(本記事は、Nami Barden氏、河合克仁氏の著書『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』すばる舎、2018年12月13日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
「今を生きる」とは、どういうことなのか
●苦悩の状態では、過去や未来に考えが飛んでしまう
苦悩の心の状態のときに起きる特徴は大きく2つで、1つは「自分中心の意識状態」。そしてもう1つの特徴は、「今を生きていない」ことです。
美しい心の状態にするためには意識を過去や未来ではなく「今、目の前」に向けなくてはなりません。
禅やマインドフルネスでよく言われている「今を生きる」と同じ概念です。しかし難しいのは、苦悩の状態の人にとっては、「今を生きる」とはどういうことなのか、どうすれば今に意識を集中させることができるのかいまいちイメージができないことです。
いったい、今を生きるとはどうなることなのでしょうか?それを体感するには、そもそも「今を生きていない状態」とは何かを考えてみましょう。
「今を生きていない状態」とは、意識が「過去」や「未来」ばかりに向かっている状態です。
仕事をしていても、人と話をしていても、「今朝起きたこと(過去)」や「明日やらなくてはいけないこと(未来)」ばかりに意識がいっています。
過去を回想したり、将来のことを案じたりしているこの状態では、必然的にネガティブな感情が生まれやすくなります。
注意が散漫になって仕事などのパフォーマンスが落ちますし、人のことが目に入ってこないので協力体制をつくるのが難しくなり、何よりの問題は、何をしていてもちっとも幸福感を感じられないことです。
ハーバード大学の心理学者であるマシュー・キリングヲース氏とダニエル・ギルバート氏が2017年に行った2250人を対象にした調査によると、人は1日の起きている間の46.9%もの時間を、「今」ではなく、「過去」や「未来」のことを考えながら生きていると発表しています。
そして、過去や未来に意識がいっている割合が多い人ほど、幸福感も減少するのだと言います。
たとえば仕事場までの道を歩いているとき、何を考えているでしょうか。
家を出るときにケンカしたパートナーのことや、仕事で犯したミスのことを思い出したり、仕事のノルマや上司の顔が浮かんでくる、という場合は、今を生きていない状態(=苦悩の状態)です。
この状態ではネガティブな感情が生まれやすく、仕事にも集中しづらく、人の話も耳に入ってきません。視界が狭くなったり、香りや味にも鈍感になっていきます。何をしていても楽しくない、心から感動する瞬間がない、いつも何かにとらわれて感情が安定しない、
そんな状態になってしまうのです。
●美しい心であれば、仕事もはかどる
では、今を生きている状態(=美しい心の状態)で仕事場に向かって歩いていると、どうでしょうか。
今を生きている状態では、五感が研ぎ澄まされるので、まわりの景色の変化に気がついたり、ビルの間を吹き抜ける風を感じたり、暖かい太陽の光を感じたり、朝日に映えている木々の緑色のみずみずしさに気がついたりするかもしれません。
会社で同僚と顔を合わせたときには、顔色や表情の微妙な変化に気づけます。さらには、仕事を始めればすぐに集中してやるべきことを一気に片づけられるでしょう。
スイッチのオン・オフが切り替わり、充実感を持って仕事をすることができますし、人とも自然とポジティブな気持ちで接することができます。
●最小限の時間で最大限の成果を手に入れる方法
今を生きるとは、将来のことを一切考えてはいけない、ということではありません。「何のために仕事をするのか?」「どんな事業を行うか?」「どんな人生を送りたいのか?」と目標や目的を設定することは大切なことです。
問題は、どんな心の状態で行うかであり、同じ計画や目標を立てるのでも、美しい心の状態で机に向かえば自然と成すべきことが見えてきます。長々と考え込むことなく、「これだ!」というアイデアが瞬間的に浮かんでくるのです。
一方で、悶々とあれやこれや頭の中で考えていたり、それも四六時中、将来のことを考えているようなときは、自分の意識状態が「苦悩の状態」にあります。
通勤中の電車やエレベーターの中で次々と考えごとが浮かんできたり、トイレで用を足しながら数字計算をしていたり、次のミーティングに向かいながら前のプレゼンの失敗を考えたりしているのは、苦悩の状態に入っている証拠です。
このような苦悩の状態で思索にふけっているときは、「やっているつもり」の状態であり、生産性が極端に低くなります。
たとえば、朝起きて家族と朝食をともにしているときに仕事のことを考えていると、食卓にいる家族の顔を見つめることもなければ、相手の心の状態も感じることができません。
何を口に入れているかにも気がつきませんし、まして食事を用意してくれたパートナーに感謝することもないでしょう。
さらには、子どもの表情に気がつくこともなく、さっと食事を終えて仕事へ向かうことになります。
会社でのミーティング中も、結果を出すこと(未来)だけに自分の意識が向かっていれば、会議室に座っている人々の表情に気づくこともなく、一緒に何かを成し遂げていこうという意識の共有もできません。
過去と未来に意識がいっている状態が延々と続くと、1日があっという間に過ぎていくような感覚に陥ります。
1週間、1か月、半年、そして1年。あっという間に歳月は過ぎていきます。その間、まわりのことに気づけず、今本当にすべきことも見えてきません。
いつまで経っても本質的な問題解決ができないので、ますます問題は山積みとなり、感動や喜びがほとんどない毎日を送ってしまう……意識が今にないと、このような悪循環が起こります。
●小さな子どもは今を生きている
今を生きるという感覚を考える上で、ヒントとなるのは子ども時代です。子どものときは1日が終わるのが本当に長く、まるで永遠のように感じたことはないでしょうか。
幼い子どもたちを見ていると、子どもは心底「今」を生きているのがわかります。
過去のことを振り返ることも少なく、将来のことを考えることも少なく、今遊ぶことに一生懸命で、今目の前にあることを五感をフルに使って体験しています。
雨の冷たさを体で感じ、転んだ痛みを全身で表現し、昆虫との出会いに感動します。
そんなときに「もうすぐ◯◯に旅行に行くよ」と言ったところで、幼い子どもは一瞬は喜んでも、次の瞬間には目の前にあるおもちゃに夢中になります。
私たち大人のように、数週間後に予定されている旅行のことを想像して過ごすことはないのです。
人は7?9歳になると、「過去」と「未来」というコンセプトが把握されていくと言います。小学校に入る前後までの子どもは、過去や未来について考えることがほとんどありません。
しかし7歳くらいからだんだんと意識に変化があらわれるのです。
ハチに刺された経験は記憶に残り、友達からいじめられた思い出も自分の記憶としてインプットされていきます。
また、クリスマスプレゼントに何をもらうか、将来のことを考えながら時間を過ごしたりしますし、苦手なテストがある日には学校に行きたくなくなったりします。
このように、人は年齢(経験)を重ねるにつれてだんだんと「今」を生きる時間が少なくなっていくのです。そして、過去や未来への気持ちで頭がいっぱいになり、どんどんと時間が過ぎてしまいます。
つまり、無意識に生きている限り、私たちが「今を生きる」ことは難しいのです。
過去や未来のことを延々と考え続けている自分に気づき、「今に意識を向けよう」と注意を払う必要があります。
無意識の思考や行動をやめて、意識的に行動すること。それが今を生き、心を美しい状態にするための第一歩です。
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