米フォーブス誌が発表した2017年世界長者番付で2位にランクインしたウォーレン・バフェット氏。投資の神様と呼ばれる同氏の発言は、多くの市場関係者や個人投資家が注目する。

そのようななかバフェット氏は、2017年9月にニューヨークで開かれたイベントで「NYダウ平均が100年後には100万ドルを超える」と発言した。現在のNYダウ平均は2万3,000ドルほどなので (2017年11月現在) 、100年後とはいえ100万ドルという数字は一見、夢のような話に聞こえる。ここでは、実際に2117年のNYダウ平均が100万ドルになる可能性はあるのかどうか考えてみたい。

「100年後はダウ100万ドル」はどうすれば達成するのか ?

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(写真=PIXTA)

バフェット氏の予想「2117年 (100年後) にNYダウが100万ドルを突破」は果たして現実的な数字なのだろうか。米国の昔の株価や経済成長、現在米国が置かれている経済の状況をもとに、100年後の経済を予測してみよう。

過去の株価の値動きを見ると、1916年のNYダウ平均は大体100ドルほどであった。その約100年後である2017年1月に初の2万ドル超えを果たしたので、ざっくりではあるが100年間で約200倍になった計算になる。これをそのまま次の100年間に当てはめると、2117年には400万ドル (2万ドル×200倍) となる計算だ。

また、上記の過去100年の平均年間リターンは5%ほどだ (NYダウの絶対値で計算) 。資産運用の世界ではやや高いアベレージに感じるかもしれないが、年間平均リターン5%ほどと聞けば、実現不可能というほどの感覚はなく、NYダウ100万ドルは突拍子もない数字ではないことが理解できるだろう。

ただ、過去100年間と今後100年間の経済成長を同様の伸び方と捉えるのは難しいかもしれない。一般的に、国家が成熟してくると経済成長は鈍化する傾向にあるからだ。実際に、米国の潜在成長率の推移を確認しても、1950年には約5%あったが、年を経る毎に上値を切り下げてゆき、2017年現在は2%前後と言われている。

グローバル化が進む今日では、国の経済成長率がそのまま株式市場の年間リターンにリンクするわけではないが、100年という長期スパンを考えるうえでは、相関関係にあると仮定して問題ないだろう。

100年後に100万ドル達成のキーワードは「複利運用」

上記で、過去100年は平均年間リターン約5%だったと述べた。しかし、これをそのまま今後100年の計算に当てはめれば良いわけではない。ここに数字のマジックが存在する。キーワードは「複利運用」だ。複利運用とは、生み出した利益を当初の元本に乗せて運用していくことである。従って、運用額が大きくなればなるほど複利の効果は大きくなる。

現在のNYダウを2万3,000ドルとして年利5%で複利運用すると、100年後は300万ドルを超える計算だ。バフェット氏が言う「100年後にはNYダウ平均100万ドル」を実現するには、年利3.85%の複利運用で済む。

過去50年間を振り返ると、NYダウの平均年間リターンは、米国の平均潜在成長率を上回っている。今後100年もNYダウの平均年間リターンが、米国の平均潜在成長率を上回るとすれば、平均年間リターン3.85%が実現しても驚きはないだろう。

投資は長期視点で見ることが重要

原資が多ければ多いほどお金を生み出すのは容易になる。これが資産運用の原理原則だ。複利運用の威力を改めて確認することは、個人投資家が自身の資産を運用する際に、多くの示唆を与えてくれる。

20世紀は米国が超大国として君臨した100年間であった。そして21世紀はアジアの世紀と言われている。今後100年がどのような時代になるかは分からないが、バフェット氏としては、これからも米国が世界経済の中心であり続けるということなのだろう。

この予言に対しては様々な意見があるだろうが、バフェット氏は「100年後にはNYダウ平均100万ドル」という言葉を通して、「投資は短期的ではなく長期的な視点で見ることが重要なのだ」と私たちに教えてくれているのかもしれない。(提供:大和ネクスト銀行


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