(本記事は、Nami Barden氏、河合克仁氏の著書『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』すばる舎、2018年12月13日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

本物の自信は、理想像への執着を手放したとき自然に手に入るもの

世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業
(画像=Sjale/Shutterstock.com)

●態度が変わるのは自信のゆらぎを調整しているとき

学歴、会社のブランド、収入、住む場所、パートナーや交際している人の地位や見た目、SNSのフォロワー数や職業などを比較して、「自分がいかに特別な存在であるか、気にしてしまう」ことはないでしょうか。

この比較は、他人との比較だけではありません。自分自身の過去の成功体験と比べたりもします。

比較することで一喜一憂し、優れている場合には気分は安定しますが、劣っている場合にはひどく落ち込んでしまう。

このような苦悩はどこからくるかといえば、自信のゆらぎです。

たとえば社会的地位が高い人(自分より成功していると思っている人)と接したときに、緊張をしたり、異様なほど丁寧に接したり、自分を卑下してしまったり、反対に相手に向かって自分自身を大きく見せようとしたり、というのはその典型的な例です。相手にコンプレックスを感じ、自信がなくなってしまっています。

では、失った自信を取り戻すために人は何をするかというと、別の場所で自分を大きく見せようとします。

人をバカにしたり、批判したり、自慢話を並べてみたり、SNSの「いいね」の数で自尊心を満たそうとしたり、という具合です。

しかしながら、当然それらはその場しのぎにしかなりません。

●自己暗示が解決方法としてよくない理由

一方、「自分に自信がない」ということを自覚している人は、自信をつけようと努力をする場合もあります。

有名な方法は自己暗示です。

「自分は成功者だ」「自分は美しい」「自分は若い」「自分にはできる」などと紙に書き、壁や鏡、コンピューターなどよく見る場所に貼るなどして、毎日見ながら自分自身に言い聞かせるというものです。

最初のうちは潜在意識がじゃまをして、「それは違う」「私は成功者じゃない」「自分はもう若くない」「素晴らしくない」などと自分の心の中で反発があるかもしれないけれども、そのうち潜在意識も負けて、とうとう「わかったよ、私は成功者です」と受け入れるようになる、という方法です。

しかしながら、この手法では一時的には自信を取り戻せるかもしれませんが、心の本音である「いや、本当は違う」という声を無理やり押しつぶしている状態です。

本心を押さえつけてつけた自信はまさにハリボテ、長続きしません。

さらにこの方法がよくないのは、自分が「成功者である」などと言い聞かせ、言いくるめることにより、結局自分自身の中の「成功者」という理想像を強化してしまうことです。

うまくいっているときはいいですが、何かのきっかけでギャップができたとき、ネガティブな感情がすぐに生まれ、ひどく苦しむことになります。

理想像への執着が強いほど、どうしていいかわからなくなるのです。

●本当の自信とは何か

では、真に自信をつけるには何が必要なのでしょうか?

それは、心を美しい状態に戻し、自分で自分のことを批判するのをやめる、ということです。

心の中で自分自身への批判の声が静まったとき、自然と自信は湧いてきます。

どんな理想像にもしがみつくことなく、今の自分をありのまま「Whole(全)」として受け入れること。

自分に対しての批判、蔑み、評価する声がなくなったとき、初めて心の中に平穏が生まれ、ありのままの自分を受け入れ、肯定することができるようになります。

自分という存在をまるごと受け入れ、「私は私のままでいい」と肯定している状態が、本当の自信なのです。

●睡眠障害を抱えていた女性の苦悩

ある中小企業社長の秘書をしている女性とセッションをしたときのことです。その方は美しく、物腰も柔らか。忙しく働く社長をしっかりサポートする、まさに「有能な秘書」そのもの、という印象を与える人でした。

そんな彼女が悩んでいたのは、遺伝的な睡眠障害を患っており、そのせいでいくら寝ても日中眠くなってしまうという症状でした。

静かなオフィスや会議室などではすぐに症状が出てしまうので、なるべく体を動かすなど、毎日がチャレンジと工夫の繰り返しだと言います。

彼女は、今では自分の体のことを受け止めていると言います。しかし、ふとしたときに、悔しさや絶望感を感じるときがあると言います。

というのも、彼女には悔しい思い出がありました。学生のとき、どんなにがんばって努力しても授業中に眠たくなってしまい、大学受験のための勉強が思うようにできなかったということです。

その結果、第一志望の大学には受からず、別のB大学に進学して今に至るのだと言います。

それはもう過ぎたことであると頭では理解をしているのですが、たとえば母親と昔の話になると、「受験に失敗したのは本当に残念だったわよね」とがっかりされた声で言われ、今の仕事状況を見ては「病気さえなければ大企業でバリバリ働けたのにね」……と、まるで「病気のせいで失敗した」というレッテルを貼られているような気がすることがある。

