(本記事は、玉川陽介氏の著書『勝ち続ける個人投資家のニュースの読み方』KADOKAWA、2015年8月18日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

米国全体の景気を「個人消費」から占う

ニュースの読み方
(画像=Luna Vandoorne/Shutterstock.com)

冬の経済風物詩ブラックフライデーの見どころ

毎年11月末になると、「ブラックフライデーの米オンライン販売、前年比18.9%増」(2014年11月30日付ブルームバーグ)など「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」という言葉がニュースの見出しになることが増えます。

日本では聞き慣れない言葉ですが、勝ち続ける投資家は、これらのニュースに注目しています。

理由は、米国経済を動かす最大の原動力は、GDPの7割を占める個人消費だからです。そして、その個人消費が1年で最も活発になる時期がブラックフライデーなのです。

日本国内のニュース映像でも、米スーパーマーケット大手のウォルマート店内を背景にして個人消費について説明している場面に見覚えがある人もいるのではないでしょうか。

ウォルマートは、テレビ、家具のような大型商品からバーベキューグリル、菓子まで「Everyday Low Price」で一般家庭向け商品を数多く取りそろえた巨大チェーンです。

米国人なら必ず一度は買い物をしたことがあるウォルマートは、米国個人消費の代名詞ともなっています。

セールを目当てに押しかけた群衆がもみ合いとなり、死亡事故が起きたこともあるほどブラックフライデー当日の店内は混み合います。

そして、その売れ行きから米国景気全体、またトイザらスなど小売業の業績を占うというわけです。

さて、ブラックフライデーから米国の個人消費を占うとして、それは市場とどのようにつながっているのでしょうか。

米国個人消費はGDPへの影響が大きく、景気動向や株価の裏づけとなるファンダメンタル(経済の基礎的条件)です。

そして数ある統計の中でも、GDPは経済統計の雄ともいえる最も重要な指標です。GDPが減少を続ける状況は、リセッションともいわれます。

実体経済に元気がある状態なのか、もしくはリセッション入りを心配しているのかは、当然、株価や為替にも反映されるはずです。

米国GDPの報道があれば必ずチェックし、その発表値により、どれだけ為替が動いたかをチェックしましょう。

為替が大きく動くのは、市場が統計値に対して何らかのサプライズを感じたことの証拠なのです。

近年では、実店舗のセールが始まるブラックフライデーよりも、その翌週に始まるネット上での歳末セール、サイバーマンデーが注目度を増しています。

それは歳末商戦の売上は、実店舗よりもアマゾンやイーベイなどネット上の店舗で伸びているためです。

金融市場では絶対額の大きさが重要ですが、企業の成長性を占うという意味では、伸び率も非常に重視されています。成長性は、株価に直結するためです。

消費は美徳の米国感覚を理解するこのニュースをチェックする際に、おさえておきたいポイントがあります。日本と同じ感覚で米国の消費を見ては、情報が正しく伝わってきません。

米国人の消費性向は、日本人とは異なるのです。

日米の消費性向で最大の違いは、米国人は借金をしてモノを買うことに抵抗が少ないことでしょう。

それには、米国では社会システム的にも給与以上にお金を使いやすい仕組みが整っていることも関係しています。

まず、クレジットカードの使えない場所が非常に少なく、マクドナルドから学校まで、日本では使えないような場所でも使えるため、多くの人がカードで支払います。

そして、その支払い方法は日本人から見ると驚きの仕組みになっています。

日本のクレジットカードは翌月一括払いが基本ですが、米国ではリボ払いが当たり前です。

リボ払いとは、月額の支払いを最低限に抑えた「あるとき払い」の返済法ですが、翌月以降に繰り越す残高に対しては15%程度の金利がかかります。

しかし、多くの利用者は、高い金利負担をあまり気にかけていないようです。

それには、サブプライム層といわれる人たちのように、教育水準や金融リテラシーが高くない人も多いという、米国特有の人口分布も関係しているといえるでしょう。

知識、資産の両面で、米国は日本よりもはるかに格差社会なのです。

さらに、自宅の価値が住宅ローン残債よりも多ければ、その空き枠を担保にしてお金を借りるホームエクイティ・ローンというシステムも手軽に使えます。

一方、日本では、バブル期の反省から、そのような資産価値に着目したお金の貸し方はあまり行いません。

それに加えて、米国には、使用済みでも受け付ける返品規定、ギフトとしてもらった商品ですらも返品できるギフトレシートと呼ばれるシステムなど、「とりあえず買う」ことを誘う仕組みがたくさんあります。

私自身も、米国滞在中にBoseR のスピーカーが使用後でも返品できるという広告を見て、返品するつもりで買ったことがありました

が、結局、そのまま使い続けてしまいました。

このように、借りやすく、使いやすい環境も手伝い、貯蓄をせずに消費に回す国民性だと理解されているのが米国人なのです。

このような社会システムや考え方の違いも考慮して、米国の個人消費を見ていく必要があるでしょう。

ニュースの読み方
玉川陽介(たまがわようすけ)
コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ株式会社代表取締役。1978年神奈川県生まれ。学習院大学卒。大学在学中に、統計データ分析受託の会社を創業。同社を順調に拡大させた後、2006年に売却。『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』などの経済誌で執筆。『不動産投資1年目の教科書』(東洋経済新報社)、『インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社)など、すべての著書が増刷を重ねており、個人投資家からプロ投資家まで幅広く支持されている。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます