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(画像=17時から19時まではファーストドリンクが300円になるハッピーアワーも実施)

ハイレベルな料理が1,000円以下で楽しめる

『ボンテ』の大きな魅力は、ほとんどのメニューが1,000円以下という“お値打ち感”だろう。名物の「奇跡のビストロカレー」は、口に入れた瞬間、牛肉と野菜の複雑な旨味が押し寄せ、空腹の胃袋をわしづかみにされる。「都心で食べたら2,000円はするのではないか」と感じるクオリティだが、バケットを添えて880円と破格である。

「うちで出しているカレーは、フォンドヴォーというフレンチの技法を使って出汁をとった欧風カレーです。赤ワインと食材の出汁で3~4時間煮込んでトロトロにした牛すじに、独自の配合でブレンドしたスパイスを合わせています。ほとんど水を使わないのが特徴で、野菜の水分だけを使って、ペースト状になるまで煮詰めているので、すごく味が濃厚なんです。水分が少ない分、焦がさないように鍋に張りつく必要があり、仕込みには手間も時間もかかります。それでもこの値段で提供しているのは、『安いからまたあそこに行こうよ。ちょっと狭いけど、いいじゃん』という吸引力になるからです。料理は自分が心底食べたいものを提供することがお客様の心に響くと思うので、安くても手は抜きません」

山崎さんは自慢の料理の味を知ってもらうべく、さまざまな施策を打っている。例えば17時から19時という、店が比較的空く時間は「ハッピーアワー」として、毎日ファーストドリンクを300円で提供している。小皿に盛った料理も300円という“お試し価格”だ。

「ハッピーアワーは新規の人にも足を運んでもらうきっかけになるのではないかと思って始めました。最初は、時間内は全部350円で提供していたんですけど、今はファーストドリンクだけ300円にしています。料理は小皿に盛って300円で用意しているので、アペリティフのように軽く飲んで食べていく方が多いですね。最初は安さに惹かれて入店した方が、料理の味を知って、リピーターになるケースも増えています」

店の宣伝やプロモーションにお金をかけなくても、お得感に惹かれてたくさんの人が集まってくる。そこから、料理の写真をSNSに投稿してくれたり、常連が増えたりする良い循環が生まれているそうだ。

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(画像=料理はすべて価格以上の美味しさが味わえる。このコスパの良さがリピーター作りにひと役買っている)

スモールポーションを作って注文数アップ

客からの要望を受けて、通常より量を減らし、値段を抑えた「スモールポーション」も売上に貢献している。

「女性のお客様を中心に、『量が多いから、小さいのを作ってよ』というご意見をいただいて、スモールポーションを始めたんです。女性は、色んな料理を少しずつ食べたいものですよね。男性でも別のお店で食べてきた後に立ち寄って、『シメを食べたい』という方や、『ちょっと味見してみたい」という方もいます。そういったニーズに応えることができて、明らかに注文数が伸びていると思います』

山崎さんは料理のボリューム以外にも、客の反応を見ながらメニューをマイナーチェンジしているそうだ。ワインはかつて一律600円で提供していたが、「飲んでいる気分だけ味わいたい」「お手頃価格で飲みたい」「少し高くても美味しいワインが飲みたい」など、色んなニーズがあることに気づき、商品と価格を見直した。こうした細かい努力が実り、アルコール注文比率は6割を超え、売上の柱となっている。

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(画像=ワインは客の色んなニーズに応えられるように種類と価格を見直した)

「逆境いらっしゃい」のポジティブシンキング

『ボンテ』はオープンから8年目を迎える。その間、山あり谷ありだったという山崎さん。店を長く続けられた秘訣は何だろうか。

「店をやっていて色々ありましたが、『谷』に落ちるたび、何かのアクションにつなげていきました。最初に『バタバタしよう、足掻こう』って思ったのは、建物の賃貸契約の更新時です。1度目の更新で、賃料が倍になってしまいました。このままだとつぶれてしまうと思い、2年半の間、無休営業を続けたんです。そのおかげで色んな方との出会いがあり、メディアの取材もあって売上がグッと伸びました。その次の『谷』は、空調が壊れたこと。夏の暑い盛りで、すぐに取り替える必要がありましたが、その費用はざっと見積もって200万円くらい。『何かやらなきゃいけない』と思い、ランチを始めたんです。ビストロカレーをランチで出したら毎日完売するほど人気で、思った以上に売れました」

困難なことが起きても、前向きに対策を考えて乗り越えてきた山崎さん。この粘り強さがあったからこそ、店を長く続けられるのだろう。

「何か困ったことがあっても、すぐに気持ちを切り替え、『ただじゃ転ばないぞ』という思いでやってきたんです。その経験が生きているし、たくさんのヒントが得られました。トラブルやアクシデントは自分を成長させてくれるための何かだと思うので、今では『逆境、いらっしゃい!』という気分です。ジェットコースターのように、怖さを楽しんでやろうと思っています(笑)」

店を一人で切り盛りする山崎さんの姿は、実際にとても楽しそうである。「好きなことはいくらやっても苦ではない」と語り、何が起きても前向きにとらえる。そんな彼の姿は、客にも元気を与えていることだろう。

勝どき駅から出てすぐの場所にある『ボンテ』。店のドアを開ければ、あたたかく迎えてくれる山崎さんと、美味しい料理が待っている。一度でも訪れたことのある人は、「ここならきっと、一日の疲れを癒やしてくれるだろう」という期待が胸に広がるはずだ。まるで友人の家のような親近感が、思わず足を向かわせる。それが『ボンテ』の一番の強みなのかもしれない。

『かちどきバルBonte (ボンテ)』
住所/東京都中央区勝どき1-7-1 勝どきサンスクエア1F
電話番号/03-5547-8337
営業時間/17:00~24:00
定休日/日曜
席数/10

執筆者:三原明日香

(提供:Foodist Media