そして、そんなふうに思われるのが嫌だから、それとなく親との間に距離を感じている、と言うのです。

さらには、人と話しているときにも「どの大学を卒業したの?」といった話題になったとき、「B大学です」と大学名を言う瞬間には、やはり込み上げてくる感情があると言います。

●コンプレックスは、思いもよらないところに潜んでいる

そんな彼女がまずは苦悩の状態を確認し、出てきたのは

「何で私がこんな目に?」
「悔しい」
「この病気さえなければ第一志望の大学に行けたのに」

などの心の声(ゴースト)でした。やはり、いずれも自分中心の意識によるものです。では、彼女の本当の苦悩とは何なのでしょうか。どんな理想像が彼女を縛っていたのでしょうか?

それは、

「自分は本当は(B大学以上に)頭のいい人」

という理想像でした。彼女の思考を掘り下げて会話をしながら、こんな質問をしてみました。

「B大学に行った人を軽蔑したり、見下したりしていませんか?」

すると、彼女は驚いた様子でハッと顔を上げました。

図星であったのと同時に、しかし、彼女自身は自分がB大学の人たちのことを軽蔑しているなどとは思ってもみなかったのです。その気持ちは、心の中に眠る潜在意識の中で起きていたものでした。

「B大学の人たちのことを軽蔑している」とは、裏を返すと彼女の中では「B大学の人は頭の悪い人」、そして「自分は頭のいい人」となっているということです。

彼女は、自分がそんな独りよがりな理想像を持っていたことにびっくりし、同時にこうも思ったと言います。

「なんて滑稽なことだろう」

自分がしがみついていた理想像がわかった瞬間、「すごく自分が恥ずかしくなってきました」と笑みがこぼれ、そして「美しい心の状態」に戻ってきたのです。

この状態で第四のステップに移り、真に快適な正しい行動を考えていくと、結局は彼女自身が「B大学の人より頭がいい」という理想像を捨てればいい(捨てていい)、というところにたどり着きました。

そう決めると、母親に大学や今の会社について言われても、動じることがなくなりました。

なぜならば、B大学での生活は充実したものだったと、あらためてB大学で過ごした日々に感謝の心が出てきたからです。

また今の会社も、魅力的な人々にたくさん会える職場であり、社長も自分の体のコンディションを理解してくれており、自分にとっては充実したものだという実感が湧いてきました。

誰に何を言われようと、自分は人生を満喫していると感じていれば、それはどうでもいいことなのです。

今では、誰から出身大学を聞かれても、平然と「B大学です」と答えられるようになりました。最近では、大学時代の友人と再会する機会もずいぶん増えているとのことでした。

このように、(自覚はまったくないけれど)必死でしがみついていた理想像の存在を知るだけで、心は穏やかなものになります。

「なんだ、こんなことにしがみついていたのか」という感覚です。

彼女のように、学歴や勤め先にコンプレックスを感じる場面は多いかもしれません。

たとえば、私が生活しているハワイでも、ビジネスをする上では、地元の私立高校であるプナホウ・スクールを出たか否かが非常に大切になります。

初対面のときに(出身大学ではなく)出身高校がどこかで判断され、それから先のビジネス上の待遇もずいぶん変わってくるのです。

これと同じように、出身地や出身校、勤め先で相手が自分を判断してくることは多々あるでしょう。

しかし、心が美しい状態にあると、「それがいったい何なのだろう」と、気にすることがなくなります。ありのままの自分を受け入れることが自然とできてくるのです。

ステータスで人を差別する人には、そうさせておけばよいのです。どんな環境に身を置いているかなど、人生の中では大した問題ではありません。

世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業
Nami Barden(ナミ・バーデン)
米国コロラド州のフォートルイス大学ビジネス専攻を首席で卒業する。東京の外資系企業で働いた後にハワイのリテール企業に就職。結婚と出産を経て、夫の投資系会社と不動産会社の業務を手伝うかたわら、ワンワールドアカデミーのトランスフォーマー(メディテーション&WISDOM講師)として2015年から2018年まで活動。
河合克仁(かわい・かつひと)
筑波大学体育専門学群卒業後、人材教育コンサルティング企業に入社。2014年に独立。株式会社アクティビスタを設立。グローバル企業から100年企業向けの組織開発支援や、中高校生向けのキャリアキャンプといった人財開発支援に情熱を注ぐ。2015年より筑波大学で非常勤講師。また、2016年からは内閣府地域活性化伝道師に就任し、企業と連携して人材採用や育成を通した地方創生の活動も推進。国内外で活躍の場を広げている。

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