“事業”が向き合う社会課題の現在と未来

伊藤達也(衆議院議員)×こうだけいこ(株式会社AsMama代表取締役)×加戸慎太郎(株式会社まちづくり松山代表取締役)×亀井善太郎(PHP総研主席研究員)

社会をよりよいものにする力はどこにあるのか、それは誰が担うのか、PHP総研は、そのありかを明らかにし、さらにそうした力を大きくしていくため、「変える力」や「変える人」という形で世に問うてきた。

社会課題の解決を事業の形で行うのは、企業の本来あるべき姿だが、まちづくり、高齢者生活支援、子育て支援、農業、観光、地域産業、復興支援、人づくりといった、一見、ビジネスとして成り立ちそうもないところに事業を立ち上げ、仕事を産み出してきた人たちがいる。

「社会的事業」と呼ばれる、こうした活動に、自由民主党の政務調査会に設置された社会的事業に関する特命委員会が着目し、具体的な政策提言に至るという動きがあった。

「変える力」特集No.42では、「社会的事業」に取り組む二人の若い起業家、株式会社AsMamaのこうだけいこ代表、株式会社まちづくり松山の加戸慎太郎社長、さらには、自民党社会的事業に関する特命委員長の伊藤達也衆議院議員、政策シンクタンクPHP総研の亀井善太郎主席研究員が、これからの社会のあり方、担い手像について、話し合った。

「みんなで支え合い、地域が自立して、持続可能な社会をつくる」がスタート

変える力,大きな社会
(画像=PHP総研)

亀井 先般、自由民主党の政務調査会において、「社会的事業に関する特命委員会」という、ちょっと耳慣れない委員会が設置されました。これまでの自民党からすると、あまり見たことのない、他党に先行されがちな分野です。これを伊藤さんが主導され、実際に具体的な成果物という形で提言も出されました。

この動きについて、その意義、背景、プロセス、政治的なインパクト等について、伊藤さんに伺います。

伊藤 まず、社会的事業に関する特命委員会の提言に注目して頂いたことに感謝申し上げます。委員会を立ち上げたきっかけは「地方創生」にあります。「地方創生」とは、地域が自立し、みんなで支え合いながら、持続可能な地域社会をつくり上げていこうというもです。「地方創生」に対して、一部にバラマキとの批判がありますが、それは誤解です。国の補助金ありきで、それが切れると事業が続かない、自立性が確保されない、カンフル剤的な「地域活性化」とは、基本的な考え方が全く異なります。従来の発想の延長線上にあるものではないと理解いただく必要があります。

地方創生では、地域の自立性を確立するため、それぞれの地域に必ずある価値を見出し、また、経営的な視点を持って、地域の中の好循環をつくり出す工夫や仕組みを作り上げられるよう、社会を変えていこうとする取り組みです。それぞれの地域で人々が守ってきた伝統、文化、暮らしに、新しい知恵や工夫を入れることであり、次世代につなぐべきものを守り、育てていこうという保守の理念もそこにあるのです。

地方創生担当大臣の補佐官として、そうした現場を歩く中、今日のお二人のように、私より若い世代の方たちが、地域社会が抱える課題を見い出し、これを解決し、よりよい社会をつくろうと、情熱を持って取り組む姿に、大いに感銘を受けました。

こうした取組みは「社会的事業」と呼ばれます。行政には手が届かない、解決できない等、非常に広い分野でのチャレンジがあります。まちづくり、高齢者の生活支援、子育て支援、農業、観光、地域産業、復興支援、人づくり、こうした多岐にわたる分野での取り組みがあります。

こうした取り組みをもっと日本社会に普及させることができれば、地方創生を引っ張るエンジンにもなりますし、また、将来の新たな可能性を引き出すことにつながっていくのではないか。そんな思いを胸に、補佐官を卒業して党に戻り、党の中で本格的に「社会的事業」を普及していく取り組みをしたいということで、この委員会を立ち上げました。

委員会では、今日ご一緒しているお二人をはじめ、ソーシャルベンチャーの24名のリーダーの方々にお出でいただき、お話をお伺いし、みんなで議論しました。

その際、もっとも強く感じたのは「同志性」です。社会的事業家の方々も私ども政治家も、フィールドや立場は違えど、社会の役に立ちたいという同じ志を持っています。委員会に参加する自民党議員たちも、そうした自らの原点を大いに刺激されました。これまで、政治とは、国民の皆さんからの陳情を聞き、それを政策にして解決していくという、お願いする/されるといった関係でしたが、そうではなく、一緒に同じ作業をしていく、共に歩んでいくという思いを強くしています。

委員会では、社会的事業の潜在的なニーズと社会的なインパクトの大きさ、若い担い手世代の意識などの変化といった追い風を認識する一方、社会一般における「社会的事業」に対する認知度の低さ、能力の高い人材や資金の必要性等の課題を明確にし、それを乗り越えていく方策を考え、現場で活躍する方々と一緒に、事業の拡大と、日本の新しい可能性、社会の変革というものを実現していきたいとの共通認識をベースに、以下の四つの視点からなる提言をまとめました。

・社会的事業の認知の推進
・社会的事業に対する投資の拡大
・社会的事業を担う人材の確保と育成
・社会的事業の推進を損なう規制に対する柔軟性の確保

提言の詳細はこちら:https://www.jimin.jp/news/policy/135019.html