今回のテーマはやや後ろ向きの話になりますが、「追加保証金」についてです。いわゆる「追証(おいしょう)」です。
信用取引の建玉を保有する際に、常に注意を払う必要があるのが「維持率」の状況です。正確には「委託保証金維持率」と言いますが、「建玉維持率」とか、「信用維持率」などと呼ばれることもあります。詳しくは第7回でも触れていますが、保有している信用取引の建玉金額と、委託保証金の金額の関係を割合(%)で示しています。計算式は下記の通りです。
維持率の計算式
「委託保証金の範囲内で取引が可能」というのが信用取引の前提ですので、新規建てをする際には、必要な委託保証金率(一般的には30%)が決められていますし、新規建て後の建玉を保有するには、キープしなければならない「最低維持率」というラインが設けられています。制度信用取引のルールでは「20%以上」が最低維持率ですが、ここを下回ってしまうと追証が発生することになります。
追証を判定するタイミングは、毎営業日の大引け時点です。ですので、取引時間中に20%を下回っていたとしても、大引け時点で上回っていれば追証発生にはならずセーフです。ただし、追証判定で日々ギリギリの綱渡りをするのは精神衛生上あまり良くありませんし、維持率はなるべく高水準にしておくことが望ましいです。
また、あらためて上記の計算式項目に注目しますと、維持率が低下する大きな要因となるのは、「建玉金額の増加」、「代用証券(委託保証金に使っている株券)評価額の低下」、「建玉評価損(含み損)の拡大」の3つになります。
とはいえ、建玉の本数を増やさなければ建玉金額のところは変化しません。また、委託保証金のうち、「現金」も入出金や別の現物株の売買を行わなければ不変です。ですので、日々変化するのは、「代用証券評価額」と「建玉評価損」となり、この2つが最優先でチェックすべき項目になります。
なお、追証が発生してしまったら、その解消に向けて動かなければなりません。楽天証券では維持率20%回復分までの委託保証金を差し入れることになります。また、追証発生日の翌日以降の株価が変動し、維持率が回復したとしても、一度確定した追証は解消しなければなりません。さらに、残念ながら「原則として追証発生日の翌々営業日」という解消の期限が設定されているため、時間的な余裕もあまりありません。
追証の解消方法としては、①「追加の委託保証金を差し入れる」か、②「建玉の一部もしくは全部を決済(返済)する」かのいずれかになります。①の場合、現実的には現金での入金になります。時間の制約があるため、追証が判定されてからの現物株の売却や株券の入庫といった対応は間に合いません。②の場合は、建玉を決済することによって、決済した建玉金額の20%を追証の解消に充当することができます。ただ、決済損を支払う現金が足りず、追証とは別に不足金を求められるケースもありますので注意が必要です。
土信田 雅之(どしだ まさゆき)
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
1974年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。国内証券会社にて企画や商品開発に携わり、マーケットアナリストに。2011年より現職。中国留学経験があり、アジアや新興国の最新事情にも精通している。
(提供=トウシル)
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