(本記事は、井上雅夫氏の著書『ビジネスの武器としての「ワイン」入門』日本実業出版社、2018年6月10日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

ビジネスの武器としての「ワイン」入門
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

【『ビジネスの武器としての「ワイン」入門』シリーズ】
(1)味だけではない「最高級ワイン」大統領も使うおもてなしの極意
(2)なぜワインはエグゼクティブの必須ツールになるのか?
(3)あなたには「1本10億円」のワインの価値が分かりますか?
(4)ギネスを更新した「これまでに売られた最も高価な白ワイン」の中身
(5)ワインの味は値段ではない 本物の「ワイン通」が見るポイントは?

ワインはエグゼクティブの「必須ツール」

ビジネスの武器としての「ワイン」入門
(画像=Olha Tsiplyar/Shutterstock.com)

ビジネスライクに、仕事の話だけで交渉成立。

必ずしもそうとばかりはいかないのが、ビジネス社会の現実です。

時には大切なビジネス相手を接待する必要も出てきます。なにもこれは日本だけの話ではなく、私が長年いた米国でも状況はさほど変わりません。

ただし米国の場合は、日本とは違い、昼に接待することが主流です。

これは家族との時間を大切にする米国人ならではといえますが、最大級のおもてなしをする場合には、顧客を配偶者同伴で自宅に招待します。

つまり家族ぐるみで関係性を深めようとするわけです。

このようなアットホームな雰囲気の中では、当然ながらビジネスの話はご法度です。

まずは共通の話題となり得る、目の前にあるワインと料理について、各人がリラックスしながら語り始めるのがよくあるパターンです。

ですから必然的に米国のエグゼクティブは、ワインを「ビジネスを制する必須ツール」とみなしているのです。

日本ではどうでしょうか?こんなデータがあります。

『日経BPムックビジネスパーソンのための教養大全』(日経BP社)に、高収入ビジネスパーソンが考える「身につけるべき教養ランキング」が掲載されています。

そこには「ワイン」が、数多くあるジャンルの中で14位にランキングされています。

ちなみに13位が「政治学」、15位が「心理学」となっています。7位には「外国文化への理解」がランキングされています。

「ワイン」も外国文化の一つだと捉えれば、教養として「ワイン」がいかに高い関心を集めているのかがわかります。

そして「身につけるべき教養」とあるように、ワインをただ飲んで楽しむだけのものではなく、「必須ツール」として捉えていることもわかります。

なぜなのでしょうか?

まず考えられることは、エグゼクティブになればなるほど、日本でもビジネスシーンで「ワインに遭遇する」機会が増えるということです。

「エグゼクティブ」――いわゆる管理職になれば、接待や仕事関係のパーティに出席する機会が増えてきます。

ホテルの立食パーティでは、給仕係が飲み物をトレイにのせてお客様に勧めて回ります。昔は水割りやビールがほとんどでしたが、現在はワインが主流です。

ひとたびワイングラスを手に取れば、その後しばらくはワイングラスを手に持つことになります。

ワイングラスを持っていると、いつワインの話題になってもおかしくありません。そこでワインを「ネタ」に話をどう展開できるかが、できるビジネスパーソンか否かの分かれ道です。

できるビジネスパーソンは、このワイン「ネタ」をスマートに調理して、ワインの話のみならず、歴史や文化、または芸術の分野にまで話を展開していきます。

前にも述べたようにワインは「話題作りの宝庫」です。

最初はワインに関心がなかったエグゼクティブも、ワインを「ネタ」に様々な話が展開されていく場に居合わせることで次第に感化され、「ワイン」に精通する必要性を感じるようになるわけです。

エグゼクティブがワインを必須ツールだと思うもう一つの理由。

それは、ワインが取り持つ「人脈構築力」にあります。

ワインの話で意気投合すると、まず「今度、ワインをご一緒しましょう」となります。

そして実際にワインバーなどで一緒に飲むこともありますが、多くの場合はプライベートな「ワイン会」に招待する、または招待されるということになります。

ワインを楽しむ醍醐味の一つは、複数のワインを「比較する」ことにあります。

しかし個人でそれを行うには予算や肝臓のことを考えると難しい。そこで各自がワインを一本ずつ持ち寄って複数のワインを比較し楽しむ、「ワイン会」なるものが開かれるのです。

「ワイン会」では、様々な分野の、そして様々なポジションの人たちと交流できます。時には仕事上ではお目にかかれない、あっと驚くような人と出会うこともあります。

「ワイン会」では相手が初対面でも問題ありません。

ワインという「簡単には語りつくせない」共通の話題を飲みながら語り合えば、誰とでもすぐに打ち解けられます。会を重ねるごとに「ワイン人脈」がどんどんと広がっていくことでしょう。

エグゼクティブは、この「人脈構築力」に注目します。

もちろん純粋にワインを楽しむことが一番の目的ではありますが、「エグゼクティブ」というもの、人脈構築には余念がありません。「ワイン会」を通じてきっちりと人脈を広げていくのです。

いかがでしたか?

エグゼクティブにとって、ワインは「必須ツール」なのです。

井上雅夫(いのうえまさお)
株式会社オリーブプロジェクトJAPAN代表取締役。醸造家、ワイナリーコンサルタント。ゴールデンゲート大学院・修了(MBA)。カリフォルニアワイナリー、Sycamore Creek Vineyards代表取締役&CEO。ワイン醸造家としても活躍し、2001年国際ワインコンクール(Monterey Wine Competition)にて赤ワイン部門グランプリ受賞。2005年帰国後、盛田甲州ワイナリー取締役営業本部長に就任。2007年カリフォルニアワイナリー、KENZO ESTATEの立ち上げ責任者のオファーを受けて、ワイナリーコンサルタントとして独立し再渡米。著書に『ワインづくりの心得を生かす部下を酸化させない育て方』(実務教育出版)がある。