2019年1月より、改正著作権法(一部を除く)が施行されました。デジタル化・ネットワーク化の時代に対応させた本法は、私たちの私生活のみならず、ビジネスにおける日常的な作業に関しても踏み込んだ内容となっています。業務の間、気づかないうちに著作権を侵害してしまい、のちに大問題になるリスクも少なくありません。そこで、本稿では改正著作権法について説明します。
改正著作権法の概要
改正著作権法は、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定における各国との大筋合意を求めるために作られました。そして、その内容はデジタル・ネットワーク技術の進展への対応が一つの軸となっています。なぜなら、インターネットなど著作物の電子化に対して従来の著作権法では対処しきれなくなってきたためです。
たとえば、インターネット内における海賊版サイトや違法ダウンロードが横行しているため、その対策に躍起になった側面も否めません。改正著作権法の大きなポイントは2点あります。
著作権の保護期間の延長
従来の著作物は、作者の死後50年、または映画や団体などは公表後50年を著作権の保護期間としていました。しかし、改正後はこの期間を70年としています。
著作権侵害における非親告罪
従来では、著作権が侵害されても、著作権者が告訴しない限り、裁判にすることはできませんでした。しかし、改正後においては、著作権の侵害は非親告化され、もし著作物が侵害された場合、著作権者が告訴せずとも裁判にすることが可能となったのです。
企業が起こしやすい著作権侵害は?
上述のように改正著作権法は従来よりも著作権の侵害について厳しくなっています。しかし、ビジネスを行ううえで知らず知らずのうちに著作権の侵害をしてしまっているというケースは、実際には少なからず存在しています。では、企業が陥ってしまいやすい著作権侵害についてはどのようなものが挙げられるでしょうか。
・PCソフトやプログラム
たとえば、PC1台につき、1つしかインストールできないと定めているPCソフトを複製して多数のPCにインストールしているケースなどが見受けられます。また、プログラムについても著作権が発生しているにも関わらず、無許可でそれらを利用しているケースも少なくありません。中小企業の多くは、従業員が業務で利用しているプログラムにまでチェックしてはいないところが多いことでしょう。フリーウェアなどでも著作権は発生しているものが多いため、重々注意しておきたいところです。
・画像や意匠権などの盗用
これは企業のみならず、私たちの生活のうえでもしばしば生じている問題です。とくにビジネスに限っていえば、たとえば取引先に提供する資料に、まったく無関係の他人が書いた文章を載せたり、著作権フリーでもない画像を載せたりした結果、著作権者からクレームが入るというケースが挙げられます。また、気づかないうちに第三者のデザインなどを盗用してしまったりすることで莫大な損害賠償を求められるというケースもあるため、よく気をつけておかねばなりません。
今後はさらに厳しくなるおそれも
2019年2月文化庁は、インターネット内におけるほとんどの分野に関して、著作権侵害となるダウンロードを全面的に違法とする方針を打ち出しました。この中で問題となっているのは、ダウンロードの定義です。文化庁はスクリーンショットにおける画面の保存もダウンロードと見なす方針であるため、スマートフォンによるスクリーンショットも当然違法とされてしまいます。
このように気づかないうちに違法行為を行ってしまい、結果、企業が告訴されるというおそれも出てきているため、著作権を含むコンプライアンスについてももう一度見直しておくことをおすすめします。(提供:みらい経営者 ONLINE)
【オススメ記事 みらい経営者 ONLINE】
・事業承継、どのアドバイザーを選べばいい?
・事例でわかる!事業承継で生じる問題とその対応策
・出向社員の給与や社会保険はどちらが負担?
・「ネット炎上」に対する、人事労務の対策方法
・どうする?海外事業で失敗しないために