前回は投資信託の保有に際して覚えておくべき3種類のコストをご紹介しましたが、今回はこの中でも特に質問が多い信託報酬について、もう少し詳しく解説します。
近年は、投資信託の運用手法の複雑化と、投資対象資産の多様化が進んだことで、目論見書上に記載されている名目(確実にかかる)信託報酬率と実際にかかった信託報酬にかい離が生じるケースが増えました。実際に運用を行ってみないと具体的な金額が判明しないコストには、以下の2つのパターンがあります。
ケース1: ファンド・オブ・ファンズ形式で運用する投資信託
いわゆる通貨選択型などに多いファンド・オブ・ファンズ形式の投資信託の場合、その投信が投資しているファンドの信託報酬を組み入れ割合に応じて足し合わせた数値が「実質的な信託報酬率」(実質信託報酬)として別途目論見書などに明記されています。投資先ファンドの組入比率は今後変更される可能性があることから、「実質的な信託報酬率」はあくまでも概算値に過ぎず、確定値ではないことに留意する必要があります。
ケース2: 「隠れコスト」が存在する投資信託
もう1つ、決算期ごとに変動する「隠れコスト」の存在も忘れてはいけません。「隠れコスト」の具体的な項目としては、組入れ株式の売買委託手数料、有価証券取引税、監査費用、保管費用などがあります。例えば、組入れ銘柄の売買回転率が高いファンドは売買委託手数料が高く、新興国に投資するファンドなどは保管費用が高くなる傾向があります。これらのコストは全て決算後に運用会社が作成する運用報告書に実額で記載されていますので、確認してみましょう。
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篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行で資産運用関連業務に従事後、ロイター傘下の投信評価機関リッパーで市場分析担当、ファンドアナリストとして活躍。2013年より現職。
(提供=トウシル)
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