投資信託の「サイズ」、あるいは規模を表す数値として、純資産残高というものがあります。投資信託の運用成績とは何の関係もなさそうに見えますが、両者は密接に関係しており、また、純資産残高は投資信託を選ぶ際の目安として重要な意味を持ちます。
大きすぎても小さすぎてもダメ!
純資産残高は、投資信託を運用する委託会社が以下の3つのステップに従って毎営業日算出しています。
・投資信託に組入れられている株式や債券を時価評価する。
・1に債券の利息や株式の配当金などの収入を足す。
・2から、ファンドの運用に必要なコストを差し引く。
運用成績が良好で投資家からの人気も高ければ、残高は積み上がります。一方、運用成績が良くても恒常的な資金流出に見舞われていたり、人気が高くても運用成績が振るわなかったりという場合、残高は減少します。
とはいえ、残高の規模は大きければ大きいほど良いというわけではありません。特に株式に投資を行うファンドの場合、あまりに残高が大きくなり、受益者(投信の保有者)が増えすぎてしまうと、機動的な運用を行えなくなる可能性が出てきます。反対に残高が小さすぎてもコスト効率が悪くなり、運用に支障をきたします。一般的に純資産残高が10億円を割り込むと、運用会社によっては繰上償還(強制的に投信の運用を終了する)に踏み切るケースもあるので注意が必要です。
こんな投信は要注意
株式市場の調整などで純資産残高が一時的に減少するというのはよくあることです。しかし、数カ月、数年間に渡って残高が減少し続けているようなファンドは注意深く見る必要があります。恒常的に残高が減少しているファンドは、投資家による解約が相次いでいる可能性が極めて高いと言えます。解約請求に対応するため、運用会社にはある程度の現金を手元に用意する必要が生じ、満足な運用を行えなくなることがあるのです。
篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行で資産運用関連業務に従事後、ロイター傘下の投信評価機関リッパーで市場分析担当、ファンドアナリストとして活躍。2013年より現職。
(提供=トウシル)
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