中国では、スマホの急速な普及とモバイル決済の発展を背景として、日本にはないO2Oの新業態が花を咲かせた。ライドシェア(配車アプリ)、シェアサイクル、フードデリバリーサービスの3つである。いずれもすでに大手による寡占化の段階に入った。

ここで取り上げるフードデリバリー業界も「餓了麼」「美団外売」の2社に集約されつつあった。そのため当面平穏だろうと思っていたところ、アリババが餓了麼を買収、美団が衣料品の宅配に進出というニュースが伝えられた。経済サイト「界面」「中国財経」などが取り上げている。この業界はどう変わっていくのだろうか。

上海の人気レストラン

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(画像=golubovystock / Shutterstock.com ※写真はイメージです。)

日本人の多い上海の古北新区に、庶民的な台湾料理店がある。おいしくてリーズナブルで、日本人にも人気の高い店だ。店内の使いこんだテーブルには、QRコードが貼り付けてある。食事が終わると店員に声をかけ金額を確定する。そしてコードを支付宝(アリババのモバイル決済)でスキャンすれば、支払いは完了だ。無現金レストランである。

また店の前には、青、黄、赤色の、3種類のオートバイが10台ほど待機している。フードデリバリー部隊だ。青は餓了麼、黄は美団、赤は店独自のオートバイである。どのルートから注文が入っても即時に対応できるようになっている。これが現代中国における、人気レストランの光景である。そのフードデリバリー業界に、新たな動きがあった。

アリババ、餓了麼を買収

2月下旬、アリババは3ヵ月以内に95億ドルを投じ、餓了麼の全株式を購入すると伝えられた。アリババは2016年4月、すでに12億5000万ドルを投資し、筆頭株主となっていた。2017年5月、アリババはさらに10億ドルを出資し、同業の百度/バイドゥグループの「百度外売」を買収させた。これで業界地図は、餓了麼と美団外売に集約された。

その上で今回、餓了麼を完全に買収するという。ただし餓了麼の創業者・張旭豪は、SNS上で事実ではないと発信している。たとえすべてが事実でないとしても、アリババ側の意図は明白だろう。

餓了麼VS美団外売=アリババVS美団点評(騰訊)

それは餓了麼から創業者を排除し、アリババグループとして、生活サービス全般における美団点評との戦いにグループとして備えることだ。何しろ美団のバックには騰訊(テンセント)が控えている。対立の構図を見てみよう。

(創業年/展開都市/提携先数/顧客数)
餓了麼  2009年/2000都市/130万/2.6億人
美団外売 2013年/1300都市/100万/2.0億人

餓了麼優位のようだが、売り上げは拮抗していると見られている。

その他の業態でも厳しく対立している。

(アリババ/美団点評)
口婢網 VS 美団点評 ……総合生活サービス
盒馬鮮生 VS 掌魚生鮮 ……O2O融合の新小売業態
淘票票 VS 猫眼電影 ……チケットサービス
飛猪 VS 美団旅行 ……トラベルサービス

美団外売、メンズ衣料を宅配

2月上旬、メンズショップ大手「海瀾之家」は、騰訊グループと戦略提携を結んだ。美団点評も提携先の一つである。そしてまだ1カ月もたたないうちに、海瀾之家商品の宅配を始めると発表した。美団点評サイトに53アイテムの商品をアップし、北京地区66店舗、上海地区142店舗の在庫から、1時間以内に宅配する。

デリバリーのドライバーたちは、注文の入りそうなレストラン前に待機している。その近くに海瀾之家の店舗があれば、確かに簡単である。食事時間以外にも稼働できる。

ところでこの海瀾之家は、昨年はアリババと提携していたのである。2つの陣営は非情な陣取り合戦を展開しているのだ。

こうした厳しい対立構図の中、一企業の創業者が弾き飛ばされてしまうのは、まれではない。張旭豪は上海交通大学在学中に餓了麼を創業した。まだとても若い。アリババの完全買収となれば、巨額の資金を手にすることになるだろう。彼の今後にも注目が集まる。中国の020業界は、日本の比ではない。実にダイナミックなところである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)