(本記事は、小山昇氏の著書『利益を最大にする最強の経営計画』KADOKAWA、2018年3月6日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『利益を最大にする最強の経営計画』シリーズ】
・(1)100万円超の高額セミナーでも「1年先まで埋まる」理由とは?
・(2)「儲け」よりも大事なコトとは?「16年連続増収」の社長が教えるお金の使い方
・(3)新規事業で利益を出す9つのポイント――間違ったら撤退、迷ったら止める
・(4)もっとも簡単な「経営計画書」のつくり方 「正しさ」よりも大事なコトとは?
・(5)赤字の社長ほど「真似をしない」 武蔵野・小山社長が明かす「知識より大切なこと」

利益を最大にする最強の経営計画
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

武蔵野が増収を続けられる理由

このごろは少なくなりましたが、7~8年前までは、「武蔵野さんは、売上の割に、経常利益が少ないですね」と言われることがありました。

この見解は間違いです。

「経常利益が少ない」のではありません。

私が未来にお金を使って、経常利益を意図的に「少なくしていた」からです。

多くの会社は、利益が上がると、内部留保にします。

ところが、私は違います。「常に経営革新を行って、潰れにくい体質にする」ために、未来に投資することを優先しています。

武蔵野が「16年連続増収」を達成できたのは、理由があります。それは私が、「大幅増益での着地を考えていない」ことです。

前年2000万円だった利益が、今年は「1億円」になったとき、多くの社長は内部留保を増やします。

ですが私は、1億円のうち「2500万円」だけを利益として残し(前年よりも500万円だけ増益する)、あとの7500万円は、未来にすべて使い切ります。

私は、利益が出たら、次の順番で未来に投資しています。

(1)お客様の数を増やすこと
(2)社員教育
(3)インフラの整備
(4)経常利益

利益を最大にする最強の経営計画
(画像=fizkes/shutterstock.com)

(1)お客様の数を増やす

継続的に売上を上げるには、次の2つの考え方しかありません。

・顧客単価を上げる
・お客様の数を増やす

多くの会社が顧客単価を上げようとするが、それは間違いです。お客様は、

「決めた金額以上は払わない」
「ひとつのお店ですべての買い物はしない」

という傾向があるので、顧客単価を上げるのは難しい。

だとすると、会社の業績を伸ばすには、「お客様の数を増やす」しかありません。

お客様の件数が10件で、売上が合計で10万円で、お客様の件数が20件になり、売上が20万円になることを「成長」と言います。

お客様が10件のままで売上が20万円になることは「膨張」と言います。お客様が増えない成長はありません。

お客様の顧客単価が大きな額になっても、手放しに喜んではいけない。かえって「危険」と思うのが正しい。なぜなら、「膨張すると、やがて弾ける」からです。

(2)社員教育

私は、社員教育に時間もお金も、惜しみなく投入しています。10年前の第44期は、粗利益「25億円」のうち、「約1億円」を教育研修費に注ぎ込んでいます。

同じ事業規模の会社に比べて、社員教育にかけるお金は、かなり多い。取引をしている銀行から、「教育研修費を半分にして、もっと利益を出しほうがいい」という指摘をいただいたことがあります。

ですが私は、社員教育を怠ったとたん、業績も尻つぼみになると考えています。社員の定着と会社の成長のためには、教育研修費を惜しんではいけない。

これからの時代は、販売戦略ではなく、「人材戦略」に力を入れた会社が勝ち残ります。

中小企業にとって、人材の成長が、会社の成長です。

「人」と「利益」は比例関係にあって、人が成長すれば、それにともなって会社の業績も良くなります。商品やサービスはどの会社もすぐに真似できるが、人そのものは決して真似できません。

社員教育に力を入れている会社はほかにもありますが、多くの会社は、営業教育や技術教育など小手先のスキル教育にとどまっていて、会社の価値観や方針を教えていません。だから、「技術が流出」などと大騒ぎする。

また、社員教育は、本来は無形固定資産ですが、測るモノサシがないから、全額「経費」になる。利益が出ている会社が社員教育をすると節税にもなります。

たしかに中小企業にとって、社員教育にお金をかけるのは、大変です。しかし、私が指導してきた会社の中で、「社員教育にお金をかけすぎて倒産した会社」は、1社もない。

中小企業は、「お金と手間をかけて社員を教育する」以外に利益を出し続ける方法はありません。

(3)インフラの整備

1億円で購入した機械が、3年後にモデルチェンジした。新型の機械は旧型に比べて「30%」生産性がアップしますが、販売価格は旧型よりも5000万円高い「1億5000万円」です。

このとき多くの社長は、「30%生産性が上がるとはいえ、販売価格が1億5000万円もするのは高すぎる」「まだ使える機械を手放すのはもったいない」と考えます。

でも私は、旧型機がまだ使えても、躊躇なく新型機を購入する。

わが社は、サーバーもパソコンも、タブレットもプリンターも、できるかぎり最新機種を導入しています。

「まだ使えるのに、買い替えるのはもったいない」と思われるかもしれません。

けれど、個人はものを大切にするのが正しくても、会社は、ものをすぐに買い替えるのが正しい。ITツールは、新しい世代のほうが、処理スピードも省エネ性能も高いです。

(4)経常利益

最後に、「経常利益」です。普通の会社は、利益が出たら「経常利益」を最優先しますが、私は最後です。

なぜなら、社長の仕事は「会社を潰さないためにお金を使うこと」であって、「お金を残すこと」ではないからです。

私の若いときは貯金をせず、給料はすべて使い切っていました。私は44歳で結婚をしました。当時の年収は2200万円以上ありましたが、貯金は33円。定期預金は当然なし(笑)。

下世話な話で恐縮ですが、私は独身時代に、「歌舞伎町の夜の帝王」というあだ名がつくほど、いろいろなクラブに精通していました。

なぜその名がついたかというと、会社が儲かっていても、自分の給料が高くても、派手に遊ばなかったからです。

派手に遊ぶと長続きしません。クラブに行って、ほとんどの人が「オールドパー」を飲んでいた時代、私は、どの店でも「スーパーニッカ」を飲んでいました。

「オールドパー」しかない店では、オールドパーの瓶に、スーパーニッカを入れ替えてもらって飲み、代金はオールドパーで払っていた。

人から見るとオールドパーを飲んでいるように見えますが、中身はスーパーニッカ。私が歌舞伎町で絶大なる信用を得ているのは(笑)、会社の景気が良いときも、業績が悪いときも、いつもと同じように飲んでいたからです。

クラブ通いも、会社経営も、「長く続ける」ことが私の目的でした。

「もったいない」と思われるかもしれませんが、そのおかげで、私は多くの体験をしました。貯金をしていたら、同じ経験は当然ながらできなかった。

「儲ける」ことよりも大事なことは、「潰れない体質」をつくることです。必要最低限の利益を確保したら、あとは未来に投資すべきです。

武蔵野は、「今期はいくら利益を出す」と決め、それ以上の利益が出たら、すべて未来に投資しています。

それどころか、利益が出るとわかったら、先行投資する。「利益が出てから」ではなく、「利益を出すために」先にお金を使う。だから、武蔵野は強いです。

小山昇
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒。1976年日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社、1989年より現職。「落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2000年、2010年日本経営品質賞受賞。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。主な著書に『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)、『改訂3版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などがある。