今日は、第3回「日本株の投資魅力高まる」です。

トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争が、世界景気に冷や水?

資産形成,トウシル
(画像=トウシル)

「世界まるごと好景気!」と言っていいくらいの好景気が続いてきましたが、足元、やや減速の兆しも出ています。トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争が、世界景気に悪影響を及ぼす可能性が出ています。

トランプ大統領が過激な保護主義策を打ち出しても、これまで、そのまま実行するとは思われませんでした。「極端なことを言うのは交渉のテクニックで、最後は現実的な落としどころを見つけて収束させる」と、楽観論がありました。

ところが最近、これまでの楽観論が吹き飛ぶくらい、派手な強硬策をトランプ大統領が次々に出してきています。貿易戦争が発端の「トランプ・リセッション(トランプ不況)」が起こってしまう不安もあります。

こうした不透明感に敏感に反応するのは、設備投資です。中国では、設備投資が盛り上がっていますが、不透明感を懸念して投資を先送りする動きが一部にあります。中国政府は、公共投資を積み増しして景気を支えることを示唆していますが、どのくらいの規模の景気刺激を行うか、わかりません。

日本株は乱高下しながら上昇トレンドをたどると予想

世界を見渡すと、リスクだらけです。不安は、貿易戦争だけではありません。FRB(米連邦準備制度理事会)が、利上げ加速を示唆していることもリスクです。日経平均は、円安を好感して堅調ですが、いつ足元をすくわれないとも限らない状況です。

ただし、今、述べたのは、短期的な見通しです。長期では、私は、日本株に強気です。過去30年の構造改革を経て、日本企業は、財務内容・収益力・ビジネスモデルで見て、高く評価できるようになったと考えているからです。

日経平均は、短期的に下落しても、長期的には上昇トレンドが続き、早ければ2年後、遅ければ4年後に3万円に達すると予想しています。

1987年から2013年まで、私は日本株のファンドマネージャーとして、投資信託や年金の運用を担当していましたが、2002年まで、日本株は「常に割高」と感じていました。短期的に上昇しても、長期的には下がると考えていました。

私は今、日本株に、まったく逆のイメージを持っています。短期的に下落しても、長期的には上昇が続くと考えています。日本株の投資魅力が、当時より、はるかに高くなったからです。日経平均インデックスファンドに積み立てでコツコツと投資を継続していくことが、長期的な資産形成に貢献すると、考えています。

日本株の未来に「強気」、6つの理由

日経平均は今、約26年ぶりの高値にあります。日経平均の水準は同じでも、以下6つの点で、26年前より、投資魅力は格段に高くなっています。 (1)日本株は「割安」、(2)財務優良、(3)内需産業が海外で成長、(4)円高抵抗力、(5)AI・IoT・ロボットで成長、(6)戦略的M&A広がる

(1)日本株は「割安」と判断

PER(株価収益率)で見ると、バブル期(1980~90年代)の日本株は50~60倍台と、きわめて割高でした。今、東証一部の平均PERは、約15倍まで低下し、割安と判断しています。世界的に見ると、株価指数の平均PERは、12~20倍に分布しています。日本株は、国際比較でも、割安と言えます。

東証一部の平均PER(年代別ざっくり)

PER
(画像=楽天証券経済研究所が作成)

日本株は、配当利回りで見ても魅力的です。26年前、長期金利(10年国債利回り)が5%の時、東証一部の平均配当利回りは1%もありませんでした。当時、長期国債が割安で、日本株は割高でした。今、長期金利はゼロになりましたが、東証一部の平均配当利回りは、2.1%まで上昇しています。今、長期国債に投資価値はありませんが、日本株は、割安です。

東証一部の平均配当利回りと長期金利(新発10年国債利回り)推移:1993年5月~2018年7月

図表2
(画像=楽天証券経済研究所が作成)

