このところ中国のネットニュースで“新零售”(新小売業)の文字を見ない日はない。百花繚乱というべき大混戦となっている。基本的には、オンライン企業が従来型のオフライン小売業に改革を迫る構図である。その中から代表的オンライン企業、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)の取り組みを上海現地の様子をふまえてレポートする。

阿里巴巴の「盒馬鮮生」

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(画像=筆者撮影、中国・上海の盒馬生鮮の店舗)

ネット通販首位の阿里巴巴は、多くのオフライン小売業に出資している。中でも昨年11月の大型スーパー「大潤発」への出資は世間を驚かせた。ここでは独力で開発した生鮮スーパー「盒馬鮮生」を取り上げる。

盒馬鮮生金橋店は、上海浦東の住宅地に立地している。金橋国際商業広場というSCの地下1階だ。一見すると普通のの食品スーパーと変わらない。一般客が普通に買物をしている。

しかしそれよりも断然多いのは、空色のユニフォームに身を包み、動き回る店員たちだ。彼らはオンラインで入るオーダーを端末で確認すると、専用の買い物袋をスキャン、これで発注主が確定する。店員たちはオーダー明細にそって商品を揃える。完了すると袋はハンガーシステムに載って1階の配送所へ運ばれる。3キロ以内の配送範囲に最短30分で配達する。

発注は「盒馬」というアプリをダウンロードして行う。支払いは阿里巴巴のモバイル決済「支付宝」を利用する。スマホ1台ですべてが完結するのだ。一見客も支付宝さえあれば清算できる。この店に現金は一切存在しない。

騰訊(テンセント)の「We Life」

娯楽とソーシャルメディアの巨人、騰訊も昨年、永輝超市というオフライン小売業に出資し、これまた世間を騒がせた。

その騰訊は、上海虹橋空港近くの巨大SC「万象城」に「We Life」という新業態店をオープンした。新業態というより、騰訊の描く近未来の生活を発信するアンテナショップのような存在である。

騰訊のモバイル決済「微信支付」のQRコードをドアでスキャンして入場する。商品は旅行用品や衣料、装飾品などである。気に入った商品があれば、微信支付でスキャンする。最後に商品を袋に入れ、出口にあるゲートに立つ。ゲート前方に掲げられた大きなQRコードにスマホをかざす。清算済みかどうかを確認するのだ。

最後に出口ドアでも微信支付をかざして退出する。入口に1人、出口に2人、店内に2~3人の体制である。目指す最終形は無人店舗だろうが、これだけのプロセスを、店員の補助なしで、最後までこなすのは難しい。また大型SCの1階に出店して採算に乗るような商品群でもない。騰訊はそれを百も承知で、近未来の買い物スタイルを提案しているのだ。

騰訊、カルフール中国に出資

盒馬鮮生は今年の1月までに7つの都市に29店舗を出店し、すでにチェーン化に成功している。今年はさらに出店を加速し、全国展開を目指す。さらに海外進出も視野に入れているという。つまり将来の日本上陸もあり得るわけだ。

騰訊は、提携しているネット通販2位の京東(JD)の取組みを見守る立場だった。京東はウォルマート中国と提携し、188元以上の買い物は、京東到家という配送システムによって無料で配達している。これを突き詰めていけば、盒馬鮮生と同じような形態へと行きつく。

ところが騰訊は、出資した永輝超市とともに、カルフール中国に出資することがわかった。1月下旬カルフールは、両社と“投資意向書”の締結に向け協議中であることを明かした。

これで騰訊は、京東、ウォルマート、カルフールと組んで、阿里巴巴の“新零售”に対抗することになる。阿里巴巴グループの進捗ぶりを見て、アンテナショップだけでは、我慢できなくなったのだろうか。

2018年、中国の小売業は、大手の合従連衡を伴いつつダイナミックに変わるだろう。その激しさは日本の比ではなさそうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)