今回は、毎月分配型投信の分配の仕組みを理解する上で欠かせない特別分配金について、2つのポイントに分けて解説します。

【ポイント1】 特別分配金は利益以外から支払われる

投資信託,トウシル
(画像=トウシル)

投資信託の分配金は、最低でも年1回行われる決算の内容に応じて運用資産の中から捻出されます。企業決算と同様、発生した収益の一部を投資家に配当金として還元するのは自然な流れと言えます。投資信託では、この収益の還元部分を普通分配金と呼びます。また、運用期間中に収益が発生しない場合でも、特別分配金、あるいは元本払戻金として分配を行うことがあります。収益の還元である普通分配金は都度課税されますが(NISA口座を除く)、特別分配金は元本の払戻しとみなされ、非課税扱いになります。

前回の本コラムでも解説しましたが、一般的な追加型株式投資信託は基準価額が1万円を割り込んでいても、また、利益が出ていなくても分配を行うことが認められています。確かに、ファンドに組み入れられている株式や債券が値下がりし続けているにも関わらず、身を削って分配を継続するという行為は、決算を経て収益の一部を還元するという本来の姿からかけ離れています。では、特別分配金は本当に悪いものなのでしょうか。

【ポイント2】 特別分配金は平等性を保つための仕組み

特別分配金は、不特定多数の投資家から幅広く資金を集めて運用を行う投資信託にとって欠かせない項目です。「グローバル・ソブリン・オープン」(以下グロソブ)を例にとって見てみましょう。

そもそも「グロソブ」を含む追加型株式投信は、「いつでも」「誰でも」購入が可能です。「グロソブ」の場合、10年前から保有している投資家でも、決算日のわずか数日前に購入した投資家でも、受け取れる分配金の額は毎月20円(2014年5月時点)で一律です。決算日の数日前に投じられた資金が短期間で十分な収益をあげることは考えにくいですが、新たに資金を投じた投資家も既存の投資家と同じ権利を得られるというのが投資信託の分配の仕組みです。このように、金額も投資開始時期も異なる資金を1つにまとめて運用するとなると、収益の分配についてはどうしても不公平が生じてしまいます。こうした問題を解消するため、平成12年の税制改正で特別分配金という項目が誕生しました。

決算日の直前に資金を投じた投資家は、短期間でよほど基準価額の大きな上昇がない限り、受け取った分配金の幾分かが特別分配金、つまり、元本の払い戻しとなっている可能性が高いと言えます。自分が受け取った分配金が普通分配であったか特別分配であったかは、決算後に販売会社から発行される報告書で確認することができます。

図1
(画像=トウシル)

篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行で資産運用関連業務に従事後、ロイター傘下の投信評価機関リッパーで市場分析担当、ファンドアナリストとして活躍。2013年より現職。

(提供=トウシル

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