私が、日本株に長期的に強気である最大の理由は、日本株が「割安」であることです。東証一部の予想PERは、約15倍まで下がりました。私が日本株のファンドマネージャーをやっていたバブル期(1980~90年代)の平均PERは40~60倍と、きわめて割高でした。2000年代に入っても、20~40倍と割高でした。しかし、アベノミクスが始まった2013年以降、東証一部の平均PERは一貫して低下し、ついに割安になりました。

PERが下がり続けてきたということは、1株当たり利益の上昇率よりも、株価上昇率の方が低かったことを意味します。政治や経済の不安がいつもつきまとっていたため、企業の利益が増えても、日本株はそれを十分に反映して上昇してこなかったと言えます。

世界的に見ると、株価指数の平均PERは、12~20倍に分布しています。日本株は、国際比較でも、やや割安と言えます。

(2)財務内容が格段に改善、株主還元が充実

26年前、日本企業は、多額の借金を抱えていました。不動産バブル崩壊の影響で、金融業・不動産業・建設業には、巨額の不良資産がありました。その後、日本企業は、生き残りをかけて必死に借金返済に努めました。不良資産の処理も進みました。

現在、日本の上場企業の財務内容は格段に改善しました。財務余力が増したことで、株主への利益配分(増配や自社株買い)を積極化しつつあります。日本株の平均配当利回りは現在約2%あり魅力的ですが、今後、さらなる増配が期待されます。

(3)内需産業が、海外で成長する時代に

26年前、内需株に投資魅力はほとんど感じられませんでした。人口が減少していく日本の内需産業に未来はないと感じていたからです。今は、まったく逆の気持ちを持っています。

小売り・サービス・食品・化粧品・陸運・金融など、かつての純粋な内需産業で、海外で収益を拡大する企業が増えています。「元」内需株に、投資したい銘柄が増えています。世界一厳しいと言われる日本の消費者に鍛えられた日本の消費関連企業は、品質やサービスで、アジアで高い競争力を有しています。

(4)AI・IoT・ロボットなどの分野で成長企業が増加

年々、ITを活用して、新たなサービスを創造し、成長する企業が増えています。AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・ロボットなどの分野でも、成長が期待できる企業が増えています。

(5)海外生産が定着、円高抵抗力高まる

26年前の輸出企業は、日本の工場で生産して輸出するのが、中心でした。今は、海外生産・海外販売が普通になりました。1ドル100円でも利益を出していける力があります。

(6)戦略的M&Aが広がる

バブル期の日本は、同じ産業に多数のプレイヤーがひしめき、慢性的な過当競争状態でした。1998~2005年に、戦前から競合してきた名門企業が、生き残りをかけて、次々と合併し、業界再編が進みました。

近年は、日本企業が次々と、海外で大型買収を仕掛けています。M&Aが日本企業の新たな成長の切り札となりつつあります。

いいタイミングで株を買うにはどうしたら良いか?

日本株は、長期的に有望ですが、短期的には下値不安があります。それでは、いつ買ったら良いのでしょう。短期的な相場を予測して当てるのは至難の業です。

いいタイミングで売買しようとする思いが強すぎると、かえって高値づかみ、安値売りとなりやすいので、注意が必要です。世の中が明るく、みんなが強気になるときは、売り場であることが多く、世の中が暗く、みんなが弱気になるときが買い場であることが多いので、素直な人ほど、株の売買タイミングに失敗しやすいと言えます。

これから資産形成を始める方におすすめは、毎月一定金額を投資していく「積み立て投資」です。

退職金などで、一定額のまとまった投資資金が入った方は、すぐに投資を始められますが、ある程度の時間分散はした方が良いと思います。5分の1ずつ5回に分けて買っていくのでも良いでしょう。大切なことは、「分散投資」です。日本株だけでなく、J-REIT(ジェイ・リート)へ分散投資することが大切です。外国株や外国債券へも分散投資するべきです。

窪田 真之(くぼた まさゆき)
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト
1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。住友銀行、住銀バンカース投資顧問、大和住銀投信投資顧問を経て2014年より現職。日本株ファンドマネージャー歴25年、1000億円以上の大規模運用で好実績をあげたスペシャリスト。

(提供=トウシル

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