することで利益が得られる。株式と同じ様に上場されるので、後で買い戻すこともできる。ライツオファリングの時に権利を行使するか売却するかは、当該企業の業績も見据えて慎重に判断する必要がある。

権利行使期間とその後の取り扱いに注意する

その一方で注意点もある。ライツオファリングには、発行会社 (資金調達者) が証券会社 (コミットメント会社) と引き受け契約を締結して行う「コミットメント型ライツオファリング」と、引き受け契約の存在しない「ノンコミットメント型ライツオファリング」が存在する。

コミットメント型は、権利行使されなかった新株予約権は証券会社が取得し、原則として証券会社が新株予約権を全て行使するが、計算日における株価によっては、支払額がゼロ円となる可能性がある。ノンコミットメント型においては、期間終了日までに権利行使しないと、新株予約権は消滅してしまう。

また、コミットメント型かノンコミットメント型かにかかわらず、一般的に権利行使期間は短期間であるため注意が必要だ。新株予約権の上場期間や権利行使期間は、短いと数週間程度で終わってしまう。気づかないうちに権利消滅…ということもあるため、こまめな情報収集が求められる。

ライツオファリングを理解して株式投資に活かす

このように、注意点はいくつかあるものの、一般的な増資に比べて、ライツオファリングは投資家 (既存株主) の選択肢が多い。今後、企業の資金調達方法のひとつとして、さらなる広がりを見せる可能性があるだろう。

自分が保有する銘柄がいつライツオファリングを実施するか分からない。また、自分が保有していない銘柄でも、ライツオファリングに収益機会を見い出すことがあるかもしれない。ライツオファリングの特徴、株主のメリットや注意点を理解して、今後の株式投資に活かしていきたい。(提供:大和ネクスト銀行

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