(本記事は、玉川陽介氏の著書『勝ち続ける個人投資家のニュースの読み方』KADOKAWA、2015年8月18日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
「IT産業のニュース」を読み解くコツ
アップルブームはいつまで続くのか
近年、米国の株式市場で最も注目されており、ニュースでも取り上げられることが多い銘柄は、ご存じアップル株です。
2000年のITバブル以降、証券市場でもIT産業の話題は増えました。
当初は、Windowsで市場を席巻したマイクロソフトがITの花形でしたが、ネット時代にはグーグル、モバイル時代にはアップルというように、わずか年の間にITの主役は転々と移り変わっています。
このように変化が早く、栄枯盛衰が激しいのはIT業界の特徴です。
2015年、アップルはダウ工業株30種に組み入れられ、米国を代表する企業として確固たる地位を築きました。
市場では、アップルが今後も次々と魔法のような製品を発表し、収益を高め、株価を上げていくのか、iPhoneブームがひと段落つくのかに注目が集まっています。
IT業界に新しいルール・チェンジが生まれた際には、アップル・バブル崩壊としてアップル株が大きく売られる可能性もあるでしょう。
多くのプロ投資家(アクティブファンドなど)もそのように考えたようで、運用成績がS&P500を下回ったファンドの敗因を分析すると、アップル株を組み入れていなかったことにたどり着くことが多くあります。
結果的にそれは誤った投資判断でしたが、市場に精通した投資家はアップル株の割高感を警戒しているのかもしれません。
IT産業のトレンド変化から市場の先を予想
アップルのようなIT産業のニュースを理解するコツをいくつか紹介したいと思います。
IT産業の全体像を把握するには、最終製品だけでなく、それを作るのにほかにどのような企業が関わっているのかを知ることが重要です。
中には、IT業界の人にすら知られていないにもかかわらず、金融市場では有名なIT企業もあります。
そのような観点で、今証券市場で注目されている、世界的なスマホ周辺企業をいくつか紹介します。
最注目は、iPhoneをはじめ世界の半導体の半分を受託生産している台湾TSMC社です。
現在では、パソコン用CPU大手のインテルと拮抗する技術力を持つまでに急成長し、無視することのできない半導体業界の巨人となりました。
電子機器の製造受託では、世界最大手の台湾フォックスコン(ホンハイ)も知っておくべきでしょう。
世界の電子機器の多くは、同社で組み立てられています。
しかし、従業員の低給与や残業など過酷な労働環境がクローズアップされ、台湾での評判はあまりよくないようです。
そして、アップル製品の頭脳ともいえるCPUのロジックは、英ARM社が提供しています。
これらの企業は、一般にあまり名前は知られていませんが、スマホ業界の影の主役たちです。
スマホ市場やiPhoneの成長と合わせて業績が上がるため、アップルのニュースに並んで名前が挙がることの多い企業でもあります。
アップルの部品供給に関わるこれらの企業を見れば、かつては、日本のお家芸といわれたエレクトロニクス産業も、今はアジア勢が主役となっていることが読み取れると思います。
iPhoneの中身は日本製が多いという話をよく耳にしますが、じつは、日本製で重要なパーツは少なく、重要な部品は、いまやその多くが台湾で製造されているのです。
これは日本のエレクトロニクス業界における最大の問題だといえるでしょう。
このように、お金の流れとIT産業のトレンドを同時に把握することは、業界再編や主役交代など、投資リターンに直結する変化を予想するためにも非常に重要です。
ニュースになるよりも早く、自分自身のリサーチで次なるアップル株やTSMC株を探してみましょう。
そこには思いがけない大きなリターンが約束されているはずです。