(本記事は、玉川陽介氏の著書『勝ち続ける個人投資家のニュースの読み方』KADOKAWA、2015年8月18日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

投資で勝つ人は「ニュースの読み方」が違う

ニュースの読み方
(画像=LumineImages/Shutterstock.com)

じつは、情報源と分析手法はほぼ同じ

勝ち続ける個人投資家と、負けてばかりの個人投資家。

両者の違いは、いったい何なのでしょうか。

私の答えは、「ニュースの読み方」です。

逆にいえば、それ以外に両者の違いはほとんどないと言ってよいでしょう。

ある程度の知識水準を超えれば、個人投資家と機関投資家でさえ、違いはほとんどないというのが私の考えです。

これまでに数多くの機関投資家と交流をしてきましたが、彼らは金融機関に勤めているからといって、圧倒的に別次元の知識を持っているわけではないと思っています。

ところが世間では、成功している個人投資家や機関投資家に対して、マクロ経済の難解な専門知識を持っていたり、複雑で高度なチャート分析を行っていたりする人というイメージがあるようです。

私自身も、投資に関する書籍を出すようになってから、「数学がお得意なんですよね」とよく言われるのですが、実際は、中学校の数学の教科書に載っている問題しか解けません。

もちろん、微分・積分なんて、さっぱりわかりません。

学生時代から、理系科目があまり好きではなかったので、利回り計算やデリバティブ計算など、投資の現場で最低限必要な数学だけを仕方なく勉強しました。

じつは、勝ち続ける個人投資家と負けてばかりの個人投資家との間には、情報源や分析手法自体に、世間で思われているほど大きな違いはないのです。

あなたの投資判断に、「事実」は入っていますか?

「希望的観測」では勝てない

今でこそ、私は投資の運用益で安定して生計を立てることができていますが、投資を始めてしばらくは、勝ったり負けたりの不安定な投資成績でした。

私が初めて投資を行ったのは、1990年代後半の大学生のとき。手元の資金が少なかったので、大和証券のミニ株という数万円単位で取引できる口座を利用し、少額から投資を始めました。

すぐにITバブルが到来しましたが、上昇相場に乗るのが定石であることを知らず、もう高値を警戒していたため、まったく儲かりませんでした。

株価が上がったらすぐに売って小さく利益確定。

反対に、下がれば、そのうちすぐに戻ると勝手に思い込んで、ナンピン買いや逆張りをして大きく傷つくという、初心者にありがちな負けパターンを繰り返していました。

ニュースもほとんどチェックせず、適当に銘柄を選んで買って、チャートの動きだけで売買をしていました。

その結果、本格的に株をやり始めた時期がITバブル崩壊のときと重なっていたので、学生ながらに数百万円負けました。

学生時代に起こした会社の売却益で投資資金を大きく増やした後も、サブプライム危機などで、1日で1千万円単位、半年で1億円単位の資金を失ったこともあります。

かつての私と同様、安定的に勝てない個人投資家の多くは、チャートだけを見て日経平均や為替を予想します。

また、自分の建てたポジションに利益が出ることを祈って、希望的観測で適当な価格目標を設定しているのです。

予想すること自体は、決して間違いではありません。

ただし、投資で勝ち続けるためには、何らかの「事実」に基づいて予想を行う必要があります。

そして、その事実は、「ニュース」の中にあるのです。

日経新聞を読む必要はない

負けが続く投資家に欠けている視点

個人投資家の方に、「普段どんな媒体をチェックしていますか?」と尋ねると、多くの人が「日本経済新聞」と答えます。合わせて、ビジネス誌を数誌購読しているという人もいるでしょう。

私は、日経新聞をほとんど読みません。

代わりにチェックしているのは、主にロイターやブルームバーグといった海外通信社がウェブ上で配信しているニュースです。

株、為替、債券の投資を行う場合、これらに出ている市場データ以外に、私が必要だと考えている情報はほとんどありません。

負けが続いてしまう個人投資家には、共通点があります。

それは、日本経済の枠組みの中だけでしか物事を見ていないということ。日本経済を理解すること自体は、もちろん大切です。

ただし、日本経済も世界経済の中の1つとして捉える必要があるのです。

「経済のグローバル化」といわれるようになってから、世界のどこで起きる事件といえども、私たちの投資に関係のないものはなくなりました。

むしろ、国内の経済動向よりも海外の出来事のほうが、日本市場により大きな影響を与えているといっても過言ではありません。

そのため、日本国内の視点だけで市場を見ていると、投資判断を誤ることが多くなるのです。

たとえば、当初、日本とは関係ないと思われていたサブプライム・ローン問題が、日本を含め、世界の金融市場を揺るがす大事件に発展したことはご存じの通りです。

また、近年では、世界のどこかで悪い事件が発生したときはリスクオフで世界のさまざまな資産が売られ、逆に楽観ムードが強まったときにはリスクオンで資産が買われるという二極化の動きも見られます。

日本株や円相場も例外ではなく、海外情勢が日本市場へ大きな影響を与えているのは紛れもない事実なのです。

投資で勝ちたいのであれば、「世界の視点から、金融市場のマネーの流れをつかむこと」に何よりも力を注ぐ必要があるのです。

ニュースの読み方
玉川陽介(たまがわようすけ)
コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ株式会社代表取締役。1978年神奈川県生まれ。学習院大学卒。大学在学中に、統計データ分析受託の会社を創業。同社を順調に拡大させた後、2006年に売却。『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』などの経済誌で執筆。『不動産投資1年目の教科書』(東洋経済新報社)、『インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社)など、すべての著書が増刷を重ねており、個人投資家からプロ投資家まで幅広く支持されている。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます