相続対策で失敗するヒト、成功するヒト
富裕層の相続・事業承継における資産の残し方を相続・事業承継の専門家に聞いていく特集第2回では、税制改正を受けて今後注意したい節税対策について、K’sプライベートコンサルティング代表取締役で公認会計士、税理士、中業企業診断士の金井義家氏にお話を聞いた。(聞き手:押田裕太)※本インタビューは2018年11月16日に実施されました
目次
近年の税制改正の影響について
――おさらいの意味で、2015年1月からの税制改正のポイントと富裕層への影響について教えてください。
2015年1月から始まった税制改正で相続税の納税義務者は2倍に増加し、従来であれば相続税を納める必要がなかった方も納める必要が出てきたため、大きく関心が高まりました。2015年からの税制改正のポイントは大きく分けて2つあります。1つが「基礎控除の引き下げ」、もう1つが「税率の引き上げ」です。
●基礎控除の引き下げの影響
基礎控除とは相続税の非課税枠のようなものと考えてください。
2014年12月31日以前の基礎控除は5000万円に「法定相続人の数×1000万円」を加算した金額と定められていました。配偶者と子供2人の場合には、「5000万円+(3人×1000万円)=8000万円」ということになります。ザックリとしたイメージで言うと、被相続人が亡くなった時点で有していた相続財産の時価が8000万円を超える部分だけに相続税がかかり、8000万円を超えなければ相続税はかからなかったのです。そしてこの基礎控除以上の相続財産があり、その相続人が相続税を納める必要がある人は100人中4人、言うなれば上位4%の富裕層だけでした。ところが2015年1月以後は、この基礎控除が従来の6割しか認められなくなったのです。先程の例で計算すると、「3000万円+(3人×600万円)=4800万円」になるというわけです。
仮に被相続人の相続財産の時価が1億円あったとして、2014年12月31日以前に亡くなったのであれば、「1億円-8000万円(基礎控除)=2000万円」に対して相続税がかかったものが、2015年1月1日以後に亡くなると「1億円-4800万円(基礎控除)=5200万円」に対して相続税がかかるため、相続税が増加するということになります。またこの税制改正により、例えば被相続人の相続財産の時価が6000万円の場合、2014年12月31日以前に亡くなった場合は「6000万円-8000万円(基礎控除)<0円」であるため相続税がかからなかったのに、2015年1月1日以後に亡くなった場合は「6000万円-5200万円(基礎控除)=800万円」に相続税がかかるということになります。このようにして相続税を納めなくてはならない人の頭数も増加し、2015年1月1日以後は100人中8名、言うなれば上位8%の富裕層が相続税の対象になったというわけです。
●税率の引き上げの影響
もうひとつが「税率の引き上げ」です。最高税率は50%から55%に引き上げられ、税率の段階は6段階から8段階に変わりました。この改正によっても一部に相続税負担が増える富裕層の人が出てきました。
富裕層が資産を減らす典型的なケース。相続・事業承継対策の典型的な失敗
――増税により負担が増していると。実際にはどういったケースで富裕層は苦しむのでしょうか?