子育てが仕事のスタイルを変えてくれた
雲林院氏が第1子を出産したのは、シルキースタイルの経営が安定し始めた時期だった。
「精神的に余裕がないと、子供を持とうという気持ちにならないんでしょうね。周りの女性たちを見ても、そうだと思います。
余裕ができたとはいえ、私が子育てをしていると、会社がストップしてしまうのではないかという怖さは感じていました。病室は個室にして、マーケティングなどの本やパソコンを持ち込んで仕事をしていましたね。看護師さんに『産む気ないでしょ』と言われたくらいです(笑)。産んだ翌日には、もう仕事の電話をかけていました」
こうした、いわば「モーレツ」な仕事のスタイルは、子育てが始まると、変わっていったという。
「私は、忙しいのが好きというか、忙しいと充実している感覚がするんです。とはいえ、子育てをしながら仕事をするようになると、どうしても効率良く仕事をしなければなりません。
そこで、人に仕事を割り振るようになりました。思えば、それまでの私は、プレーヤーであって、マネジメントをしていなかったんですね。
仕事を他の人に任せると、自分の仕事が取られるような気がする女性は多いと思います。例えば営業職だったら、『この売上げは自分が作っているんだ』という意識が強いので、それを他の人に渡したくない。私も、そういう考え方でした。
でも、自分の数字が下がることになっても、人に任せることでチーム全体の数字が上がるなら、そのほうがいいじゃないですか。子育てをしながら仕事をすることで、そう考えられるようになりました。
もちろん、初めは期待した通りの仕事をしてくれないこともありますし、手もかかります。それでも、長期的に見れば、人に任せたほうがいい。任せる勇気を持つべきだと思います」
この考え方は、子育てでも同じだという。
「今、上の子が5歳、下の子が3歳なのですが、今朝は3歳の子が目玉焼きを作ってくれました。『3歳の子に目玉焼きを作れるわけがない』と思うのが普通かもしれませんが、そう思っているのは親だけで、任せてみるとできるものです。
ゴミ捨てに行くのも、『冒険だよ』と言うと、楽しんでやってくれます。2人とも男の子だからかもしれませんが(笑)。
マネージャーがプレーヤーになってしまうのは、『部下にはできない』という意識もあるからではないでしょうか。子供と同じというと語弊があるかもしれませんが、『できない』と思っているのは上司だけで、任せてみるとできるものです」
ただし、社員を育てるうえでは、個々人の性格をよく見て、任せ方を工夫することが重要だ。
「一つの業務に集中したい人もいれば、色々な業務をしてみたいという人もいます。面談をしたり、時には一緒にご飯に行ったりして、そうした性格や適性を、一人ひとり把握するようにしています。
そして、例えば、色々な業務をしてみたいという社員には、事前に説明をしたうえで、様々な商談に同席してもらい、フィードバックをする、ということをしています。
上から目線で厳しく接して、社員を引っ張っていくのではなく、下から支えるタイプのリーダーシップですね。時には厳しさも必要ですが、社員に女性が多いということもあって、そのほうが良いと思っています」